【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

有田芳生参議院議員が主導したヘイトスピーチ規制法が初適用、市立公園の使用不許可の公算

2016年05月28日 09時58分52秒 | 第190回通常国会(2016年前半)

 民進党の有田芳生(ありた・よしふ)参議院議員=写真・同党ウェブサイトから=第189・190回国会と2年越しで、参議院法務委員会野党筆頭理事として、とりまとめた「ヘイトスピーチ規制法(本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律)」が適用される見通しとなりました。

 法律は、来週の平成28年2016年の、6月1日(水)あるいは3日(金)にも公布され、施行するとおもわれます。

 在日コリアン排斥を訴えるヘイトスピーチでもを繰り返している団体が、再来週6月5日(日)に神奈川県川崎市で予定しているデモの流れの集会を公園で開く計画があるようです。これに関連して、川崎市は市立公園使用を認めない方針を固めたようです。5月28日付朝日新聞第3社会面が報じました。朝日記事は、ヘイトスピーチ規制法が24日に成立しており、「その趣旨を踏まえての判断とみられる」と書いています。

 ヘイトスピーチ規制法第4条の「地方公共団体は、本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組に関し、国との適切な役割分担を踏まえて、当該地域の実情に応じた施策を講ずるよう努める」の条文を踏まえたと思われます。

 道路は神奈川県警察本部の管轄なので、今回の行政判断とは別。

 ヘイトスピーチ規制法は、きょねん民進党が提出した案を参考にして、ことし与党側が提出し、参で修正をかけたあと、各党の賛成で成立しました。

 衆議院の議案ウェブサイトを基に、原案に修正を反映した法律全文を私が作製しましたので、下に全文載せます。

本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律

目次
 前文
 第一章 総則(第一条-第四条)
 第二章 基本的施策(第五条-第七条)
 附則
 我が国においては、近年、本邦の域外にある国又は地域の出身であることを理由として、適法に居住するその出身者又はその子孫を、我が国の地域社会から排除することを煽動する不当な差別的言動が行われ、その出身者又はその子孫が多大な苦痛を強いられるとともに、当該地域社会に深刻な亀裂を生じさせている。
 もとより、このような不当な差別的言動はあってはならず、こうした事態をこのまま看過することは、国際社会において我が国の占める地位に照らしても、ふさわしいものではない。
 ここに、このような不当な差別的言動は許されないことを宣言するとともに、更なる人権教育と人権啓発などを通じて、国民に周知を図り、その理解と協力を得つつ、不当な差別的言動の解消に向けた取組を推進すべく、この法律を制定する。
   第一章 総則
 (目的)
第一条 この法律は、本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消が喫緊の課題であることに鑑み、その解消に向けた取組について、基本理念を定め、及び国等の責務を明らかにするとともに、基本的施策を定め、これを推進することを目的とする。
 (定義)
第二条 この法律において「本邦外出身者に対する不当な差別的言動」とは、専ら本邦の域外にある国若しくは地域の出身である者又はその子孫であって適法に居住するもの(以下この条において「本邦外出身者」という。)に対する差別的意識を助長し又は誘発する目的で公然とその生命、身体、自由、名誉若しくは財産に危害を加える旨を告知し又は本邦外出身者を著しく侮蔑するなど、本邦の域外にある国又は地域の出身であることを理由として、本邦外出身者を地域社会から排除することを煽動する不当な差別的言動をいう。
 (基本理念)
第三条 国民は、本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消の必要性に対する理解を深めるとともに、本邦外出身者に対する不当な差別的言動のない社会の実現に寄与するよう努めなければならない。
 (国及び地方公共団体の責務)
第四条 国は、本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組に関する施策を実施するとともに、地方公共団体が実施する本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組に関する施策を推進するために必要な助言その他の措置を講ずる責務を有する。
2 地方公共団体は、本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組に関し、国との適切な役割分担を踏まえて、当該地域の実情に応じた施策を講ずるよう努めるものとする。
   第二章 基本的施策
 (相談体制の整備)
第五条 国は、本邦外出身者に対する不当な差別的言動に関する相談に的確に応ずるとともに、これに関する紛争の防止又は解決を図ることができるよう、必要な体制を整備するものとする。
2 地方公共団体は、国との適切な役割分担を踏まえて、当該地域の実情に応じ、本邦外出身者に対する不当な差別的言動に関する相談に的確に応ずるとともに、これに関する紛争の防止又は解決を図ることができるよう、必要な体制を整備するよう努めるものとする。
 (教育の充実等)
第六条 国は、本邦外出身者に対する不当な差別的言動を解消するための教育活動を実施するとともに、そのために必要な取組を行うものとする。
2 地方公共団体は、国との適切な役割分担を踏まえて、当該地域の実情に応じ、本邦外出身者に対する不当な差別的言動を解消するための教育活動を実施するとともに、そのために必要な取組を行うよう努めるものとする。
 (啓発活動等)
第七条 国は、本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消の必要性について、国民に周知し、その理解を深めることを目的とする広報その他の啓発活動を実施するとともに、そのために必要な取組を行うものとする。
2 地方公共団体は、国との適切な役割分担を踏まえて、当該地域の実情に応じ、本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消の必要性について、住民に周知し、その理解を深めることを目的とする広報その他の啓発活動を実施するとともに、そのために必要な取組を行うよう努めるものとする。
   附 則
 (附則)
1 この法律は、公布の日から施行する。
2 不当な差別的言動に係る取組については、この法律の施行後における本邦外出身者に対する不当な差別的言動の実態等を勘案し、必要に応じ、検討が加えられるものとする。


ストーカー規制法改正案で、「メール」から「SNS」に拡大を検討、自民党と公明党のチーム

2016年05月28日 09時18分09秒 | 第192回臨時国会(2016年9月から12月まで)条約・カジノ再延長国会

 自民党と公明党は、ストーカー規制法(ストーカー行為等の規制等に関する法律)の改正案を、平成28年後半の第191回ないし192回国会に提出したい方針。

 公明党の井上幹事長が平成28年2016年5月28日(金)記者会見で明らかにしたと、翌日付公明新聞が報じました。

 東京でアイドルとして活動していた20代前半の女性が、Twitter(ツイッター)でやりとりしていた自称・ファンの男に対し、リアル社会で贈られたプレゼントを返して、Twitterをブロックしたところ、男が逆上。女性は警察と相談したものの、男はライブをねらって上京し、ナイフで数十か所を刺し、重傷。現在も治療中の事件を踏まえたものです。

 現行法では「つきまとい」を次のように定義しています。

第二条  この法律において「つきまとい等」とは、特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的で、当該特定の者又はその配偶者、直系若しくは同居の親族その他当該特定の者と社会生活において密接な関係を有する者に対し、次の各号のいずれかに掲げる行為をすることをいう。

五  電話をかけて何も告げず、又は拒まれたにもかかわらず、連続して、電話をかけ、ファクシミリ装置を用いて送信し、若しくは電子メールを送信すること。

 この「電子メール」には、SNS(ソーシャルネットワーキングシステム)は含まれていない、と井上幹事長らは判断したようです。

 ところが、同日、東京地方裁判所立川支部は、Twitterで女性に執拗に投稿した韓国人の男に対して、懲役4カ月・執行猶予3年の判決を言い渡しました。翌日付読売新聞第3社会面が報じました。男は、知人女性のTwitterアカウントに、「連絡取れるようにしてよ」などと投稿。女性がアカウントを3回変更して見つけ出して執拗に投稿したほか、リアル社会でも勤務先に押し掛けました。 

 記事から考えると、裁判長は、上に紹介した第2条の第3項にある「面会、交際その他の義務のないことを行うことを要求すること」の中に、Twitterでの執拗な投稿も含まれると判断したようです。被告人は控訴するかまえ。

 この判決から、自民党と公明党が進める改正作業は立法事実がないともいえます。

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