フランス語で講談ができるなんて考えもしなかった。ユニークな女講談師神田紅がフランス、ストラスブールで試みた短いTV番組*を見た。日仏交流150周年記念行事のひとつとして、神田自身が考えたらしい。
演題は「マダム貞奴」だった。貞奴(川上貞奴、明治4年ー昭和21年)は元来売れっ子の芸妓であったが、自由民権運動の活動家で、書生芝居の興行主でもあった川上音二郎と結婚し、波瀾万丈の人生を送った。経済的に急迫した川上一座とともにアメリカへ渡った後、ロンドン、パリなどで公演し、大成功を収めた。帰国後、帝国女優養成所を設立。日本の女優第一号といわれる。この貞奴の人生、なにかの折にその一部は聞き及んでいたが、ドラマ以上に劇的だったようだ。明治の人の構想、気概の大きさを思い知らされる。
神田はこの試みを実現するために、フランス語を特訓したらしい。紅の衣装に身を包んだ踊りも含まれていた。昨今、日本でもあまり聞くことのない講談だが、フランス人にはどう受け取られたのだろうか。フランス帰りした「貞奴」は、再び好意で迎えられたようだ。ロレーヌ探訪の途上訪れたストラスブールの光景が意外なことでよみがえった。
* 「講談師神田紅、フランス公演」2008年11月28日 NHKBS1 23:00
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