ワシントン・ポーシリーズの4作目。
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007映画のファンの琴線に触れるオープニング。
そして首脳会議を前に緊張が高まる場所で起こった殺人事件と、状況が分からない中での捜査妨害。
どんなに小さな事件でも背後に事情がない事件はない。バックグラウンドに色々ある事は分かっていても、「自分たちが行う事は事件の捜査だけ」というポーとティリーのコンビは、誰に遠慮することもなく謎を解き明かそうとする。
事件を前にした二人が最強なのはもちろん、今回は様々な条件が重なり合う。
関連がないと思われる事が少しずつ重なり、少しずつ判明した事情は全く別の方向への疑問を生み出す。
複合的に重なり合った事柄の後ろに見える大きな権力と利害関係。究極の状況で人間が取る判断。
個人の小さな欲望や判断が大きな渦となって権力を動かすうねりになり、個人の手を離れて全く別の様相を見せるのだ。
それらの混沌とした事象が全てあるべき場所に収まり、最後に大きなパズルとなって姿を現す時の驚き。
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取り扱う内容が1冊で収まりきるのか・・・と思うが、事件に向かうポーとティリーの力技同様きっちりとまとめ、更に次に繋げていくのはさすが。ただ、情報量はやっぱり多い。もう一度最初からゆっくり読み直したくなる1冊。