「何がわからないか、わからない」
本当にわからない状態というのは、このようなもので
数学のリーマン予想、物理学のひも理論、マクロ経済学
法律の解釈などは、素人には
「何がわからないのか、わからない」状態だ
同じようなことが政治の世界でもあるかもしれない
政治と言っても、政策の部分と権力闘争の部分があって
特に前者は広範な視点と知識が必要なので容易に理解し難い
フリーランスのライター、実態はアルバイトで生活資金を補っている方が
自らの視点・体験を元に政治家に質問をぶつけて書き上げた本がある
それが
答える政治家は香川一区の小川淳也さん
ところが取り組んでみたもののインタビュアーの和田さんには
政治についての背景知識がない
それ故に一般庶民の実態に近いと思われて、本の中にある彼女の質問は
観念的でなくわかりやすい
本の構成は以下のようになっている
第一章 生きづらいのは自分のせい?
第二章 耳タコの人口問題が生活苦の根源
第三章 「なんか高い」では済まされない税金の話
第四章 歳をとると就職できない理由
第五章 見て見ぬふりをしてきた環境、エネルギー、原発問題
第六章 自分を考える=政治を考える
これについて小川さんが程度の低い(?)質問にも真正面から答えている
だがそれは上から目線ではなく、紐解くように真摯に答える
流石に税金の話は難しく、インタビュアーのように理解できない部分は多かったが
それ以外はとてもわかり易かった
だが、答えると言っても政治家の政治的な立場からの答えは
実生活で最低賃金で暮らす経験をしているインタビュアーの感覚とは異なる
そこで小川さんから「教えを乞う」だけでなく必然的に「庶民の実感」に基づく
理解につながるような討論という形になる
それは最終的にはどちらかが「論破」という形を取るものではなく
まるでソクラテスの対話のように個々の思っていることの整理に結びつく
討論においては小川さんの答えは、「小川さんの答え」であって
彼以外の政治家は他の答えがあるということだ
(理屈の上ではそうだが、実際に彼のように緻密に考え続けている人がいるかは疑問)
話は少し逸れるが、ここで少し心配なのは、このような丁寧な答えを事細かく説明している小川さんは
もしかしたら悪意を持った人たちに、その一部を切り取って
彼はこのような発言をしているとデマを発散されないかということだ
特に原発の章などは、最後まで話を聞かないと誤解を受けそうな話になっている
これは最近読んだ「プロパガンダ」の影響で余計な心配ごとなのかもしれない
この本は小川さんの真面目さを評価するきっかけとなるかもしれないが
実際のところこの本に関わることで一番「得をした」のは、著者の和田さんではないかと思う
彼女はインタビューの初めの頃と、何回か経験をしてきたあとでは全然違う
それはまさに成長と言えるもので、彼女自身も参考となる本を呆れるほど読んで
背景知識が格段に増えたこともあるが、何よりも直に話すことによってその熱を感じられたのが大きいと思う
この本の中には「これは和田さんの成長物語」とのセリフがあるが、それは読んでいて実感できる
と同様に、多くの人がこの本を読むことで勇気づけられたり、考えが整理されたり、
何をすべきか考えるようになるきっかけを見つけるもしれない
これは今年読んだ本の評価として「優」の文字を迷うことなく選んだ
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