WBCでのサムライ・ジャパンの優勝は、不況で沈んでいる日本にとって、久しぶりに憂鬱な日々を吹き飛ばす効果があったようだ。メディアの取り上げ方も、驚くばかり。よほど明るいニュースがなかったのですね。
スポーツは「抗不況効果」ありという英誌 の記事*が目に止まった。グローバル大不況からは、いまやいかなる産業も逃れがたいが、主要なスポーツ産業?は、幸い難を逃れ、好調なようだ。
イギリスの国技クリケットも、サッカーもまずまずのようだ。もっとも、不況の影響がみられないわけではない。サッカー、イングランド・プレミアリーグの選手のユニフォームからも、それが分かるようだ。マンチェスター・ユナイテッドのスポンサーAIGは、今はアメリカ政府の所有するところになってしまった。ウエストハムは、スポンサーの保険会社が破綻し、企業ロゴが3ヶ月無かったこともあったとのこと。しかし、それでも試合のTV放映権などでしっかり稼いでいるらしい。
こうしたスポーツ産業が持っている強みは、ひとつには試合の放映権などをスポンサー企業などへ販売できることにあり、不況下でも買い手がつくらしい。さらに、放映権その他の契約が数年から10年など、長期にわたることが多く、その点でも安定しているようだ。アメリカで人気のプロ・バスケットボールは、協会が75億ドルで8年間の契約を結んだところだ。
不況になると、人々は苦しい現実から一時でも逃れようと、現実逃避主義になるらしい。そして、難関を切り開くヒーローを見たくなり、その活躍に拍手を送る。そして、財布を開きたくもなるようだ。
適度にハラハラさせてくれて、応援でストレスを振り切り、自分が苦難を克服したような高揚感が得られる。その後、しばらく仕事にも前向きになる。
確かに、WBCも最後の最後まで、観衆をひきつけて、イチローが「美味しいところ」をいただき(!)、波瀾万丈、緊迫感もあって、劇的なできあがり。サッカー、ワールドカップ、アジア最終戦予選対バーレーン戦の勝利も、気分高揚効果は大きかったようだ。こちらも期待通り、ヒーロー俊輔が大活躍してくれて、唯一の得点というのも、効能書き通り?。
* "Sport: Is it recession-proof?" The Economist February 14th 2009.
新渡戸稲造も大拙も、海外で日本文化を紹介する際に「SAMURAI」を使いました。それを日本語で「武士」と訳したのは『禅と日本文化』の北川桃雄氏でした。それでは語感が違って、誤読されるというのが愚生の感想。
今回、「サムライ」をどのように海外の人たちが受け止めたか。WBC日本チームは、かなり節度をもって行動したようなので、「好戦国」日本とは受け止められなかったでしょうが、危うい言葉使いのように思いました。
たかがスポーツとは言いながら、スポーツを使って国威高揚、衆愚政治を行うのは歴史の教えるところ。
別に苦情を言おうとしているのではありません。感想少々。
>「サムライ」をどのように海外の人たちが受け止めたか。
日頃あまり注意していなかったので、「サムライ・ジャパン」が正式愛称になっているとは知りませんでした。「サムライ」が使われていることには、多少の違和感は感じてはいましたが。
アメリカはいうまでもなく、日本でも「サムライ」と聞いて、新渡戸稲造や鈴木大拙を連想する人々はほとんどいないでしょう。そういえば、宮本武蔵の「五輪書」は翻訳されて人気があるようですが。日本人の間でも「サムライ」の語感が風化しているので、外国人がどう感じているか、よく分かりません。
むしろ、驚いたのはメディアのはしゃぎすぎでした。すべての新聞がスポーツ新聞になったみたい(笑)。それでも、未曾有の大不況で、不安ばかりかきたてられるよりは、多少なりと元気や活力の種になれば、今はよしとすべきでしょう。
それにしても今日4月4日に政府がとんでもない誤報を流したとか。
侍大将の堕落ですか。
これでは、なんとか支持率アップをと思ったのが逆に?