宮崎信行の「新・夕刊フジ」

元日本経済新聞記者の政治ジャーナリスト宮崎信行が衆参両院と提出予定法案を網羅して書いています。業界内で圧倒的ナンバー1。

27年ぶり衆参単独過半数の参議院で歴史的大転換で、IRカジノ施設法案が修正可決し、会期末衆議院回付で成立の公算「ギャンブル依存症者入場禁止」へ、吉田博美・小川勝也両幹事長が「竹下派国対か」

2016年12月13日 20時02分58秒 | 第192回臨時国会(2016年9月から12月まで)条約・カジノ再延長国会

[画像]ギャンブル依存症者のIRへの入場制限を政府に検討させる修正案を発議する、参議院内閣委員会の自民党筆頭理事(上月良祐さん)、参議院インターネット審議中継からスクリーンショット。

 「IRカジノ施設法案」(189衆法20号)は民共希反対、自公維の賛成多数で修正議決(修正可決)しました。あす、平成28年2016年12月14日(水)の参議院本会議で、修正可決し、衆院に回付。衆議院本会議で議題となり、衆の同意を得て成立する見通し。

 会期末前日の夜になって、大きな大転換がありました。 

 参議院内閣委員会は午後5時から7時30分まで休憩。

 午後7時30分、再開と同時に、委員長は「IRカジノ施設法案」(189衆法20号)の質疑終局を宣言。
 
 ここで、自民党の上月良祐筆頭理事が、
 「政府は、カジノ施設の入場制限を検討する。ギャンブル依存症者を明示する」とし政府によるギャンブル依存症者の入場制限の検討を命じるとともに、5年後の見直し規定を盛り込む」

 とした法案の修正動議を出しました。

 ただちに、討論に入りました。民進党は、反対。この後、共産党は、自・民による、突然の修正に反対したうえで、原案などを強い口調で反対。希望の会の山本太郎さんは法案・運営とも「情けない」と反対。

 修正可決後には、附帯決議が16本提案され、自公維3党のみの賛成で採択。成立後の1年間、国土交通省、内閣官房の「宿題」となります。

 今国会はあす閉幕する公算ですが、衆議院本会議の終了時刻は昼下がり以降になる見通し。

 今回の修正は、衆参単独過半数時代に、「修正路線」による国会対策を進めた、田中角栄先生・竹下登先生・金丸信先生らの経脈をつぐ、自民党の吉田博美、民進党の小川勝也、両参議院幹事長が主導したものと推測できます。

 ただ、民進党内では数時間前に代表が廃案に言及していました。

 一方、自民党は、自ら「歴代最軽量級」と語った橋本聖子参議院議員会長のもと、辛酸をなめる、旧田中派の吉田さんが一矢を報いた格好なのかもしれません。

 27年ぶりに、自民党(政権党、与党第1党、第1会派)が衆参単独過半数をしめた国会がまもなく年を終えようとしています。

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[きょうの国会]年金持続可能性確保法案(年金カット法案)、参議院でクールに正常採決 IRカジノ施設法案は質疑は順調で大詰めに、衆委は早くも会期末処理

2016年12月13日 20時02分57秒 | 第192回臨時国会(2016年9月から12月まで)条約・カジノ再延長国会

[画像]年金持続可能性確保法案を、淡々と採決する、参議院厚生労働委員会、2016年12月13日、参議院インターネット審議中継からスクリーンショット。

 一部で再延長観測も無きにしも非ずですが、衆参27年ぶり自民党単独過半数で、審議そのものは順調に進んでいる印象です。あす会期末です。

【参議院厚生労働委員会 平成28年2016年12月13日(火)】

 延長国会の目玉「年金」「IR」となりましたが、民進党が「年金カット法案」と呼んだ、「年金持続可能性確保法案」(189閣法54号)は、午後5時半ごろ、与野党合意に基づき採決し、民共希の反対、自公維及び薬師寺道代委員の賛成多数で「可決すべし」と決めました。この後すぐに、反対した、民進党の足立信也筆頭理事が附帯決議案を提案。

 朝の理事会では採決の合意が無かったようで、理事会が8分延びて、午前10時8分頃から総理入り質疑が始まりました。

 民進党から質問し、川合孝典さんが「1週間前に厚労省が出すと言った資料が出ていない」とし、物価が上がり賃金が下がった、というケースでの年金試算を出すよう要求。

 30分前後の中断を経て、塩崎厚労相が「法案は法律として成立させてもらい、次の財政検証で参考資料を出したい」とお願いしました。比較的スムーズに野党も受け入れました。ただ、途中で先輩から助言があり、「衆議院解散の後、ということではないか」と念のための確認をすると、塩崎厚労相は「隣にいる総理が決めることだ」とかわしました。大政党である民進党、会期末特有の緊張感は参院側にも伝わっていました。 総理入り質疑は終局。公明党が質問を放棄したので、20分ほどのずれ込みで済みました。昼の休憩。

 この昼の理事会で、厚労省が会期終了後に試算を出すことが確認できたようで、与野党が採決に合意した、ということのようです。

 午後は、各党が締めくくり的な質疑。この中で、野党委員から「労働問題の質問が多くなってしまった」との発言があり、審議はあまり深まらない印象でした。

 午後5時10分過ぎに、質疑終局を宣言。正常採決で可決しました。この間の討論では、民進党が「審議が拙速だ」と反対、自民党と公明党が「将来の年金額を増やすことになる法案だ。ただ、GPIFは法律通りの組織改革をしっかりやってほしいと釘をさしたい。今回の法案のような、こまめなメンテナンスで世界に冠たる公的年金制度を維持したい」と絶叫しました。共産党が反対、維新が賛成、希望の会が反対の討論をしました。 

 附帯決議に対して塩崎厚労相が善処を約束し、淡々と散会しました。

 衆院側での「年金カット条項」発見から、高いテンションで通過した法案ですが、参院でのクールさとの温度差が気になりました。

【参議院内閣委員会 平成28年2016年12月13日(火)】

 「IRカジノ施設法案」(189衆法20号)

 先週来、新聞1面、テレビですっかり名前が知られた、難波奨二委員長。

 定刻通り始まりました。自民党側筆頭理事の上月良祐さんは「審議は十分だと思うが、最終確認として質問する。最近は余り行けないが、家族で海外旅行に行くと、楽しいが、帰ってきて、すぐにまた行こう、とは思わない。一つだけ例外があった。それはラスベガスだ。街全体が楽しめるようにつくってある」と語りました。統合リゾートの有用性を述べたものとみられます。カジノ依存症でまた行きたいということではないようです。

 衆議院側ではあまり登場しなかった、菅義偉・官房長官も民進党などに対する質疑では登場してます。昼の休憩。

 午後は共産党の大門実紀史さんが、発議者の衆院議員のパチンコパーラーからの献金を追求。大門さんは、最近電話で話したとして、旧民主党法務部門会議座長で6年前から議席を失っている、松野信夫元参議院議員(熊本の弁護士)の参考人質疑を求めました。

 この後、午後5時直前に休憩。

 そして、午後7時30分再開。ここで、歴史的な大展開で、突然修正可決しました。あす成立の公算。別エントリーで速報、詳報しました。以下は、別エントリーからコピペします。

 会期末前日の夜になって、大きな大転換がありました。 

 参議院内閣委員会は午後5時から7時30分まで休憩。

 午後7時30分、再開と同時に、委員長は「IRカジノ施設法案」(189衆法20号)の質疑終局を宣言。
 
 ここで、自民党の上月良祐筆頭理事が、
 「政府は、カジノ施設の入場制限を検討する。ギャンブル依存症者を明示する」とし政府によるギャンブル依存症者の入場制限の検討を命じるとともに、5年後の見直し規定を盛り込む」

 とした法案の修正動議を出しました。

 ただちに、討論に入りました。民進党は、反対。この後、共産党は、自・民による、突然の修正に反対したうえで、原案などを強い口調で反対。希望の会の山本太郎さんは法案・運営とも「情けない」と反対。

 修正可決後には、附帯決議が16本提案され、自公維3党のみの賛成で採択。成立後の1年間、国土交通省、内閣官房の「宿題」となります。

 今国会はあす閉幕する公算ですが、衆議院本会議の終了時刻は昼下がり以降になる見通し。

 今回の修正は、衆参単独過半数時代に、「修正路線」による国会対策を進めた、田中角栄先生・竹下登先生・金丸信先生らの経脈をつぐ、自民党の吉田博美、民進党の小川勝也、両参議院幹事長が主導したものと推測できます。

 ただ、民進党内では数時間前に代表が廃案に言及していました。

 一方、自民党は、自ら「歴代最軽量級」と語った橋本聖子参議院議員会長のもと、辛酸をなめる、旧田中派の吉田さんが一矢を報いた格好なのかもしれません。

 27年ぶりに、自民党(政権党、与党第1党、第1会派)が衆参単独過半数をしめた国会がまもなく年を終えようとしています。

【衆議院法務委員会 平成28年2016年12月13日(火)】

 「民法債権編改正案」(189閣法63号及び189閣法64号)。私の計算では9日目。

 自民党のYouTubeでネットカフェの司会をしている、今野智博さんが登場し「当委員会は円滑に審議できることを感謝する」と与野党に語りました。民進党の枝野幸男さんは「相殺について、判例を条文に落とし込んでいる部分と落とし込んでいない部分がある」と指摘。「代理について、私は本人です、と名乗った代理人の効力について条文が無い」と語ると、小川・法務省民事局長は「その効力は本人に帰属するというのが判例、通説だ」と答弁。枝野さんは「条文に書いちゃうと、本人です、という代理を推奨しているようになってしまうから、分かる」と同意しました。民進党の井出ようせいさんは「取引上の通念という言葉が10か所以上出てくる」として確認しました。

 午前の部だけで散会。いずれにせよ、越年です。

【衆議院安全保障委員会 平成28年2016年12月13日(火)】

 一般質疑で、「北朝鮮核ミサイル問題等」に関する参考人と委員との着席のままの意見交換がありました。

 参考人の教授からは、「北朝鮮は核の小型化は成功したのではないか。ただ、ことしはICBMについては消極的だった」とし、お金がかかる大陸間弾道弾よりも、違う開発をしているのではないかと示唆。民進党の神山洋介さんは、「THHAD(サード)の開発、3段構え(サード、イージス、ペトリオット)を整えようとしているが、それでいいのか。予算面もあるし、現場の負荷で自衛隊が回らなくなるのではないか」という趣旨で議論しました。自民党は、補選後やたら登場する和田義明さんが質問し、大きい派閥(清和会)だと質問回数も多いのかなと思いました。この後、文脈が分からないのですが、なぜか、山口壮委員長が北朝鮮核実験の過去の経緯や民主党政権の尖閣諸島の問題などの経緯を長い時間語り、参考人にお礼し、散会を宣言しました。

【衆議院農林水産委員会 平成28年2016年12月13日(火)】

 一般質疑がありました。この後、例年通り、「平成29年度畜産の価格に関する件」を議題に。民進党の小山展弘さんが朗読し、賛成多数で採択しました。TPP国内法で「TPP発効日に施行」となっている、マルキンについて、豚のマルキンを充実させるよう求める文章も入りました。

【参議院農林水産委員会 平成28年2016年12月13日(火)】

 8分前後遅れで始まり、一般質疑、おもに畜産に関する件。質疑終了後、「平成29年度の畜産の価格に関する決議」がされました。これは、民進党の徳永エリさんが朗読。だいたいこういうときは、徳永さんの出番だという感じです。参議院という世界は、院内での実績と選挙がつながらないところですが、6年半、ひたすら、農業とTPPに専念した徳永さんだと、北海道選挙区定数3で、あれだけの好成績で再選できるのだな、という感じがしました。

【衆議院本会議 平成28年2016年12月13日(火)】

 午後1時設定。事前の議題は無く、そのまま開かれないまま、午後6時前後に流会しました。

【衆議院北朝鮮による拉致問題等に関する特別委員会 平成28年2016年12月13日(火)】

 加藤拉致相、岸田外相の所信的発言に対する一般質疑がありました。

 自民党の2期生、中川郁子さんが「延長国会ギリギリとはいえ、開催につながった委員長、両筆頭理事に感謝します」と切り出しました。これは、先代(夫)が拉致問題で名をはせたから、この委員会に属しているということなんだと、気づきました。もちろん、中川昭一さんは、農政、財政、金融とも詳しかったのですが、ただ、「拉致」で、安倍首相、中川さんらが人気議員になっていったということを思うと、拉致は自民党政権下で起きたことですし、もう少し冷静な政治を見る有権者であってほしい気もしました。

 この後、すでに別エントリーでも報じましたが、閉会中審査要求などの、会期末手続きがとられました。

この記事の本文は以上です。

(C)宮崎信行 Nobuyuki Miyazaki 
(http://miyazakinobuyuki.net/)

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会期の大幅延長は無いもよう、衆議院拉致問題特別委員会が早々に会期末処理を済ませる、自民党の城内実委員長

2016年12月13日 16時03分26秒 | 第192回臨時国会(2016年9月から12月まで)条約・カジノ再延長国会

 衆議院北朝鮮による拉致問題等に関する特別委員会は、会期末前日の平成28年2016年12月13日(火)、大臣所信に対する一般質疑をし、終えました。

 自民党、無派閥、同党外交部会長を兼ねる、城内実委員長は、この委員会に他の委員会の陳情1件が参考送付され、地方自治法99条による地方議会の意見書15件が参考送付されたと発表。続いて、議長に対して、国会閉会中でも、仮に国政の動きがあり、一般質疑などの閉会中審査をしたい場合には、それができるように手続きする、閉会中審査をしたい、とはかり全会一致で賛同を得ました。

 これはいわゆる「会期末処理」です。これにより、ごく一部で観測があった、会期の大幅再延長のうえ来月に解散するというようなシナリオはまずありえない状況となったといえます。

 これとはまったく別に、参議院民進党の小川勝也幹事長は、同日記者会見し、「年金の議論はこれからも続く」とし、年金法案の採決時期について闘争するのは「今の議会構成では限界がある」とし採決を容認。IRカジノ施設法案にしぼって、「不測の事態に備える」ため、同日、幹事長・国対委員長会談(吉田博美、松山政司、小川勝也、榛葉賀津也の各参議院議員)を複数回開いて、話し合いの場を開いたうえで、会期末を迎えることを明らかにしました。小川さんの記者会見はYoutubeで公開されました。

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日米ACSA新条約、審議入りせず、2017年に持ち越し 平和安全法制で、地球の裏側で弾薬提供

2016年12月13日 09時51分03秒 | 第192回臨時国会(2016年9月から12月まで)条約・カジノ再延長国会

 第192回臨時国会召集日と同じ、平成28年2016年9月26日に岸田外相とケネディ大使が署名し、承認案が国会に提出された、

 「日米物品役務相互提供協定の新条約の承認を求めるの件」(192条約2号)は、審議入りせず、平成29年2017年春以降に承認が持ち越されることになりました。

 第192回国会は、条約のスケジュール感があわない「条約間抜け国会」となりましたが、ACSAについては、集団的自衛権を認めてしまった2015年日米防衛協力のための指針いわゆるガイドラインの相手方である、オバマ大統領の退場によって新しい地平が見えるかもしれません。

 新条約は、ガイドライン及び平和安保法制にもとづき、周辺事態(個別的自衛権)のみならず存立危機・重要影響・国際平和共同対処事態(集団的自衛権)を定義し、同時に「弾薬を除く」と書かれた現行条約をあらため弾薬も提供できるようにするもの。このほか、これまで通り、消費税の免除や返品の規定なども定めています。

 外務省作成のイメージ図は→こちらをクリック。

 条約の立てつけは、新条約が承認されると同時に、現条約が失効し、新条約に切り替わることになっています。

 トランプ次期政権は、元軍人を閣僚に指名する見通しとなるなど、タカ派色が見られますが、単独行動主義に回帰するとも見方も有力です。もちろんACSAの審議で抵抗しても、ガイドライン・法制がある限り、いざ開戦となれば、1日で国会を通過してしまうようなものです。

 現場での懸命の奮闘もあり、野党と市民連合によるたたかいは続くことになりました。


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民進党・共産党の勝利、労働基準法改正案(残業代ゼロ法案)は審議入りしないまま、2度目の年越しへ

2016年12月13日 09時50分32秒 | 第192回臨時国会(2016年9月から12月まで)条約・カジノ再延長国会

 政府・自民党が、きょねん、平成27年2015年4月3日(金)に提出した労働基準法改正案(189閣法69号)は、第192臨時国会で審議入りしないまま、2度目の年越しとなり、平成29年2017年通常国会以降に持ち越しました。

 野党・民進党と共産党の勝利です。

 この法案は「残業代ゼロ法案」と呼ばれています。

 年収1000万円以上の「高度プロフェッショナル」の残業代をゼロにできる法案です。年収1000万円というと関係ないように思うかもしれませんが、政令「労働基準法第14条第1項第1号の規定に基づき厚生労働大臣が定める基準」 では、博士、公認会計士、一級建築士のみならず、例えば大学の商学部卒業の人が、5年間経理部員をすれば、もう「高度プロフェッショナル」になります。後は、政令の年収要件を下げれば、ほとんどの人が残業代ゼロになります。

 この法案は、上述の通り、きょねん4月3日に提出され、安保法大延長国会の9月24日(木)に降ろされ、25(金)に閉会中審査手続きを取られました。今国会は初日に降りています。その後も、趣旨説明すらされないまま、2度目の年越しとなりました。民進党と共産党の勝利です。

 一方、「正社員ゼロ法」こと改正労働者派遣法はきょねん9月30日の施行から1年3か月経ちました。現実には、正社員の人数は増えましたが、それ以上に非正規雇用が増えており、「率」では、野党の懸念通りになりつつあります。

 以下、当ブログ内エントリーから、年越しが決まった、残業代ゼロ法案関連を紹介して、このエントリーは終わります。

[当ブログ内エントリーから抜粋引用はじめ]

残業代ゼロ法案は博士受難の時代、労働基準法第14条第1項などの改正法案を政府が提出

2015年04月03日 23時59分37秒 | 第189回通常国会2015年安保国会

(このエントリーの初投稿日時は2015年4月4日午前8時でそれから4月3日付にバックデートしました)

 政府は平成27年2015年4月3日(金)の閣議で、「労働基準法改正案」(189閣法69号)を決定し、衆議院に提出しました。

 この残業代ゼロ法案を見るときは「現行労働基準法第14条第1項」をおさえるべし。

 労基法第14条は「労働契約」の「契約期間」を定めています。ちなみに、労働契約とは、民法でいう「雇用」とまったく同じ意味です。「労働契約法(平成19年2007年法律128号)」の施行後は、労働法制では「労働契約」という言葉に書き換わっています。

 まず14条第1項は、「専門的な知識、技術または経験であって高度のものとして厚生労働大臣が定める基準に該当する専門的知識等を有する労働者との間に締結する労働契約」という分類、定義を決めています。

 この分類はどのような労働者か。その細目は、省令が定めています。省令は法律ではないので国会の審議が不要。与党の厚労大臣が署名で突然変えることができます。

 省令、

 「労働基準法第14条第1項第1号の規定に基づき厚生労働大臣が定める基準(平成15年2003年10月22日厚生労働省告示第356号)」

 は、次の人が労働基準法第14条第1項の「労働者」だとしています。

 1、博士の学位を有する者・・・ですから、博士は全員対象になります。
 2、12の国家資格・・・このうち、公認会計士、一級建築士、薬剤師、技術士が会社員には多いと思われます。
 そして、(略)
 5、次のいずれかに該当する者であって、労働契約の期間中に支払われることが確実に見込まれる賃金の額を1年あたりに換算した金額が、
 「1075万円」を下回らない者としています。

 この「1075万円」は、国会の審議無しに、厚労省の一存で「省令」で変えることができます。これを野党・民主党は警戒しています。

 ここで、いったんまとめると、博士、会社員や団体職員でである公認会計士・一級建築士・薬剤師・技術士と、年給1075万円以上の労働者(システムエンジニアや、その業種につながる学科を卒業した大学・短大・高専・高校卒業者で就業後5年ないし7年経った者)が、労基法第14条第1項の対象になります。

 今次改正法案は、この第14条第1項にもとづく労働者を、すべて「特定高度専門業務・成果型労働制(高度プロフェッショナル制度)」と名付けて、労働時間・休日・割り増し賃金の法律による保護から除外する、とした法律案で、抜本的な改正といえます。

 実はこの、労基法第14条第1号を改正しようという動きは、以前からありました。

  昨年11月21日の衆議院解散の数分前に「専門的知識等を有する有期雇用労働者等に関する特別措置法」 が民共の反対、自公維の賛成多数で可決・成立し、今週の4月1日(水)から施行されました。これは、14条1号の労働者の労働契約の期間を5年間から10年間に延長する法律。このため、例えば大学教授で今週から同じ大学で6年目に入った人は、この法律にもとづく有期雇用かもしれませんし、無期雇用かもしれません。この特措法案は昨年の通常国会で、国会技術的には極めて異例な「衆議院で可決して参議院で審議未了ながら閉会中審査になった法案」です。

 これが、テレビ放送されていた衆議院解散のニュースの数分前に委員長が報告し、起立し、可決・成立した法律3本のうちの1本です。ニュースを見ていた人も多いでしょう。これとは別に、労働者派遣法改悪法案は解散と同時に廃案になりました。

 なので、今週6年目に入った博士は「首がつながった」のだからまだいいとして、それ以外の博士は、物理学だろうがなんだろうが博士なんだから、もっと抵抗して良かったように感じます。筆者(宮崎信行)が最近始めたツイキャスラジオの2015年4月1日の放送で、リスナーの方から、「国公立大学の人は声をあげづらいようだ」との世論を教えていただき、それもそうかなと感じました。ただ、昨年11月の法律を当時どれだけ把握している人がいたのかなとの疑問はつきません。

 民主党は野党なので限界があります。法律案を審議未了廃案に追い込むテクニックしかありません。ただ、衆議院厚生労働委員会は、まだ審議入りしていない法案が8本ある状態で、来週から残り11週間の後半国会(ただし延長は確実な見通し)を迎えます。

 野党・民主党の岡田克也代表は、労働者派遣法改悪法案(189閣法43号)「通さないためにどうすればいいかという視点で、いろいろなものを組み立てていきたい」と先月の記者会見で述べており、労働者派遣法改悪法案の審議未了廃案の方を優先する作戦です。

 派遣労働者の声と、博士の声のどちらが通るか、両方通るか。ーー昨年の国会では「ハケン」の声が通りました。博士受難の時代ですが、我こそはオピニオン・リーダーたりという気概を持っていただきたい。

以上
(C)宮崎信行 Nobuyuki Miyazaki 2007-2015

[当ブログ内エントリーから抜粋引用おわり]
 
[当ブログ内エントリーから抜粋引用はじめ]

参議院民主党「労働基準法改正案、廃案にしましょう」

2016年01月15日 16時15分48秒 | 第190回通常国会(2016年前半)

【平成28年2016年1月15日(金)参議院予算委員会】

 きのうの午後1時台に衆議院を通過した「平成27年度(第1次) 補正予算案(一般会計、特別会計)」が議題になりました。

 予算案の趣旨説明は、このところ、衆・予のあと、参・予でも受けて、その後から、衆・予で基本的質疑になっています。今回もその予定でしたが、衆・予の理事会が長引いていたので、参・予は理事の専任だけして、散会していました。このため今朝午前8時50分から委員会を開き、麻生財務大臣の説明を聞きました。

 午前9時からNHK入り国会中継。

 民主党・新緑風会から長浜博行さん、水野賢一さん、石橋通宏さんが質問しました。今年は改選イヤーですが、まず、非改選の長浜元環境大臣が先陣を切り、改選の水野さん、石橋さん=情報労連組織内・全国比例民主党公認内定=が質問する格好となりました。

 ねじれておらず補正予算の成立は確定的。とはいえ、改選イヤーの委員会審議のスタートですから大事です。

 前置きはまだ続きます。参議院は会期切れの廃案をねらい、伏兵として行動してきました。やはりインターネットの時代ということでしょう、おととしの国会で変化がありました。共産党議員がテレビ入り予算委員会で、まだ審議されていない「労働者派遣法改正案」についてパネルを使って問題点を指摘。その後、「まあ審議入りまでまだ時間があるでしょう」としまい、結果的に会期末廃案に2回追い込むことができました。

 民主党の石橋さんは、労働基準法改正案(189閣法69号=衆議院厚生労働委員会で継続審査)を取り上げました。いわゆる残業代ゼロ法案。石橋さんは「総理、いったん廃案にしましょう!」と呼びかけました。

 石橋さんはまず、「この法案の働き過ぎ防止策は我々も賛同できるんです」とかけひきを開始。法案に盛り込まれた、改正第41条の労働時間などの規制の例外、をただしました。ここは大事なので、きわめて長くなりますが、「改正第41条の2(案)」の条文の全文をコピーアンドペーストします。

[引用はじめ]

第四十一条の二 賃金、労働時間その他の当該事業場における労働条件に関する事項を調査審議し、事業主に対し当該事項について意見を述べることを目的とする委員会(使用者及び当該事業場の労働者を代表する者を構成員とするものに限る。)が設置された事業場において、当該委員会がその委員の五分の四以上の多数による議決により次に掲げる事項に関する決議をし、かつ、使用者が、厚生労働省令で定めるところにより当該決議を行政官庁に届け出た場合において、第二号に掲げる労働者の範囲に属する労働者(以下この項において「対象労働者」という。)であつて書面その他の厚生労働省令で定める方法によりその同意を得たものを当該事業場における第一号に掲げる業務に就かせたときは、この章で定める労働時間、休憩、休日及び深夜の割増賃金に関する規定は、対象労働者については適用しない。ただし、第三号又は第四号に規定する措置を使用者が講じていない場合は、この限りでない。
一 高度の専門的知識等を必要とし、その性質上従事した時間と従事して得た成果との関連性が通常高くないと認められるものとして厚生労働省令で定める業務のうち、労働者に就かせることとする業務(以下この項において「対象業務」という。)

二 この項の規定により労働する期間において次のいずれにも該当する労働者であつて、対象業務に就かせようとするものの範囲
イ 使用者との間の書面その他の厚生労働省令で定める方法による合意に基づき職務が明確に定められていること。
ロ 労働契約により使用者から支払われると見込まれる賃金の額を一年間当たりの賃金の額に換算した額が基準年間平均給与額(厚生労働省において作成する毎月勤労統計における毎月きまつて支給する給与の額を基礎として厚生労働省令で定めるところにより算定した労働者一人当たりの給与の平均額をいう。)の三倍の額を相当程度上回る水準として厚生労働省令で定める額以上であること。
三 対象業務に従事する対象労働者の健康管理を行うために当該対象労働者が事業場内にいた時間(この項の委員会が厚生労働省令で定める労働時間以外の時間を除くことを決議したときは、当該決議に係る時間を除いた時間)と事業場外において労働した時間との合計の時間(次号ロ及び第五号において「健康管理時間」という。)を把握する措置(厚生労働省令で定める方法に限る。)を当該決議で定めるところにより使用者が講ずること。
四 対象業務に従事する対象労働者に対し、次のいずれかに該当する措置を当該決議及び就業規則その他これに準ずるもので定めるところにより使用者が講ずること。
イ 労働者ごとに始業から二十四時間を経過するまでに厚生労働省令で定める時間以上の継続した休息時間を確保し、かつ、第三十七条第四項に規定する時刻の間において労働させる回数を一箇月について厚生労働省令で定める回数以内とすること。

ロ 健康管理時間を一箇月又は三箇月についてそれぞれ厚生労働省令で定める時間を超えない範囲内とすること。
ハ 一年間を通じ百四日以上、かつ、四週間を通じ四日以上の休日を確保すること。
五 対象業務に従事する対象労働者の健康管理時間の状況に応じた当該対象労働者の健康及び福祉を確保するための措置であつて、当該対象労働者に対する有給休暇の付与、健康診断の実施その他の厚生労働省令で定めるものを当該決議で定めるところにより使用者が講ずること。
六 対象業務に従事する対象労働者からの苦情の処理に関する措置を当該決議で定めるところにより使用者が講ずること。
七 使用者は、この項の規定による同意をしなかつた対象労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならないこと。
八 前各号に掲げるもののほか、厚生労働省令で定める事項。

[引用おわり]

 このような弁護士も読めない条文。かつて香港にあった蜘蛛の巣のような市街「「九龍城」のような世界が、労働法制の世界で、労働者が分断されています。

 この長時間労働や残業代の規制が除外される職種(エグゼンプション)である「高度の専門的知識等を必要とし、その性質上従事した時間と従事して得た成果との関連性が通常高くないと認められるものとして厚生労働省令で定める業務」。

 これについて、塩崎厚労相は「所得再分配のために、その糧を得なければならない」安倍首相は「すべての人が希望を持てる社会をつくりたい」と答弁。なんらかの思惑が裏に透けて見える答弁をしました。

●民主党の岡田克也代表は定例会見で、労働基準法改正案の対案提出を明言し、「先送りは卑怯だ」と首相を挑発

 この石橋さんの提案の直後に、定例(金曜日午後3時)で始まった、岡田克也代表の記者会見で、「長時間労働は根の深い悪弊で、子育てと仕事の両立を阻み、親の介護も施設に任せるしか選択肢がなくなっている。和民の裁判を見ても、これが企業のやることかと憤りを感じる」とし、「総労働量とインターバル(退勤から出勤までの時間)規制を盛り込んだ法案を出して議論したい」と語りました。

 さらに「安倍首相は重要な法案だと思うのなら、参院選の後に先送りするのは卑怯だ」とまで挑発しました。

 「社長と経理部長」「民主党の一卵性双生児」とも揶揄される、岡田克也代表と郡司彰参議院議員会長の足並みが一致した戦術のようです。

[当ブログ内エントリーから抜粋引用おわり]

[当ブログ内エントリーから抜粋引用はじめ]

労働基準法改正案いわゆる残業代ゼロ法案は審議入りせず第191回国会以降に先送り

2016年05月31日 06時55分47秒 | 第190回通常国会(2016年前半)

 「労働基準法改正案」通称「残業代ゼロ法案」(189閣法69号)は第190回通常国会で審議未了となりました。野党・民進党・共産党の抵抗が功を奏した格好ですが、与党は早い段階から成立をあきらめる作戦だったとも報じられています。

 労働基準法改正案は、大学教授などに適用されている、「高度プロフェッショナル制度」を広げて、例えば商学部卒業の経理部員を「高度プロフェッショナル」に加える法案。政府が昨年4月3日(金)に国会に提出した法案では「年収1000万円以上」に限られていますが、この部分は政府の一存ですぐにかえられることから、労働時間・休日・深夜の割増賃金などの労基法の規定が適用外になるため、野党は「残業代ゼロ法案」と呼んでいます。

 同法案は、厚生労働大臣による趣旨説明がされないまま、「閉会中審査」になる見通し。ただ「閉会中」と言っても審議されることなく、7月10日の参院選以降に開かれる、第191回国会や、第192回国会以降で審議入りをめぐる与野党の駆け引きが続く見通しです。

 このエントリー記事の本文は以上です。 

[当ブログ内エントリーから抜粋引用おわり]

この記事の本文は以上です。

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