時空を超えて Beyond Time and Space

人生の断片から Fragmentary Notes in My Life 
   桑原靖夫のブログ

アメリカ、中国、そして日本はどこへ

2011年01月20日 | 午後のティールーム

 

  米中首脳会談が行われた。120日のメディアは、それとともに2010年、中国のGDP(国内総生産)が日本を抜いたことを大きく報じている。かつて「大国」の名がついたのは、人口についてだけの中国だったが、いまや経済力、軍事力においても大国となった。政治・外交力も強力だ。

 ウィキリークス事件もあって、米中首脳会談もおそらくかつてなく厳しい報道管制の下で行われたのだろう。主要な議論だけは報じられてはいるが、オバマ、胡錦濤両首脳の間で、なにが話されたか、本当のところは分からない。TV画面でみるかぎり、
両首脳共に、表情の硬さが目立った。

 アメリカはホワイトハウスという有利な環境で会談に臨んだが、中国は自国に不利な問題はすべて反論あるいは聞き流すか、無視している。中国はいまやそれだけの強さを手にしている。相対的にアメリカの力の低下を感じる。オバマ大統領はかろうじて面子を保ったという印象が強い。昨年末、あるアメリカ人の友人からのクリスマスカードには、あの尖閣列島問題に言及しながら、アメリカはいまや自国の問題に対処するだけで手いっぱいであり、遠く離れたアジアの問題に、時間と力を発揮する余裕がなくなっていることが記されていた。

 
折しも、 隣国から春節を祝う一枚の賀状が届いた。中国では数少ない親日家であり、文化人といってよい方だ。Z氏としておこう。日本にも多数の友人・知人を持ち、有力な政治家でもあった。今は齢80歳をはるかに越え、ほぼ隠退の生活を過ごされている。

 
添えられた手紙には、1990年代以降を回顧し、北京五輪、上海万博が成功裡に終わったことに安堵しつつ、今日の繁栄を喜びながらも、すでに自分の時代は終わったという一抹の寂しさが漂っていた。同氏の生涯は文字通り、中国の現代史そのままに波乱と激変で埋め尽くされていた。いうまでもなく、日中戦争、内戦、文化大革命の下放など、想像を超える苦難を自ら前線で経験してきた。書簡の行間から伝わってくるものは、今日の中国の全体的な繁栄にもかかわらず、あるいはそれゆえに押し寄せてくる複雑な思いだ。中国はいまや自国のみならず、アメリカ国民の雇用まで支配するまでになっている。他方、かつて社会主義国としての中国が目指した、すべての人民が等しく豊かになるという理想が、もはや誰も修正できないほどの巨大な力で、それとは別の方向へねじ曲げられて進んでいることへの不安と悔恨の思いであるかのように感じられた。


 

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 北方の光; フランス・ハル... | トップ | 就活が日本にとって持つ意味 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

午後のティールーム」カテゴリの最新記事