時空を超えて Beyond Time and Space

人生の断片から Fragmentary Notes in My Life 
   桑原靖夫のブログ

車はいくらで売れただろうか:大恐慌の一コマ

2020年07月13日 | 特別トピックス


For sale, after the crash
New York City, 1929
Source:A Story of AMERICA in 100 Photographs, LIFE, New York, vol. 18, no.13, June 20, 2018

この写真はいかなる状況を写したものでしょうか。

1929年10月16日、イエール大学の経済学者アーヴィング・フィッシャー は、New York Times の論説で次のように述べた。 「株価は長く続く高い水準の高原状態に達したようにみえる」しかし、その後1週間もしない10月24日、暗黒の木曜日、株価は急落し始め、金融市場の崩壊は広範に及び、復元し難いものとなった。ウオール・ストリートは壊滅した。
 
これに先立つ10月半ば、投資家のウオルター・ソーントン氏は、彼のピカピカのクライスラー・シリーズ75、ロードスターを誇らしげに運転していた。
10月30日、水曜日、彼はニューヨークのダウンタウンの街角で、自暴自棄になって愛車を100ドルで買うものがいないか、探し求めていた。この写真は、「大活況の1920年代」の突然の終幕と1930年代の大恐慌の幕開けを示すシンボル的な一コマといえる。

自動車産業はアメリカ最大の産業であり、1929年までは売り上げは上昇一辺倒で、そこまで5,358,420台を販売していた。しかし、市場は一挙に破綻し、デトロイトはその後長く荒廃した。

ソーントン氏が彼の車をいくらで売ることができたかは分からない。しかし、デトロイトが1929年に生産した台数に達するまでには20年ちかくを要した。

これは、資本主義社会が初めて経験した古典的ともいえる恐慌、大不況の象徴的光景であった。しかし、世界はその後同じような破滅的事態を大小含めて何度か繰り返すことになる。

この「1929年大恐慌」については、今日まで多くの研究成果が蓄積されてきた。世界を大きな不況が襲うごとに、この時の経験がさまざまに論じられてきた。いわば一つの判断基準(ベンチマーク)の役割を果たしてきた。リーマンショック、さらに今回の新型コロナウイルスがもたらした世界的不況においても、論及されることが多い。ブログ筆者はこれまでの人生で、「1929年大恐慌」を経験した人々の体験を聞き、多くの知見を得ることができた。その断片をここに記しているが、もう少しだけ続けてみたい。
続く



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