時空を超えて Beyond Time and Space

人生の断片から Fragmentary Notes in My Life 
   桑原靖夫のブログ

最初の100日に向けて

2008年11月21日 | 回想のアメリカ

  「私のミドルネームは、私がいつか大統領に立候補するだろうとは夢にも思わなかった人間がつけたものだ」(大統領選の過程でのある慈善パーティで、アラブ系のミドルネーム「フセイン」についてのジョーク。ちなみに、オバマ氏のフルネームは、Barack Hussein Obama と、ミドルネームがイスラムとのつながりを思わせるものになっている(News Week, Oct. 29, 2008, Japanese edition)


 新年の大統領就任式を約2ヵ月後の1月20日に控えて、オバマ氏の動きは大変めまぐるしくなっている。もちろん、アメリカが震源地となったグローバルな大不況は終息する気配はまったくみえない。それどころか、さらに悪化の動きさえ見せている。あれだけ熱狂した選挙の後の虚脱感も漂っている。間もなく政権を担う者としては、うかうかできないという事情があることはいうまでもない。

 事態は急を告げている。長年にわたりアメリカを象徴してきた世界的自動車企業GMなどビッグスリーまでもが崩壊寸前だ。そして、いうまでもなくイラク戦争の行方はまったく見えない。目の前に立ちはだかる危機の大きさは、しばしば比較される1930年代大恐慌に十分匹敵する深刻なものだ。オバマ氏自身も大恐慌のさなかに大統領の座を受け継いだフランクリン・D・ローズヴェルトと比較されている。他方、ブッシュ大統領は惨憺たる形で退場を迫られることになりそうだ。こちらも、大恐慌になすすべがなかったフーバー大統領と同列に並べられている。


 上に掲げた最近のTime誌(November 24,2008)の表紙、かのFDRのお得意のポーズだった。当時はこのようにオープンカーで遊説ができるほどの安全度だった。FDRはアメリカ歴代大統領の中でも人気抜群の大統領の一人だ。アメリカ国民の多くが、FDRにオバマ新大統領を重ねて「大いなる期待」great expectation を抱いていることが伝わってくる。 

 それにしても、近年の大統領の中ではオバマ氏は図抜けて行動的といえるだろう。あのビル・クリントンでも12月中には主要な役職の指名さえしなかった。オバマ氏は当選後の演説で、「一刻も待てない」 “We don’t have a moment to lose” と述べている。  

 「ティーム・オバマ」の編成は着々と進行しているようだ。オバマ氏が先日までマケイン候補以上に強敵としていたクリントン陣営の人材を、中枢に活用しようとしていることが伝わってくる。共和党系の人材登用の話もあるようだ。アメリカの危機を前に、政党、党派を分け隔てる壁は顕著に低くなった。うわさに上っているヒラリー・クリントン国務長官が生まれれば、これは最強の布陣になるのでは。賢明な二人のことだから、「両雄並び立たず」ということにはならないだろう。

 大不況の克服と並んで、世界が最も期待するのは、オバマ新大統領のイスラム教国への対応だ。彼が演説の終わりにしばしば口にする「神よ、アメリカにご加護を!」God bless America の神が、もはやキリスト教の神にとどまらないことに、大きな期待をつなぎたい。アメリカも多神教の国になっている。アルカイーダは、オバマ大統領はイスラムの敵だと発表し、依然アメリカを敵視する姿勢を崩していない。新大統領と遠い祖先でつながっているイスラム世界への細い糸が世界を救うことを祈りたい。



FDRの山荘 Top Cottage の管理人の孫娘(5歳)と話すFDR。車いすのFDRの写真は、わずか2枚しかないといわれる。しかし、FDRは多忙を極めた日常の中、頻繁にポリオなど難病の子供たちを見舞っていた。(写真出所 Smith 1952)






References
 ’Change, What It Looks Like’ Time November 25, 2008.

Jean Edward Smith. FDR. New York: Harper & Row, 1952.

コメント (2)
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