Don't Kill the Earth

地球環境を愛する平凡な一市民が、つれづれなるままに環境問題や日常生活のあれやこれやを綴ったブログです

岩波文庫への接近

2023年06月29日 06時30分00秒 | Weblog
 「もともと本を読むのは好きだったので、ギリシャやローマなど、ヨーロッパの人々が基本的に持っている知識の世界を共有したいと願い、哲学書や文学書を読みあさっています。僕もだんだん、岩波文庫に接近してきました(笑)。うわべだけ勉強しても『40年後にどうなるのか』と考えれば、いま10代のうちに基礎をしっかり固めなければならないと思います。まだまだ『西洋の壁』は厚く、文化の違いも存在しますが、様式の違いはあっても根底に共通する人間性、どの人でも持っている人間らしさを理解できれば、こちらの意識も変わるでしょう。ドビュッシーの音の裏側にあるもの、リストが傾倒したダンテの世界などでも、より深く見えてくるものがあるはずです。

 「岩波文庫への接近」を語る森本さんは、「角川ドワンゴ学園N高校」出身なので、「角川文庫」についてももコメントが欲しいというのは俗人の発想だろう。
 池田卓夫氏は「怖れを知らない若者 」と表現したが、私の感想は、「元祖天然素材、ピアノ界の長嶋茂雄」である。
 弾き始める前に結構な時間を使って精神統一をするところは、上原彩子さんに似ている(ちなみに私はこのルーティンが好きである)。
 テクニック満載の演奏だが、体の動きはパワー系のアレクサンドル・カントロフに似ているし、かすかに鼻歌も聴こえる。
 だが、マイクを持って語り始めると、他の誰とも違う独特の世界が広がる。
 決して話し上手とは思えないが、本質をズバズバ突いた発言が続く。
 私なりに要約すると以下のとおり。

ショパンの幻想ポロネーズは、極めて複雑な技法でつくられた曲で、次に弾く曲とは対照的。
ラモーの和声と、父バッハの対位法という全く異なる作曲技法が、子バッハを経てモーツアルトに継承された。
モーツアルトの幻想曲は、数少ない短調の曲の1つであり、途中でドン・ジョヴァンニのモチーフが出て来るところから分かるとおり、深刻な内容を含んだ曲。彼は愛人にメモ(弾き方なども書いてある)と一緒に楽譜を贈ったが、彼の死後、妻が返還を求めたのに対し愛人は拒否。
ブラームスの幻想曲は、当時作曲した他の曲のモチーフを取り入れつつ、原曲とは違い内面を押し出すテーストになっている。
リストのソナタ風幻想曲は、彼がイタリア旅行で得たインスピレーションを基につくった曲。森本さんが学んでいる学校の対岸(コモ湖)がその場所。

 若いピアニストはどういう方向に進むか分かりにくいものだが、森本さんはまさにその典型である。
 さて、どうなるだろうか?
 
コメント
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