身近に本棚から、京都が見つけられるとうれしい。
桑原武夫著「昔の人 今の状況」(岩波書店・1983年)
そこに、こんな箇所。
「ノーベル賞の経済学者、F・A・ハイエク博士が1978年の秋、
今西錦司と三回の対談をもつために来日したとき、世話役を
ひきうけていた西堀栄三郎と私は、ある晩、博士の宿舎であった
都ホテルに京都の学者たちを招いて、歓迎のレセプションを開いた。
吉川幸次郎が来てくれたのはよかったが、
何がきっかけであったか、西堀と口論をはじめてしまった。
国際的な中国文学の権威で、日本人として有史以来最も多く
の漢籍を読破した人と噂される吉川が、
世の中に本ほど尊いものはない、読書こそ人生最高の喜びだ、
と言ったのを聞きとがめて、
日本山岳会会長であると同時に、品質管理学の第一人者として
日本の貿易振興に最も貢献した西堀がからんだのである。
何をなし、何をつくるかが肝心なので、
本などなくてすめばそれにこしたことはない、
などと言いだしたのだから、もめるのが当然だ。
どちらもお酒が入っているのだから、ひっこみがつかない。
信念のぶっつけ合いからは何も生まれないことを知っている私は、
なかに割り込んでなんとか収めたが、記憶に残る一場面であった。
この二人を両極として、
その間に京都大学の知的世界がひろがっているのだなと思った。
上山春平、梅原猛、多田道太郎、川喜田二郎、梅棹忠夫などの
思想家がそこから輩出した。思想とは、ここでは
自分の専門領域を超えて広い世界について
独自の考えを示しうる人のことである。・・・」
(p68~69)
西堀栄三郎といえば、
桑原武夫著「人間素描」(筑摩叢書)に
「いま彼は南極の烈風と氷雪の中にいる。」
という言葉がある1957年6月に雑誌に掲載された
「西堀南極越冬隊長」という文がありました。
はい。両極の一端が、南極だったりします(笑)。
桑原武夫著「昔の人 今の状況」(岩波書店・1983年)
そこに、こんな箇所。
「ノーベル賞の経済学者、F・A・ハイエク博士が1978年の秋、
今西錦司と三回の対談をもつために来日したとき、世話役を
ひきうけていた西堀栄三郎と私は、ある晩、博士の宿舎であった
都ホテルに京都の学者たちを招いて、歓迎のレセプションを開いた。
吉川幸次郎が来てくれたのはよかったが、
何がきっかけであったか、西堀と口論をはじめてしまった。
国際的な中国文学の権威で、日本人として有史以来最も多く
の漢籍を読破した人と噂される吉川が、
世の中に本ほど尊いものはない、読書こそ人生最高の喜びだ、
と言ったのを聞きとがめて、
日本山岳会会長であると同時に、品質管理学の第一人者として
日本の貿易振興に最も貢献した西堀がからんだのである。
何をなし、何をつくるかが肝心なので、
本などなくてすめばそれにこしたことはない、
などと言いだしたのだから、もめるのが当然だ。
どちらもお酒が入っているのだから、ひっこみがつかない。
信念のぶっつけ合いからは何も生まれないことを知っている私は、
なかに割り込んでなんとか収めたが、記憶に残る一場面であった。
この二人を両極として、
その間に京都大学の知的世界がひろがっているのだなと思った。
上山春平、梅原猛、多田道太郎、川喜田二郎、梅棹忠夫などの
思想家がそこから輩出した。思想とは、ここでは
自分の専門領域を超えて広い世界について
独自の考えを示しうる人のことである。・・・」
(p68~69)
西堀栄三郎といえば、
桑原武夫著「人間素描」(筑摩叢書)に
「いま彼は南極の烈風と氷雪の中にいる。」
という言葉がある1957年6月に雑誌に掲載された
「西堀南極越冬隊長」という文がありました。
はい。両極の一端が、南極だったりします(笑)。