[写真]記者会見する、民主党の岡田克也代表、2015年12月17日、筆者・宮崎信行撮影。
日本政界で最も国際金融に強い、民主党代表の岡田克也さんは、平成27年2015年12月17日(木)の定例記者会見で、
「アメリカのように出口(戦略)が明確になっていて、一定の要件を満たせば、その手順を踏んでいくかたちになっていない。黒田総裁の「出口戦略を論じるのは尚早」の鶴の一声で、まったく出口がない状況になっている。それでいて国債大量買入れは続いている非常にいびつな形になっている」
と語り、黒田日銀に金融緩和の段階的削減の手順表作成を求め、「国会で議論したい」と予告しました。
ただ、岡田さんは「原理」を示したまでで、黒田日銀をめぐる諸状況では、当面の間、手順表作成は難しいと思われます。
岡田さんの米利上げに関する発言は次の通り。
[民主党ウェブサイトから引用はじめ]
○FRB「利上げ」と日銀「異次元金融緩和」について
【日本経済新聞・甲原記者】
FRB(米連邦準備制度理事会)が利上げを決定した。日本では異次元緩和という形でいまだに続けているが、世界の金融の転換点になるようなタイミングでもあると思う。この金融政策を、今後参院選などで自民党に対する争点として掲げる考えはあるか。
【代表】
どのぐらいの争点になるかということは、先ほど申し上げたように、現時点で申し上げることはできません。
ただ、日銀の行っている「次元を超えた金融緩和」について、3年たって、どこまで効果があるのか。最初言っていたような輸出の数量が増えたり、あるいは設備投資、それから賃金が上がる、そういう状況にはなっていない。他方で輸入物価が円安によって上がってしまっている、実質賃金を押し下げる効果がある。そういったさまざまな問題も出てきています。
もう一つは、アメリカのように出口が明確になっていて、一定の要件を満たせばその手順を踏んでいくということではなくて、「出口を議論するのは早い」という黒田総裁の一言のもとで、それこそ全く出口のない状況になっている。国債の大量買い入れは続いている。非常にいびつな姿になっている。こういうことですから、しっかり国会で議論しなければならないテーマだと思います。
【フリーランス・宮崎記者】
アメリカの利上げに関して伺いたいが、新興国のリスクをどのようにお考えになっているか。段階的な利上げのスタートということで、新興国からアメリカへの資本の逃避、フライトが起こることは大なり小なり確実だと思う。リーマン・ショック後、9年半ぶりの利上げということで、今後、新興国、特に日本の輸出ということでは中国ということもあるが、どういったところに気を使っていかれるか。
【代表】
もう決まった話ですので、状況を注意深く見守るということだと思います。今、憶測でいろいろ言ってもいかがなものかと。市場も既にある程度のものは織り込んでいるとも思いますし、どういう状況が起こるかということは想像ではいろいろ言えますが、もう決まったことではありますので、ここで私が私の考え方を言うことは控えたいと思います。
[引用終わり]
◇
アメリカFRB(ジャネット・イエレン議長)はきょう午前4時過ぎ、段階的な利上げのスタートを発表しました。
米国時刻では、2015年12月16日(水)の出来事です。
利上げは9年半ぶりとも言えますし、リーマンショックから数えると7年ぶりとも言えます。21世紀のグローバリゼーションとIT化による「マネー資本主義」が歴史的転換点を迎えました。
21世紀国際経済の成長のエンジン、新興国から、マネーが米国に流れる(戻る)キャピタルフライトが起きそうです。
こちらをご覧ください。FRBのウェブサイトにあるグラフです。
上は、FRBのマネタリーベースのグラフです。1960年から2013年までの、米ドルの量(紙幣、預金、コンピュータ上の記憶も含む)です。2008年のリーマンショック後に、滝を遡っています。これを「非伝統的金融手法」といいます。FRBが金利を上げ下げする、という伝統的な手法ではなく、FRBが国債などを買い込んで、米ドルを出す「非伝統的な」手法。
上のグラフを見てもらえれば、リーマンショック(2008年)後の、アメリカがいかに「非伝統的」だったか、たちどころに分かると思います。あのリーマンショックから、きょうまでに、米ドル(US dollar)の量は3倍になりました。
FRBはこの量的緩和を「QE3」(キューイースリー)と名付けました。
QE3は、2年前から出口に入りました。FRBは、「毎月850億ドルずつ買い入れる」QE3を「毎月100億ドルずつ削減する」と発表しました。ここで注意したいのは、この時点でも、マネタリーベースの拡大は続いており、その拡大ペースを削減するということです。
そして、このプラグラムを合計9回発動。わずか11カ月で手順表をやり遂げました。この日以降、米ドルマネタリーベースはほとんど増減はありません。
この「緩和ペースを削減して、緩和を止めること」を、市場は「テーパリング」とあだ名をつけました。テーパリングというのは「ろうそくが先にいくほど細くなる」というニュアンスからついたあだ名のようです。
この間の日本。
民主党政権時の白川日銀総裁は「中長期的な物価安定の理解」として年1%インフレに向けた調節をしました。自民党政権の黒田日銀総裁は「2年間でマネタリーベースを2倍にする」というまさに異次元の量的緩和をし、続けています。この間の米ドルと日本円との通貨量の非対称性にともない、民主党政権時で名目レートで円高となり、自民党政権時では円安になる。きわめて極端な変動。これは実は、小学校の算数並みに簡単な話です。
そして、ついに、日本円(JPN Yen)は、名目レートどころか、円の強さを示す、実効為替レートでも、過去最弱となっています。
対ドルに限れば、円安は来年以降も続きそうです。
このアメリカが「発明」して、世界各国が続く、自国のために、自国通貨の価値を薄めてしまう、人類史上初の「国際通貨安(切り下げ)戦争」。
なお、筆者・宮崎信行は、この出口戦略についての、手順表の研究をずっと続けてきました。きょうはその事実だけをお伝えして、この記事をしめます。
このエントリー記事の本文は以上です。
(C)宮崎信行 Nobuyuki Miyazaki
(http://miyazakinobuyuki.net/)
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