「〇〇さん、今までありがとうございました
(ブラジルにルーツを持つ)Lくんは先週が最後で、引っ越しました」
小学校の校門で待っていた校長先生が挨拶がてら声をかけてきた
その10分ほど前では、彼の家のベルを鳴らして
「Lくん、行きますよ!」と呼びかけたが
どこか生活感のない雰囲気だったのがそれでわかった
「岡崎の方に引っ越すそうです」
なんだか拍子抜けした気分になった
なかなか上達しない日本語に心配が募ることが多かったが
それでも、こちらの言う事はわかっている雰囲気はあった
彼はこの10ヶ月間、幸せだったのだろうか?
不意にそんなことを考えた
異国、慣れない環境、話せない日本語、彼は何を感じていたのだろう
だが「先週が最後で、最後の2日間は泣いていたようです」
この話を聞いて、少しホッとした
彼はみんなと別れるのが辛かったのだ、、と
そして彼がここにいた10ヶ月間
時には校門でグータッチして送り出した日々は
彼にとっては辛い日々ではなかったのだと思えると
どこか救われたような気もした
彼との一番最後の会話は先週の木曜日
「L くん、背が高いね、クラスで一番大きい?」
と聞いたことだった
「うん」と答えて、もう少し何か言いかけたが口ごもって聞き取れなかった
もう少し記憶に残ることをしておけば良かった
と思うが、人生っていつもそんなものだ
そんなことを思い出しながらPCに向かっていると下の方で声がした
「おじさん、ただいま!」
小学生5年の男の子Hくんが大きな声で家に向かって叫んでいる
そこで窓を開けて「おかえり」と応える
今日は妹のIちゃんもお兄ちゃんに誘われて「ただいま」と叫んでいる
彼女は2階にいるのを見上げて、もう一度「ただいま!」と言う
「あれ、どこ?」
Hくんは声はすれども姿は見えず状態だったようだったので
もう一度「おかえり」と言うと、
やっと2階の窓から顔を出している自分を確認した
ここ最近、Hくんの下校時はいつも家に向かって(車があって在宅を確認して)
「ただいま、、」と大きな声で挨拶をしてくれる
こうしたちょっとした毎日のこと
そうした喜びがLくんの10ヶ月の生活の中にもあったのだろうか
無理矢理にでもそう思いたい気がした
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