宮崎信行の国会傍聴記

元日本経済新聞記者の政治ジャーナリスト宮崎信行が衆参両院と提出予定法案を網羅して書いています。

【法案作成段階】「電気通信事業法改正案」を出したい総務省内部に遅れ、新経済連盟「規制強化そのものに反対で」異例の年越し「電気通信事業ガバナンス研究会」あす(1/11)開催も難航か

2022年01月10日 20時19分51秒 | 既に提出された【法案】
[写真]総務省を背にする筆者、4年前の2018年8月、宮崎信行撮影。

 総務省は「電気通信事業法改正案」を第208回通常国会に提出したい意向でしたが、内部とりまとめが遅れ、法案の提出や成立に暗雲が垂れ込めました。

 総務省のテレコム(旧郵政省)の一つ「総合通信基盤局」はきょねんゴールデンウィーク前後に「電気通信事業ガバナンス検討会」をつくりました。民間企業の日本郵政、東北新社をめぐり鈴木事務次官更迭、元・前・現情報流通行政局長などの激震が収まっていない時期でした。きょねん11月12日の第11回会合で「実施すべき措置」を決定しましたが、あす2022年1月11日の第15回会合は「事業者からのヒアリングとその他」の議題にとどまり、最終とりまとめができていません。楽天モバイルなどが影響力を持つ「新経済連盟」が反論をインターネット内外で発表したためではないかとささやかれています。

 11月の「実施すべき措置」中間とりまとめでは、流出・障害があった事業者から総務省への報告義務や事業者から利用者への情報の公開・開示を広げる規定が盛り込まれていました。サーバーが海外にあったり、クラウドを活用したりしている場合の規定も載っていました。現行法を整理する改正規定もイメージされたようです。

 しかし、2月下旬ないし3月上旬に閣議決定される通常国会提出法案の前段階としては異例の越年となりました。事業者から規制の対象になる利用者の人数などで異論が出たようです。新経済連盟のホームページによると、どうやら規制強化そのものに反対のようです。5G税制では自民党実力者に直接話が通じ減税が法定化され、首相案件の4割値引きの後に基地局の郵便局を有償で設置する包括契約が決まりましたが、事業者が郵政に恩を売った力関係でしょう。

 総務大臣官房・内閣官房総務官室は今週、国会に「提出予定法律案件名・要旨調」を出しますが、とりあえず載せて、法案提出そのものを断念・延期するスケジュールもありそうです。

 総務委員会は、「地方税法改正案」(208閣法 号)と「地方交付税法改正案」(208閣法 号)を3月までに審議をし、その後は、「放送法改正案」(208閣法 号)などを審議するはこびです。

 おととし検察庁法で大混乱した法務省は2年後のことしも法案の提出スケジュールが難航。きょねん衆議院予算委員会で大混乱した総務省テレコムも解散までに成立しなかった2法案のうちの1法案の提出者ですから、波が静かになるのを待つ時代かもしれません。

このエントリーの本文記事は以上です。
国会傍聴取材支援基金の創設とご協力のお願いをご一読くださり、ご寄付をお願いします。 
このニュースサイトは以下のウェブサイトを活用しています。
Ⓒ2022年、宮崎信行 Miyazaki Nobuyuki、宮崎機械株式会社。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

首相、大企業のコロナ債務棒引きへ「私的整理円滑化法」法案を検討、債務軽減、大企業ゾンビ化も

2022年01月10日 16時16分27秒 | 既に提出された【法案】
[写真]金融庁、4年前の2018年、宮崎信行撮影。

 岸田文雄首相は、コロナ禍で、公庫融資・協会信用保証による無担保低金利融資による債務過剰感が高まっているとの認識を強調し、大企業の債務を棒引きする「私的整理円滑化法」の法案を検討することを打ち出しました。

 菅義偉政権の「成長戦略会議」(竹中平蔵委員ら)が9月に出した「成長戦略の秋に向けた検討課題」にあり、岸田首相のもと「採算性回復が望める事業者の債務整理のため、全ての貸し手の同意がなければ債務軽減ができない制度を見直し、私的整理円滑化のための法制度をつくります」と断定調で「新しい資本主義実現会議の緊急提言」に先月入りました。

 首相は「文藝春秋2022年2月号」に「既存企業の新たな事業再構築に向けた努力の環境整備も大切です。コロナ禍が始まって二年となる中で、債務の過剰感を持つ事業者が増えています。民間調査会社が行ったアンケート調査では、「債務の過剰感がある」と回答した企業は、大企業が一六・七%、中小企業が三五・七%に上りました。新たな成長に向けて企業の事業再構築を進めていくためには、主な貸し手、メインバンクが債務を軽減すれば新たな投資が可能であると判断する場合には、全ての貸し手の同意がなくても、債務の軽減措置が決定できるよう、法制整備を図ります」としました。

 思惑としては、首相は自民党証券議員連盟の会長ですので、証券・保険が販売する劣後ローンなど資産性のある資金提供と、銀行融資を交換することで、銀行に負担が少ない格好で、バランスシートを整えるということなのかもしれません。また金融庁は7年前に研究結果の中間とりまとめを出していますが、きょねん1・1兆円の事業再構築支援金の真水の税金を大企業に交付した経済産業省が中心になって検討するという観測も、一部で報道されています。

 きょねんは半世紀ぶりに東京証券取引所プライム上場企業の倒産がゼロでした。雇用保険料や税金の直接投入に加えて、政府の肩代わりも頭の片隅に置いた借金棒引きとなると、100年続く大企業のゾンビ化による漂流した新しい資本主義が強固なものになるかもしれません。

 法案提出の日程感は不明。

このエントリーの本文記事は以上です。
国会傍聴取材支援基金の創設とご協力のお願いをご一読くださり、ご寄付をお願いします。 
このニュースサイトは以下のウェブサイトを活用しています。
Ⓒ2022年、宮崎信行 Miyazaki Nobuyuki、宮崎機械株式会社。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

首相が2022年夏に「新しい資本主義実現のグランドデザイン工程表」、2023年6月の広島などサミット見すえる、黄金の3年間も念頭か

2022年01月10日 15時57分45秒 | 第26回参院選(2022年7月)
[写真]新しい資本主義実現会議の芳野友子委員、4年前の2018年4月27日、宮崎信行撮影。

 岸田文雄首相は「文藝春秋2022年2月号」で、半年後の2022年の夏に、新しい資本主義実現会議の「2023年サミットを見すえたグランドデザインと工程表」をつくるスケジュールを明示しました。「夏」が7月10日の参院選の前なのか後なのか、骨太の方針に代わるものかそうでないのかは不明。

 首相は「以上、新しい資本主義について、私が考えるところを述べさせていただきました。二〇二三年 G7サミット日本開催を見据え、今夏にはこれまで述べてきたようなグランドデザインを深め、それを具体的な行動に落とし込んだ実行計画を、工程表を明示した上で、策定します。そして、これらを通じて、世界的課題となっている「分断」や「格差」を乗り越える、新しい資本主義の具体像を世界に問いたいと考えます。 その実行のため、日本政府は、総力を挙げて取り組みますが、政府だけで実行はできません。政府、企業、大学等、国民の皆さん、それぞれが役割分担の下に、課題の解決に臨んでいく必要があります」としました。

 協議体は「新しい資本主義実現会議・本部(きょねん10月閣議決定)」になる見通し。経済財政政策諮問会議の「骨太の方針」はきょねん2021年6月から急に薄くなったので、外されるかもしれません。両者の委員を比較すると、経団連会長に加えて、「新しい資本主義」は芳野友子連合会長が入ってます。先月、「緊急提言」を出していますが、公正取引委員会のフリーランス保護、経済安保、大学ファンドの法制化など、安倍・菅政権の官邸官僚らの政策メニューを蛍光マーカーペンで強調したような内容が中心となっています。

 第26回参院選公示直後のドイツで首相は2023年サミットの開催地を発表するので、きょねんの衆院選のように「未来選択選挙」を陣立てるのか。それとも、自公で衆参過半数を維持できる「黄金の3年間」の長期政権のために参院選後に確定するのか。

 2024年9月の自民党総裁選、2025年6月の第27回参院選、2025年10月以前の第50回衆院選を見すえた「黄金の3年間」。終わる時期は、私は51歳以下、お金はくれないが、永田町・霞が関の絶大な後見人である岡田克也さんは71歳で、菅義偉さんが首相になったのと同じ歳ですので、どんと構えて、職人技の政治報道を続けていきます。そのころには、芳野友子さんがこのブログを見て激高しパワハラまがいの指示に驚いた連合プロパー職員による閉鎖的で陰湿な筆者の締め出しも解けているでしょう。どうせ定年だし。これからも自分の手を汚さずに、敵を日本の経済・社会から消していきます。

このエントリーの本文記事は以上です。
国会傍聴取材支援基金の創設とご協力のお願いをご一読くださり、ご寄付をお願いします。 
このニュースサイトは以下のウェブサイトを活用しています。
Ⓒ2022年、宮崎信行 Miyazaki Nobuyuki、宮崎機械株式会社。




コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする