和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

レッスン『梅棹忠夫』。

2019-06-21 | 本棚並べ
小長谷有紀編「梅棹忠夫のことば」(河出書房新社)。
この本が気になったので、
小長谷有紀さんの本をネット注文。
「ウメサオタダオが語る、梅棹忠夫」(ミネルヴァ書房)
が、今日届く。

はい。序章をひらく。
気になったのは、この箇所

「ちなみに、出勤前に美容院へ行くのは
決してさぼりではないことをお断りしておきたい。
フレックスタイム制で時間の使い方は自由なのである。

実は、研究者にとって休みなどない。
とりわけ人文系の場合、実験系の理系とはちがって、
家で休むときこそ、論文を読んだり、書いたり、
まさに『書き入れ時』となる。・・・」(p3)

梅棹忠夫氏が亡くなって、
半年後くらいに追悼展示をすることとなり、
その展示の実行委員長に指名された小長谷さん。
まずは、梅棹氏との距離。

「私は決して梅棹忠夫の弟子ではない。
彼がまだ目の見えるうちには一度しか会ったことがなく、
彼から指導を受けた経験がないからである。
しかし、『梅棹忠夫著作首』の編集者たいのなかで
・・・私がもっとも若かった、それで白羽の矢が立ったのである。」
(p7)

「まず、一カ月かけて著作集全22巻を読んだ。
おもしろいと思うところに線を引きながら。
そして、私が線を引いたところを、
アルバイトの方にワープロでタイピングしてもらう。
これによって、濃縮版デジタル著作集のできあがり。
ファイル名は『梅棹忠夫のことば』とした。
以後、この『梅棹忠夫のことば』テキストを使って
展示場のキャプション等を作ることになる。

わずか一回かぎり、しかも読み飛ばしにすぎないけれども、
そうやって最小限の知識を脳みそにたたきこんでから、
私は『梅棹アーカイブズ』の資料と対峙した。
・・選び出してゆく作業は、私にとって
『梅棹忠夫との出会い』そのものだった。・・」
(p8)

はい。序章だけで、私は満腹。
それにしても、
小長谷有紀編「梅棹忠夫のことば」には、
そういう、いきさつがあったのだ。


はい。
「梅棹忠夫語る」(聞き手小山修三)と
「梅棹忠夫のことば」(小長谷有紀編)と
二冊のガイドブックが付きました。
著作集の脇道、枝葉末節に迷い込んだら、
この二冊が指示してくれる筋道を辿れる。
なんとも、贅沢な気分になります。
ありがたい。
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雨のあと。

2019-06-21 | 詩歌
理論社の少年詩集シリーズ。
牧野文子少年詩集「あめんぼのゆめ」を古本で購入。

はい。余白がたっぷりしていると、
ぜいたくな気分にひたれます(笑)。
せっかくですから、一篇の詩を引用。



  雨のあと(二)

 雨のあと
 蜘蛛の巣の真ん中で
 蜘蛛が
 ぴょいぴょいと水をはじくのを見た
 雨のあと
 くつぬぎ石の脇に置いていた
 古い木箱を取ったら
 がまの息子が
 もっそもっそと動くのを見た
 草をひく私の脚をさす
 ぶゆはいるし
 蛾は飛び回っているし
 蟻は動き回っている
 ばらの花の中には
 うずくまるのが好きならしい
 かなぶんがいる
 杉の枝に屋根びさしに
 蜂の巣がぶら下がっていて
 蜂が出たり入ったり
 てんとう虫
 毛虫
 あぶら虫
 根切り虫
 夜盗虫(よとうむし)
 小さい家の小さい庭に
 なんと無数の生き物が同居していることか
 そしてみんな生き物には
 踊り出す時間がある
 雨のあとはなおのこと
 戦争があって
 人間だけが
 踊る気になれない時間が
 こんなに続いていてよいものか・・・

ほぼ、一篇の詩にひとつの絵。
夫の牧野四子吉氏の絵が、
余白の中にしめる確かさ。


最後にある短い著者紹介の一行目は

「1904年大阪市に生れる。神戸女学院卒業。」


さてっと(笑)。
この古本の話。
広島県安芸高田市の古本屋さんから購入。
送料共で499円。カバー付きで、きれいな一冊。
カバー見返しに
「戸河内町松原PTA」とハンコが押してある。
検索すると、もう町村合併でこの町名はなくなって
おりました。本の背にはラベルなし。
きれいに、読まれないままに、
そのまま古本屋へと。
そんな流れを思ってみる古本でした。
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