パンセ(みたいなものを目指して)

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「絶望を希望に変える経済学」を読んで

2021年06月19日 09時13分10秒 | 


英語のタイトルは「Good Economics for Hard Times」だが
「絶望を希望に変える経済学」の邦題タイトルは
この本の全体を言い表した良いものだと思われる

人には楽観的と悲観的な見方が同時進行的に存在するが
ここでの主張は希望につながるもので、一見楽観論のように見えるが
それは単なる希望ではなくて、人は理性とか共感力を駆使すれば未来はなんとか変えられる、、
といった信念に基づくもので、それはフランス革命を果たした人たちの
未来はもっと良くなるとか、
東西冷戦を終えた時期の人々の世界はより秩序だったものになるといった考えに似ている
(ヘーゲルの弁証法に似ている?)

経済学は今や全生活に深く結びついているので、この本で扱われる問題も多岐にわたっている
その一つ一つは興味深く、じっくり読むべきものだが、どうしても先へ先へと気が急いてしまった
そして「もう一度じっくり読み返せねば!」と自覚した

全体を通して印象に残るのは、著者の全人格的な態度だ
それは広範な知識とそれを使う技術、そして共感力、、つまりは人としての姿勢でこのような人物が
世の中に存在するという時点で、どこか救われる気がする

ピケティの「21世紀の資本」のアルマティア・センの「経済学と倫理学」も
単にどうしたら効率的な経済となるか、、といった視点からの問題提起ではなく、
むしろ人の幸せとはなにか、、を正面から問いかけている本で、
西欧は時々このような全人格的な問いかけの本が生まれてくる

このような本は日本では生まれるのだろうか?
読んでいて感じたのは、まずはそのこと
極端な言い方をすれば、これらの本は竹中平蔵氏とか大前研一氏の効率を優先したものとは違うと思う

自分はよく「全人格的」という言葉を使うが、それを抵抗感なく理解する人と
なんじゃこれ!と思う人がいると思われる
これらの著者は全人格的を前提とした方々で、もしかしたら一部の人達はそれ故にエリート主義として
嫌悪感を覚えてしまうかもしれない

読み返さないとダメだな、、と感じたのは各章にでてきたエピソードあるいは調査の結果が
今までそんなものだろうとステレオタイプに認識していたものが、実際はそうではないことが
示されているからだ

移民が仕事を奪うとか、税率を上げると企業の競争力が低下するとかに、福祉支援をすると働かなくなる人が増えそうとか
当たり前の様に世間に行き渡っている常識は、実はそうばかりではない、、ということが
データと、何年かをかけた追跡調査で明らかにされる

そして、この著者が一番肝心と考えているのが「人間の尊厳」
たとえ自分たちの判断基準からすると遅れていると見える人に対しても「上から目線」ではなく
人としての尊厳を守りながら共感力を駆使して向かうべきとするのは
こんな時代だからこそ必要不可欠と思えてしまう

読んでいる時に付箋をつけるのを忘れてしまったことを、今は悔いている
もう一度読み返さねば、、、近いうちに、、、


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