和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

もうすぐくるのに。

2013-05-05 | 短文紹介
安藤鶴夫著「ごぶ・ゆるね」(旺文社文庫)に
「神田パノラマ館」という短文がありました。
そこに、
ああ、そう思えばいいのだと納得した箇所がありました。

「・・・このごろ、としよりが、みんな、昔の話をすることを、まるで、わるいことかなんぞのように思うらしく、なんだか、そっとして、ちっとも話してくれないようになってしまった。
たぶん、老人の、そんな昔ばなしなんぞ、いまの若いひとは、おかしくて、聞いちゃアいられない、ということかなんかで、としよりが、若いものに、出来るだけ、いやがられまいというところから、たまにゃア、自分の若いころの話も、したいのにちがいないのに、なんだか、こらえているような気配がある。
いまの若いひとだって、あッという間に、としよりになってしまって、昔アね、かなんか、やっぱり、きっと、そんな話を聞いてもらいたい時が、もうすぐくるのに、自分だけは、たぶん、としよりになんかなるものか、と、思ってるのと、違うだろうか。
そんな時の、それこそ、断絶というか、疎外というか、としをとってからの、そういう生活のさびしさ、つらさは、たぶん、現在のとしよりたちの、なん百倍、なん千倍かと思うのだが・・・・」(p128~129)

この箇所、読めてよかった。
コメント
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