惨状を伝えるTV画面
「日本は災害列島と化している」とブログに書いたのは、わずか1ヶ月前の今日(9月13日)のことだった。自然の摂理が、どこかで壊れ始めている音が聞こえる。人間の傲慢さに鉄槌が加えられているのでは。地球と人間のあり方を考える最後の時が迫っている。
そして今日、10月13日早朝6 時、TVをつけたところ驚くべき光景が目に飛び込んできた。長野市穂積地区で千曲川の堤防が決壊し、濁流が氾濫し、住宅に迫っている驚くべき光景がLIVEで映し出されていた。恐怖の中に一夜を過ごした住民が、朝を迎えた時に堤防が決壊し濁流が地域に滔々と流れ込んでいる。ほとんど目にすることのない光景である。岩手県には「特別警報」が出ている。
あの美しい千曲川が朝日の光とともに決壊するという惨状は、「衝撃的」の一言に尽きる。
TVなどメディアの発達で、惨状は瞬時に家庭へ飛び込んでくる。しかし、画面に映る濁流に今にも流されそうな家屋の2階などから、必死に救出を求める人たちの振る布切れなどが目に入っても、どうにもできない。歯がゆいことおびただしい。ヘリコプターのカメラが映し出す限り、被害の領域は極めて広範にわたっている。早急に救援の手が入ることを願うのみだ。
同様な事態は規模の違いはあるが、台風19号が通過した地域のいたる所で報じられている。こうした光景を日本人はこれまで何度目にしてきただろう。自然の力に計り知れぬ畏怖を覚えながら、図らずも思い浮かべるのは、島崎藤村「千曲川旅情の歌」の一節だ。
「千曲川旅情の歌」 -落梅集より
島崎藤村
[前略]
いくたびか栄枯の夢の 消え残る谷に下りて
河波のいざよふ見れば 砂まじり水巻き帰る
嗚呼古城なにをか語り 岸の波なにをか答ふ
過し世を静かに思へ 百年もきのふのごとし
千曲川柳霞みて 春浅く水流れたり
たゞひとり岩をめぐりて この岸に愁を繋ぐ