珍しいことに、主催者から割引招待の手紙が来た。
「ウズベキスタンの若き巨匠」の初めての東京でのリサイタルである。
わざわざ割引招待の手紙が来たということは、チケットの売れ行きが芳しくなかったということであり、私などは思わず同情して買ってしまうわけだ。
しかも、こういうリサイタルに限って、滅多にない曲やパフォーマンスを特等席で味わうことが出来るのである(準備期間10日のコンサートでは、最前列で、素晴らしいパフォーマンスを味わうことが出来た)。
彼の演奏はやはり高水準で、おそらく今後聴く機会はないであろう、ウズベキスタンの作曲家による「古代ブハラの壁」は新鮮だったが、何よりも「夜のガスパール」が抜群にうまく(というか、この曲を完璧に弾ける人に対して、私は恐怖しか感じない)、ブラヴォーという言葉しか出なかった。
例によって、”ピアノが猛獣のように暴れ出す”シーンを見ることが出来たのである。
私見では、”メイン・ディッシュ”にプロコフィエフの「≪ロメオとジュリエット≫からの10の小品」を選んだのがイマイチだったように思う。
この組曲には、なんと、バレエではクライマックスとも言うべき「バルコニーのパ・ドゥ・ドゥ」が入っていないのである。
これだと、カツ丼のカツ抜きのようなもので、どうしてプロコフィエフがこれをピアノにアレンジしなかったのか理解できない。
さて、滅多に来日しない、国内知名度の低いアーティストについては、やはりプロモーションが非常に重要である。
今回の問題点を挙げるとすれば、上に挙げた選曲もあるが、そもそも名前が日本語では発音しづらいので、例えば「アブ」などという風に、呼びやすいニックネームに変える方法も考えられたと思う。
また、(実際は難しいかもしれないが、)顔見世的に日本のオケと組んで、ベタの「チャイコフスキー1番」あたりをやっておき、会場でチラシを配りまくるという戦略もあるように思う。
あるいは、他社が行なっているように、5人くらいのピアニストの公演をセット券にして発売するというのもあるだろう。