過ぎ去りし日、柿の実から亡き友を想う
(コラムの集い・秩父路の旅)
水元公園は、都内でドでかく広い。
あちこっちを、散策しながらふと思ったことがあった。
水元公園の不動池の柿木
赤い柿の実
( 一 )
一点の曇りない 青い空
陽に輝く赤い柿を見たくなった
水元公園の西から草原を横切り、
池の縁や橋を渡り 東へ
不動池が見えたころ、
くっきりと青い空に浮かぶ
赤い柿の実を見た
胸が躍った
( 二 )
友と秩父路を旅した時
車窓からの柿を見て
何てきれいな景色
かやぶき屋根に垂れ下がった柿
おじいさんと子らの
柿取りの風景が 目に映るようだ
田舎風の見方をした友
正丸トンネルを抜けて 間もなくだった
( 三 )
秩父路の里は 祭りが多い
毎日の様に どこからともなく笛や太鼓
友が言った、歌舞伎を見に行こう!
三峰神社の帰り 萩平までタクシーを飛ばした
舞台は茅葺屋根 たくさんの人が集まり見入る
出し物「仮名手本忠臣蔵」
傍らに居たお爺さんが
役者のセリフをなぞる様に呟いていた
この人元役者・・・。
歌舞伎の大フアンであった
( 四 )
友が 幕間に急に立ち上がった
舞台方向へ、つかつかと進み出た
ポケットから取り出したノシ袋 (おひねり)
気持ちです 頭を垂れ 役者に手渡した
満面の笑み 元の席に座った
歌舞伎観劇 思いつきかと思っていた
前々から練りに練った 織り込み済み予定
その時知った、御免ね
この友こそ歌舞伎大フアン
その友も逝った
そして友の友も逝った
友の詠んだ句が思い出される。
〇 秩父路やここの駅にも柿が熟れ (池さん)
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萩平農村歌舞伎会場
奥秩父探訪の旅にて・平成7年10月
筆者山奥秩父生まれの人間。
山里にはたくさんの柿木がある。
今頃になると秋空に柿の実をつつく、モズの声がかん高く響いた。
渋柿は、落とさないよう青竹の先を割り、高いところの柿を挟んで取った。
11月になると軒下が柿の簾となって、垂れ下がり
夕日が落ちるころには赤く輝いていた。
≪吊るし柿≫
夜祭の露店に”秩父名物”として並び、行く人の土産になった。
そんなこんな、あっちこっちを頭に浮かんだポエムを一気に書き上げた。
12月3日は秩父夜祭。
○ハァーエ 秋蚕仕舞うて 麦蒔き終えて 秋蚕仕舞うて 麦蒔き終えて
秩父ナァーエ 秩父夜祭り アレサ待つばかり