時空を超えて Beyond Time and Space

人生の断片から Fragmentary Notes in My Life 
   桑原靖夫のブログ

政策はまたも不在:新型コロナウイルス経済政策

2020年05月28日 | 特別トピックス

 
緊急事態宣言の解除で、新型コロナウイルス対策は一つの区切りを迎えた。医療面での対応は別として、財政支出が伴う国民ひとり当たりマスク2枚、10万円給付の対応は、未だ実現していない地域もかなり多いようだ。

マスク給付は遅れた上に品質もいまひとつ、ほとんど使い物にならなかったとの感想も多く、これで救われたという声も聞かれず、およそ466億円が支出され、大きな国費の浪費となった。必要な時に役に立てない政策は、厳しく批判するしかない。ひとり2枚のマスクで、このたびのウイルス感染から逃れうると政策担当者が考えたとも思われない。

10万円給付も地域によって大きな差異が生まれ、大人口を抱える都市や区部では、オンラインはたちまちパンク状態となり、郵送書類申請に切り換えるところも増えている。今回の事態で初めてマイナンバーカードの存在と重要さを知った人も多く、その申請、更新、暗証番号の設定などで窓口が大混雑している。ブログ筆者もマスク同様、アクセスを諦めている。

多少、この混乱ぶりに行政側に同情?する部分がないわけではない。マイナンバーあるいはマイナンバーカードの説明不足、誤解、反対などが未整理のままに、今日まで推移してきたところで、突如勃発した今回の新型コロナウイルス感染問題である。多くの問題が一挙に行政の窓口に押し寄せることになった。

備えあれば憂いなし
10万円給付にまつわる諸問題は、いつ来るかもしれない次の危機への貴重な教訓となる。給付事務の渋滞・遅れなどの問題を別にすれば、この給付がいかなる経済効果を生むか、受給者の消費、投資、貯蓄などの面での行動について、しっかりした調査、検討が行われるべきではないか。

今回の給付は一回限りで、同様な給付が続けて行われる可能性は少ない。それだけに、こうした給付の経済効果は、効果を正しく掌握しておく必要がある。現在の段階では、ほとんど議論になっていないが、将来ユニヴァーサル・インカム(UBI)などのプランが地域あるいは全国を対象に構想されるような事態が生まれるとすれば、今回の10万円給付は重要な効果判断資料の一部となりうる。これほど大規模な社会実験はとてもできないからだ。それだけに今回の給付も全国的に遅滞なく実施されることが必須なのだが。

必要なのは政策目的の確立
今回の10万円給付は、政府としては「清水の舞台から飛び降りた」くらいの決断なのかもしれないが、政策目的は判然としない。突然の収入減への手当てくらいの認識なのだろうか。数ヶ月給付継続の案も出ているようだが、それならば一層政策目的の確立が必要となる。

ある国際比較によれば、世界166カ国の中で、日本政府が実施した経済支援は国内総生産(GDP)に占める比率で見ると、約2割に相当する108兆円で世界でも最高位にランクされるという。にわかに信じがたい評価でもある。
しかし、中央銀行の対応などを含めると、こうした順位は大きく変わる
(Ceyhun Elgin, BBC 8 May 2020)。

さらに、国民一人当たりの現金給付額となると、香港£985、アメリカ合衆国(£964)、日本(£752)、韓国(£659)、シンガポール(£340)などの順位となる(OECD, BBC)。

こうした経済支援は多くの国が現在も実施中であり、効果を評価するには、一定期間を限定する必要がある。マスクのように配布が長引くようだと、効果測定も難しくなる。いくら良薬を投入しても、タイミングを失すれば期待した効果は上がらない。

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