パンセ(みたいなものを目指して)

好きなものはモーツァルト、ブルックナーとポール・マッカートニー、ヘッセ、サッカー。あとは面倒くさいことを考えること

「新しい地政学」(ある講演への不満は、この視点が欠けていたから)

2020年03月09日 08時50分57秒 | 

この本「新しい地政学」を読み始めて、あのとき感じた違和感は
この視点が欠けているからだとハタと気づいた

あの時とは数年前に豊橋で行われた右寄りの論客、櫻井よしこ氏の講演の時のこと
講演は予想した通りの内容で、中国脅威論、朝日新聞批判、憲法改正論が
彼女の視点から展開された
それなりの裏付けとなるデータも紹介されたが、自分が一番気になったのは
そして機会があったならば会場で質問でもしてみようか、、と思ったのは
全世界的な動きとか経済の影響が全然入っていないことだった
(例えば中東のアメリカ対アラブ諸国の件、日本はアメリカ追従なので)

応仁の乱がそうだったように、そして第一次世界大戦もそうだったように
世界は複雑に入り組んでいて、そのほころびから一気にものごとが悪い方向に
進んでしまう
決してひとつの視点からだけでは済まされない
地理的な要素(大陸系、海系)歴史的要素(民族、宗教、国の成り立ち)
経済的要素、国と国との関係、および国内の政情とか世論の関係などが複雑に
絡み合って、そのほころびを訂正するのは何が正解かわからない

まして東西の冷戦が解消して以来、平等な自由主義が広がり
人がようやく人本来の生き方がみんなできるようになったと思いきや
実態はそうはならず紛争は増えていくばかりとなっている

地政学とは違うかもしれないが「文明の衝突」(ハンティントン)も
民族のうちに根付いた考え方、文明は頭に描いた理念だけで人々が
まとまることは無いといっていたような(気がする)

この本は
新しい地政学の時代へ
武器としての経済学とその限界
国際紛争の全体図と性格
人気の普遍性とその濫用の危険性
国際協力と胃雨可能性
プーチンのグランド天ストラテジーと「狭間の政治学」
「アフリカの角」と地政学
「非国家主体」の台頭と「地域大国」
中曽根康弘の地政学

の章に分かれて、それぞれの専門家が受け持っている
本の帯には「日本を代表する知性」の言葉がある
常々、現在の日本の知識人とはどのような人がいるのかと思っていたが
その疑問を解決させる意味で、この本を購入したのだった

日本の知性
少し前に難解なフーコーの「監獄の誕生」を読んだばかりなので
この本は拍子抜けするほどわかりやすかった(気がする)
文体というものは書かれていることだけでなく、その背後に
書き手の人格の総量が見て取れるが、少し残念なのは日本の知性の方々が
この人格としての総量を感じられなかったこと

とは言っても、地政学なる言葉を知って、櫻井よしこ氏への
不満の理由がわかってスッキリしたのはありがたかった
この本は案外早く読み終えられそう

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする