百戦錬磨だったはずの取り立て屋は亡くなってしまい、彼を慕っていたミナにその死を告げる事の出来ないインソンとチョン秘書。専務は誰かをコントロールしようとする時はその人の一番大事な人を人質にするという、一番確実で一番いやらしい方法を取る人間だ。当初は拒否していた執事もそうやって取り込まれていったのだ。二人はそれを逆手に取り、バグがあるからと社長が公開を拒んでいたプログラムが完成したとの偽情報を流し、専務と取引する事を画策。副会長と手を組んでいると思われた警察が専務たちを捜査している事を知ると、警察と手を組むことで保険をかけてなんとか社長の身体を奪還しようとするのだ。
何としてもプログラムが欲しい専務が取引場所に指定したのは、グループの巨大なサーバー基地。そこでの攻防戦から、社長が失踪前、自分の開発したプログラムを自らの携帯にダウンロードしていた事が判る。自らプログラム開発の為に提供していた個人情報によって、AIはまるで社長かのように考え、答え、そしてコミュニケーションまで完璧にこなしていたのだ。
それを知りショックを受けたはずのインソンだが、初めてはなんでも携帯の社長から指示を受けていた人間とは思えないインソンの行動力。AIの学習能力よりもスピードが速いではないか・・・警察と手を組むだけでなく、専務の為に社長を活かす事に尽力していた医師と接触し、専務が悪事に手を染めている証拠の品を手に入れる。更に自分で全てをコントロールしたい専務の卑劣な人心掌握術を逆手に取り、専務に驚く程の忠誠心を見せていた軍隊出身の運転手の弱点をも見つけ出すだ。
そして「AIを使った自動運転、ちょっとしたバグがあっても自分の会社の株価さえ高騰すればいい」と欲に目がくらんだ専務はインソン達の掛けた罠に自ら入っていくのだ。
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ここ最近、メディアで取り上げられない日がない位話題の「ChatGPT」。「ChatGPT」同様、チャット形式で対話ができるAIツールが主役のこのドラマ。主人公を演じるチェ・ジョンヒョプの明るい感じがドラマ全体に浸透しており、「携帯に閉じ込められた」などと、かなりコメディチックに演出されてはいるものの、冷静に考えるとさらっと殺されている登場人物もおり、描きようによってはかなりミステリアスな内容にも出来るストーリーだった。
これからはきっと、AIとのかかわりを重く描くドラマも出てくる事だろう。