【平成28年2016年1月15日(金)参議院予算委員会】
きのうの午後1時台に衆議院を通過した「平成27年度(第1次) 補正予算案(一般会計、特別会計)」が議題になりました。
予算案の趣旨説明は、このところ、衆・予のあと、参・予でも受けて、その後から、衆・予で基本的質疑になっています。今回もその予定でしたが、衆・予の理事会が長引いていたので、参・予は理事の専任だけして、散会していました。このため今朝午前8時50分から委員会を開き、麻生財務大臣の説明を聞きました。
午前9時からNHK入り国会中継。
民主党・新緑風会から長浜博行さん、水野賢一さん、石橋通宏さんが質問しました。今年は改選イヤーですが、まず、非改選の長浜元環境大臣が先陣を切り、改選の水野さん、石橋さん=情報労連組織内・全国比例民主党公認内定=が質問する格好となりました。
ねじれておらず補正予算の成立は確定的。とはいえ、改選イヤーの委員会審議のスタートですから大事です。
前置きはまだ続きます。参議院は会期切れの廃案をねらい、伏兵として行動してきました。やはりインターネットの時代ということでしょう、おととしの国会で変化がありました。共産党議員がテレビ入り予算委員会で、まだ審議されていない「労働者派遣法改正案」についてパネルを使って問題点を指摘。その後、「まあ審議入りまでまだ時間があるでしょう」としまい、結果的に会期末廃案に2回追い込むことができました。
民主党の石橋さんは、労働基準法改正案(189閣法69号=衆議院厚生労働委員会で継続審査)を取り上げました。いわゆる残業代ゼロ法案。石橋さんは「総理、いったん廃案にしましょう!」と呼びかけました。
石橋さんはまず、「この法案の働き過ぎ防止策は我々も賛同できるんです」とかけひきを開始。法案に盛り込まれた、改正第41条の労働時間などの規制の例外、をただしました。ここは大事なので、きわめて長くなりますが、「改正第41条の2(案)」の条文の全文をコピーアンドペーストします。
[引用はじめ]
第四十一条の二 賃金、労働時間その他の当該事業場における労働条件に関する事項を調査審議し、事業主に対し当該事項について意見を述べることを目的とする委員会(使用者及び当該事業場の労働者を代表する者を構成員とするものに限る。)が設置された事業場において、当該委員会がその委員の五分の四以上の多数による議決により次に掲げる事項に関する決議をし、かつ、使用者が、厚生労働省令で定めるところにより当該決議を行政官庁に届け出た場合において、第二号に掲げる労働者の範囲に属する労働者(以下この項において「対象労働者」という。)であつて書面その他の厚生労働省令で定める方法によりその同意を得たものを当該事業場における第一号に掲げる業務に就かせたときは、この章で定める労働時間、休憩、休日及び深夜の割増賃金に関する規定は、対象労働者については適用しない。ただし、第三号又は第四号に規定する措置を使用者が講じていない場合は、この限りでない。
一 高度の専門的知識等を必要とし、その性質上従事した時間と従事して得た成果との関連性が通常高くないと認められるものとして厚生労働省令で定める業務のうち、労働者に就かせることとする業務(以下この項において「対象業務」という。)
二 この項の規定により労働する期間において次のいずれにも該当する労働者であつて、対象業務に就かせようとするものの範囲
イ 使用者との間の書面その他の厚生労働省令で定める方法による合意に基づき職務が明確に定められていること。
ロ 労働契約により使用者から支払われると見込まれる賃金の額を一年間当たりの賃金の額に換算した額が基準年間平均給与額(厚生労働省において作成する毎月勤労統計における毎月きまつて支給する給与の額を基礎として厚生労働省令で定めるところにより算定した労働者一人当たりの給与の平均額をいう。)の三倍の額を相当程度上回る水準として厚生労働省令で定める額以上であること。
三 対象業務に従事する対象労働者の健康管理を行うために当該対象労働者が事業場内にいた時間(この項の委員会が厚生労働省令で定める労働時間以外の時間を除くことを決議したときは、当該決議に係る時間を除いた時間)と事業場外において労働した時間との合計の時間(次号ロ及び第五号において「健康管理時間」という。)を把握する措置(厚生労働省令で定める方法に限る。)を当該決議で定めるところにより使用者が講ずること。
四 対象業務に従事する対象労働者に対し、次のいずれかに該当する措置を当該決議及び就業規則その他これに準ずるもので定めるところにより使用者が講ずること。
イ 労働者ごとに始業から二十四時間を経過するまでに厚生労働省令で定める時間以上の継続した休息時間を確保し、かつ、第三十七条第四項に規定する時刻の間において労働させる回数を一箇月について厚生労働省令で定める回数以内とすること。
ロ 健康管理時間を一箇月又は三箇月についてそれぞれ厚生労働省令で定める時間を超えない範囲内とすること。
ハ 一年間を通じ百四日以上、かつ、四週間を通じ四日以上の休日を確保すること。
五 対象業務に従事する対象労働者の健康管理時間の状況に応じた当該対象労働者の健康及び福祉を確保するための措置であつて、当該対象労働者に対する有給休暇の付与、健康診断の実施その他の厚生労働省令で定めるものを当該決議で定めるところにより使用者が講ずること。
六 対象業務に従事する対象労働者からの苦情の処理に関する措置を当該決議で定めるところにより使用者が講ずること。
七 使用者は、この項の規定による同意をしなかつた対象労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならないこと。
八 前各号に掲げるもののほか、厚生労働省令で定める事項。
[引用おわり]
このような弁護士も読めない条文。かつて香港にあった蜘蛛の巣のような市街「「九龍城」のような世界が、労働法制の世界で、労働者が分断されています。
この長時間労働や残業代の規制が除外される職種(エグゼンプション)である「高度の専門的知識等を必要とし、その性質上従事した時間と従事して得た成果との関連性が通常高くないと認められるものとして厚生労働省令で定める業務」。
これについて、塩崎厚労相は「所得再分配のために、その糧を得なければならない」安倍首相は「すべての人が希望を持てる社会をつくりたい」と答弁。なんらかの思惑が裏に透けて見える答弁をしました。
●民主党の岡田克也代表は定例会見で、労働基準法改正案の対案提出を明言し、「先送りは卑怯だ」と首相を挑発
この石橋さんの提案の直後に、定例(金曜日午後3時)で始まった、岡田克也代表の記者会見で、「長時間労働は根の深い悪弊で、子育てと仕事の両立を阻み、親の介護も施設に任せるしか選択肢がなくなっている。和民の裁判を見ても、これが企業のやることかと憤りを感じる」とし、「総労働量とインターバル(退勤から出勤までの時間)規制を盛り込んだ法案を出して議論したい」と語りました。
さらに「安倍首相は重要な法案だと思うのなら、参院選の後に先送りするのは卑怯だ」とまで挑発しました。
「社長と経理部長」「民主党の一卵性双生児」とも揶揄される、岡田克也代表と郡司彰参議院議員会長の足並みが一致した戦術のようです。