「信用の機能不全」について言えば、20年ほど前、私がある金融機関の融資担当者であった頃のことをいつも思い出す。
地元の有名企業の創業●周年記念行事での出来事である。
たまたま、脱サラして起業した若い経営者と隣席となり、その社長さんから「新事業を展開したいのだが、資金調達で悩んでいる」という話が出た。
アメリカの有名なコーヒーショップが日本進出を計画していて、そのフランチャイズ店を開設したいという話である。
「●●銀行は・・・と言っているんですがね・・・」などと銀行の対応についての言葉が続いたのに対して、思わず私は本音を漏らしてしまった。
「銀行の言うことばかり聞いていたら、新事業なんてできませんよ」
この社長さんは私の言葉に感銘を覚えたのか、「来週にでもご相談に行きますよ」と面談を予告した。
ほどなくしてその社長さんが店舗にやって来て、私を指名して融資の相談を行った。
だが、事業計画についてのヒヤリングを終えた後で、私は規程に則って、
「融資を行うためには、不動産担保が必要です」
という無慈悲な言葉を発せざるを得なかった。
その瞬間、社長さんの顔には落胆の色があらわれた。
脱サラした若い経営者のことなので、ある程度予想していたのだが、社長さんも親族も、不動産を所有していなかったのである。
当時、長期金融の世界では、不動産担保主義、つまり不動産に(根)抵当権の設定を受けることを融資の条件とする原則を採用する金融機関が圧倒的多数を占めていた。
担保主義からの脱却は必要か(2006年6月20日)
「担保(特に不動産)や保証人を提供しないと企業がお金を借りられないという、いわゆる担保主義が指摘されて久しい。果たして、担保主義はどの程度深刻な問題なのだろうか。不動産担保を持たないが将来性のある企業は、金融機関が担保主義では資金調達ができない。不動産担保に依存しないお金の流れが必要な理由はここにある。」
就活に失敗した経験から、私は「人の心を傷つける職業」を避けてきたのだが、この志を貫徹することは出来なかった。
実際には、「融資を行うためには、不動産担保が必要です」という言葉を述べることによって、多くの起業志望者たちの心を傷つけてきたのである。
地元の有名企業の創業●周年記念行事での出来事である。
たまたま、脱サラして起業した若い経営者と隣席となり、その社長さんから「新事業を展開したいのだが、資金調達で悩んでいる」という話が出た。
アメリカの有名なコーヒーショップが日本進出を計画していて、そのフランチャイズ店を開設したいという話である。
「●●銀行は・・・と言っているんですがね・・・」などと銀行の対応についての言葉が続いたのに対して、思わず私は本音を漏らしてしまった。
「銀行の言うことばかり聞いていたら、新事業なんてできませんよ」
この社長さんは私の言葉に感銘を覚えたのか、「来週にでもご相談に行きますよ」と面談を予告した。
ほどなくしてその社長さんが店舗にやって来て、私を指名して融資の相談を行った。
だが、事業計画についてのヒヤリングを終えた後で、私は規程に則って、
「融資を行うためには、不動産担保が必要です」
という無慈悲な言葉を発せざるを得なかった。
その瞬間、社長さんの顔には落胆の色があらわれた。
脱サラした若い経営者のことなので、ある程度予想していたのだが、社長さんも親族も、不動産を所有していなかったのである。
当時、長期金融の世界では、不動産担保主義、つまり不動産に(根)抵当権の設定を受けることを融資の条件とする原則を採用する金融機関が圧倒的多数を占めていた。
担保主義からの脱却は必要か(2006年6月20日)
「担保(特に不動産)や保証人を提供しないと企業がお金を借りられないという、いわゆる担保主義が指摘されて久しい。果たして、担保主義はどの程度深刻な問題なのだろうか。不動産担保を持たないが将来性のある企業は、金融機関が担保主義では資金調達ができない。不動産担保に依存しないお金の流れが必要な理由はここにある。」
就活に失敗した経験から、私は「人の心を傷つける職業」を避けてきたのだが、この志を貫徹することは出来なかった。
実際には、「融資を行うためには、不動産担保が必要です」という言葉を述べることによって、多くの起業志望者たちの心を傷つけてきたのである。