宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

株主利益を人的資本へ投入、株主配当を減らして従業員報酬に回す「労働分配率向上」を自民党が初めて言及、筆者試算で年10万円給与アップ、首相「2022年末に非開示情報の公開ルール策定」

2022年01月19日 20時41分13秒 | 第208回通常国会 令和4年2022年1月
[写真]「株主」の立場で多くの配当を得ている日本生命、千代田区の東京駅丸の内口前で、宮崎信行撮影。

 今週の衆議院本会議で、岸田文雄首相と梶山弘志自民党幹事長代行が、一つの企業の中で、株主配当を減らして、従業員の報酬に回す「労働分配率」向上に初めて言及しました。

 きょう令和4年2022年1月19日(水)のことし初めての国会質問で、梶山さんは「既存の分配構造を是正し、「人」を中心に据えた分配を実現するためには、株主利益の人的資本への投入(略)など、あらゆる政策手段を通じて賃上げを実現させることが必要です」と語りました。

 おとといの首相(自民党総裁)の施政方針演説の「人的投資が、企業の持続的な価値創造の基盤であるという点について、株主と共通の理解を作っていくため、今年中に非財務情報の開示ルールを策定します」の部分に呼応した質問演説と思われます。

 2012年12月の政権再交代と2013年4月からの日本銀行の量的金融緩和と株式ETF購入で、東京証券取引所プライム上場企業の株主配当は、年5・8兆円から年11・6兆円とちょうど2倍になっています。卑近な話ですが、筆者が家業がらみで亡父から個人と個人として相続した上場製造業株式は政治的揚げ足取りにあわないよう売買しませんが、1銘柄703株は配当が4倍ないし2・5倍、株価が2倍強になっています。日本全体のマクロで見れば、年6兆円を配当ではなく従業員報酬に回すと、上場企業正社員限定に回せば1人年収200万円、全労働者にならすと1人年収10万円アップする計算になります。

 これからのお金は、自民党の3世議員、立憲民主党の叩き上げ議員、霞が関官僚の「政府国庫」の出入りがまったくない分配であり、政治家・官僚がこれまで「分配政策のキモ」だと気づいていなかったと考えられます。

 但し、法的に誘導するにはどうすればいいかの方策はなかったと思います。それが首相の「2022年末までに非開示情報の公開ルール」とすることで、従業員一人当たりの個別の年収を開示させる行政指導を2000社の上場企業に「要請」する考えだと思われます。

 そもそも、株主とは法人か個人か、日本人か外国人かよく分かりませんが、最大の株主である日本銀行が購入する投資信託会社は反対しないでしょう。日本生命は猛烈に反対すると考えられます。一方、経団連は出す側ですので、賛成すると思われます。その他、証券会社も反対するでしょうが、自民党・経団連・日銀が賛成すれば、そちらが通るでしょう。

 7月10日の参院選で自公が大敗することは構造的に考えにくく、「黄金の3年間」となる見込みで、この政策は5割以上実現する可能性が高いと考えられます。

 反対の圧力が日本生命以外に、外国人機関投資家からかかると考えられますが、あまり「団体」があると聞いたことはなく、自民党証券議員連盟会長をつとめる首相にどのようなプロセスから「要望」があるかは興味深いところです。

 同時に与野党問わず、国会議員、官僚はこのことに気付かなかったか国庫の出入りでしか成長と分配を見られなかった視野の狭さを猛省してほしいところです。文通費改革とかやっている場合ではありません。

このエントリーの本文記事は以上です。
国会傍聴取材支援基金の創設とご協力のお願いをご一読くださり、ご寄付をお願いします。 
このニュースサイトは以下のウェブサイトを活用しています。
Ⓒ2022年、宮崎信行 Miyazaki Nobuyuki、宮崎機械株式会社。

立憲民主党は強烈に挑発、泉健太「デジタル田園都市国家構想は地方の人口増の目標数字を出せ」小川淳也「沖縄振興0・24兆円は再計上して、予算案は国会に再提出しろ」

2022年01月19日 17時57分29秒 | 第208回通常国会 令和4年2022年1月
[写真]立憲民主党の泉健太代表と小川淳也政調会長、2021年11月19日、宮崎信行撮影。

 オミクロンはきのう全国で32197名、きょう東京で7377名。テレビと違って、こちら東京のまちは平日昼からめっきり人、車が減りました。

【衆議院本会議 きょう令和4年2022年1月19日(水)】

 おとといの施政方針演説に対する代表質問がありました。感染対策で「議席番号偶数組」のみリアル出席で、この議員たちはことし初めて本会議場に入ったはずです。

 立憲民主党の泉健太代表、自民党の梶山弘志幹事長代行、立憲民主党の小川淳也政調会長が質問し、答弁は岸田文雄首相ただひとりでした。

 泉代表は「さて、オミクロン株が急拡大をしています。国民の皆様、マスク、手洗い、換気など、身近な感染防止策の徹底を改めてお願いします」と提案し、「立憲民主党は国民の命と暮らしを守るため、今後もより良い改善提案を続けます」としました。

 先の衆院選で話題となった「分配と成長」について泉さんは「3つの分配を提案します」とし(1)所得の再分配(2)地方への分配(3)将来への分配ーーをあげました。ところで、筆者が指摘している株式会社の売上のうち従業員の賃金の割合「労働分配率」については政治家で議論にあまりなりません。本会議場に戻って、泉さんは「デジタル田園都市国家構想で、地方のデジタル化を進め、インフラをバージョンアップさせるならば、この際明確に、目標の一つに、地方圏の人口増を掲げてはいかがでしょうか」と挑発しました。

 首相は「官と民が共同して成長戦略と分配戦略が市場の失敗と外部不経済にならない仕組みを資本主義の中に埋め込む」と答弁しました。泉さんが提案した、インボイスの中止や、日米地位協定の改定にはゼロ答弁でした。

 不透明な岸田総裁当選後の自民党執行部は二世ばかりですが、梶山幹事長代行は「欧米では気候変動対策を将来の世代の持続的な繁栄に向けたカギとしている」とし「日本も経済と環境の好循環による成長のタネを分配すべきだ」と主張しました。

 小川淳也さんは、「沖縄で対話集会をした」ことを紹介し、沖縄振興法と離島振興法が今国会で期限を迎える政治日程に言及。菅直人内閣で、岡田克也与党幹事長と枝野幸男官房長官が実現した国が内閣府を通じて県に3000億円を渡し切る「沖縄地域自主戦略交付金」(地方一括交付金)が2400億円に減らされた予算について「一見謙虚で丁寧を装う岸田政権がそこまでやるのか」とし「昨年と同程度を計上して、予算案への国会への再提出を行うべきだと考えます」と激しく挑発しました。離島振興法も「航路は道路だ」と離島の公共交通への独立採算の原則の撤廃を求めました。いったん別の話ですが、前回の改正過疎法で卒業市町村の懸念があったのですが2020年国勢調査で卒業はゼロで過疎自治体は増えただけだという総務省の計算がきょう報道されました。

 小川さんは「改めて総理の言う新しい資本主義とはいったいなんなのか。成長と分配という言葉は聞き古しました。重要な再分配の柱たる金融所得課税をなぜ早々にひっこめたのか」と核心をつきました。

このエントリーの本文記事は以上です。
国会傍聴取材支援基金の創設とご協力のお願いをご一読くださり、ご寄付をお願いします。 
このニュースサイトは以下のウェブサイトを活用しています。
Ⓒ2022年、宮崎信行 Miyazaki Nobuyuki、宮崎機械株式会社。

NHKきょうから議運委は国会中継せず、オミクロン株でまん延防止の区域・期間拡大、ことしの通常国会も「冒頭はコロナ」

2022年01月19日 11時43分19秒 | 第208回通常国会 令和4年2022年1月
 召集3日目、残り会期147日間ですが、代表質問より前に審議がありました。

 NHKに取材したところ、7日(金)の沖縄・山口・広島のまん延防止措置の衆参の議院運営委員会は「ニュース」で生中継しましたが、きょうの議運委は生中継では放送しませんでした。SNS、NHKふれあいセンターにもとくに不満は上がっていないようです。

【衆議院議院運営委員会 きょう令和4年2022年1月19日(水)】

 午前10時半から衆、午前11時から参。時間が早かったこともNHKが放送しなかった理由かもしれません。

 まん延防止措置の区域・期間の変更。沖縄・広島・山口に加えて、東京都、神奈川、千葉、埼玉、群馬、新潟、岐阜、愛知、三重、香川、長崎、熊本、宮崎。1月21日(金)から2月13日(日)まで。

 山際大志郎大臣は「医療提供体制レベルは2だが、先週・今週比が高い」「分科会では、ブレークスルー感染が増えている」と政府報告しました。

 これに対する質疑で、立憲民主党の吉田晴美(吉田はるみ)さんは「ブレークスルー感染の割合」を質問。山際大臣は「12日までの191例のうちワクチン2回接種者は145例。75・9%となっている」と答弁。この数字は初めて出ると思いますが、2回接種後のブレークスルー感染がオミクロンで多いことは間違いなく体制の立て直しが迫られそうです。

 共産党の塩川鉄也さんからは前任の西村康稔大臣が連日記者会見をしたのに、山際大臣が尾身茂・分科会会長との記者会見を一度もしていないことを指摘。岸田文雄首相から尾身さんを記者会見で出すのを止められているとの分析を披露しました。

【参議院議院運営委員会 同日】

 横沢高徳さんから、大阪府など近畿の状況について。報道ではきょう協議するとされ、それならば、あすまた指定しないといけないことになります。山際大臣は「連携はとらせてもらっている」とだけ答弁しました。

【追記12:12】12時9分に散会しました。参では本会議があるときは念のため休憩にしますが、きょうは珍しく散会となりました。【追記終わり】



 「新型コロナ特措法」(平成24年法律31号=最終改正法はきょねん2月3日公布)を改めて読みました。今週の千葉県知事の報道でやや分かりにくかったのですが、各県内のどの市町村を指定するかも、権限は政府対策本部長です。それと、医療機関は「補償」ですが、事業者は「支援」。参院選を控えた日本政治の焦点は「協力金が公平かどうか」に移りつつあります。たんに私の偏見では「工業が盛んな県は夜の飲食で感染が広がりやすい」としてきましたが、調べたら完全な偏見でしたし、商業が盛んな都県が広がりやすい。オミクロン株は1日3万人を超えましたが、「デルタ株より重症化率は10分の1」との憶測もありますが、それでも10倍感染者が多ければ社会としては同じことになります。

【衆議院本会議 同日】

 午後1時から代表質問。別記事で紹介します。

このエントリーの本文記事は以上です。
国会傍聴取材支援基金の創設とご協力のお願いをご一読くださり、ご寄付をお願いします。 
このニュースサイトは以下のウェブサイトを活用しています。
Ⓒ2022年、宮崎信行 Miyazaki Nobuyuki、宮崎機械株式会社。