米長邦雄・渡部昇一対談「生き方の流儀」(到知出版社)。
この対談の興味深いところは、この箇所でした。
「対談し始めると間もなく、あの大地震が起こった。われわれは、ホテルニューオータニの37階にいた。『大船に乗った気で』という言葉があるが、正に豪華客船に乗って大洋を航海するようなものだった。・・シャンデリアも大きく揺れて天井にぶつかりそうであったので、若い編集者がテーブルに上って押さえなければならなかった。その揺れは異常に長かった。・・・われわれはホテルの避難指示の館内放送を無視して対談を続けることにした。」(p1~2)
これが、大地震の直後でも続けられた対談だったと思いながら読むと、
また、違った味わいがあるのでした。
たとえば、こんな箇所。
米長】 ナポレオンが、「勝ったと思った瞬間が、最大の危機である」という名言を残していますね。つまり、金持ちになったと喜んでいてはだめなので、やはり「勝って兜の緒を締めよ」でなくてはいけない。
渡部】 ああ、それは反省の弁ですね。ナポレオンはこうもいっていますね。「どんな小さい戦争でも、負けた知らせはすぐ教えろ。勝った知らせは少しゆっくりでもいい」と。
米長】 ああ、それは素晴らしいですね。
渡部】 負けたときにはすぐに手を打たなければいかんということですね。
米長】 話が飛びますけど、昨年の総選挙で民主党が大勝して、衆議院に三百議席も持っているでしょう。勝った、と思ったでしょうね。なんでも好き放題にできるわけですから。でも、それが民主党にとっては最大の危機だったんです。鳩山首相が沈没して、菅さんだっていつまで持つかわからない。将棋でいうと、アマチュア初段以下というレベルでしょう。本来は、三百議席を持っているということは必勝形なのだから、負けるはずがない。少しくらいヘマをやってもどうってことはないはずです。・・・・(p195)
対談が終ってから、私たちは、そのアマチュア初段以下の指し手の、お手並みを見て過さなくてはならなかった。しかも、この指し手は、『なんでも好き放題にできるわけですから』まだ将棋を指したがっている。誰と指したがっているかといえば、相手にしているのは『市民』。現在進行形の原発問題でも、津波被害問題でもなく。背後に響く言葉は「ヘマをやってもどうってことはないはずです」。
この対談の興味深いところは、この箇所でした。
「対談し始めると間もなく、あの大地震が起こった。われわれは、ホテルニューオータニの37階にいた。『大船に乗った気で』という言葉があるが、正に豪華客船に乗って大洋を航海するようなものだった。・・シャンデリアも大きく揺れて天井にぶつかりそうであったので、若い編集者がテーブルに上って押さえなければならなかった。その揺れは異常に長かった。・・・われわれはホテルの避難指示の館内放送を無視して対談を続けることにした。」(p1~2)
これが、大地震の直後でも続けられた対談だったと思いながら読むと、
また、違った味わいがあるのでした。
たとえば、こんな箇所。
米長】 ナポレオンが、「勝ったと思った瞬間が、最大の危機である」という名言を残していますね。つまり、金持ちになったと喜んでいてはだめなので、やはり「勝って兜の緒を締めよ」でなくてはいけない。
渡部】 ああ、それは反省の弁ですね。ナポレオンはこうもいっていますね。「どんな小さい戦争でも、負けた知らせはすぐ教えろ。勝った知らせは少しゆっくりでもいい」と。
米長】 ああ、それは素晴らしいですね。
渡部】 負けたときにはすぐに手を打たなければいかんということですね。
米長】 話が飛びますけど、昨年の総選挙で民主党が大勝して、衆議院に三百議席も持っているでしょう。勝った、と思ったでしょうね。なんでも好き放題にできるわけですから。でも、それが民主党にとっては最大の危機だったんです。鳩山首相が沈没して、菅さんだっていつまで持つかわからない。将棋でいうと、アマチュア初段以下というレベルでしょう。本来は、三百議席を持っているということは必勝形なのだから、負けるはずがない。少しくらいヘマをやってもどうってことはないはずです。・・・・(p195)
対談が終ってから、私たちは、そのアマチュア初段以下の指し手の、お手並みを見て過さなくてはならなかった。しかも、この指し手は、『なんでも好き放題にできるわけですから』まだ将棋を指したがっている。誰と指したがっているかといえば、相手にしているのは『市民』。現在進行形の原発問題でも、津波被害問題でもなく。背後に響く言葉は「ヘマをやってもどうってことはないはずです」。