第一次大戦下のイタリアで息子を意味のない爆撃で亡くし、長い間悲嘆にくれたゼペットは、得意の木工細工で息子ピノッキオを作り出す。森の精霊により命を吹き込まれたピノッキオをゼペットは亡くなった息子と身代わりとして育てようとするものの、生まれながらに好奇心旺盛で独立心の強いピノッキオは何も知らずに元気いっぱいだ。
ピノッキオをカーニバルの目玉にしようとする男の口車に乗せられ、ゼペットが多額の違約金を支払わなくて済むようにカーニバル一座の一員としてイタリア各地を巡業するようになるのだ。
操られない操り人形として、一座の花形になるピノッキオ。演目は可愛らしくとも軍国主義の影が見える国威発揚目的で、明るい舞台とは裏腹に働きの悪いメンバーは影で体罰を受ける。ピノッキオが半分はゼペットの元に送られていると信じる稼ぎも、全て男の懐だ。それを知ったピノッキオは、ムッソリーニの前でわざと軍を貶めるような演目を明るく演じる。
生まれた頃は欲望のまま生きるわんぱく坊主だったはずのピノッキオが、ゼペットを想い働きに出、友人を庇い、搾取する雇用主に憤りを感じ、彼なりの反旗を翻す。更に少年兵たちを育てる目的でカーニバルで国威掲揚の演目を演じていたピノッキオ自身が、「不死身の少年兵」として育成されるのだ。
ストップモーションアニメの温かさがなかったら目も当てられないような不幸と苦しみの連続だ。それでも、嘘をつくと伸びる鼻を持ち、死なない木の身体で生き続ける。辻褄の合わない切ない人生を何とか乗り越えるべく、とにかく前に進むピノッキオの姿が何とも切なく可愛らしく思える。