【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

自民党・鈴木隼人外務委員が「ロシア経済協力担当相を廃止しろ」と気色ばむ、警察法・雇用保険法・土地改良法あっさり成立

2022年03月30日 17時22分38秒 | 第208回通常国会 令和4年2022年1月
[写真]こまめに取材する筆者と、右から、首相官邸、衆議院第一議員会館、衆議院第二議員会館、参議院議員会館、先週撮影。

 「ニュースサイト宮崎信行の国会傍聴記」は元日本経済新聞記者の政治ジャーナリスト宮崎信行がすべて一人で取材し、一人で書いています。

 きのう「枝野幸男前代表が衆議院国土交通委員会で質問する」と速報しましたが、その記事のページビュー(PV)は少なかったです。なかなか平日昼にリベラルは国会中継を見る時間は少なく、新聞記者やユーチューブ(YouTube)動画の方が、枝野さんの発信には向いているのでしょうか。

【参議院本会議 きょう令和4年2022年3月30日(水)】
 政府は22本の法案を、予算歳出入のために3月31日までに成立してほしいとしましたが、「ウクライナ」以外は超与党ペースの第208回国会で、きょうの本会議を終えて9本の成立にとどまりました。だとしたら、本当に指定する必要があったのでしょうか。あすは木曜日で定例日ではありませんが、きょうあす連続で本会議が開かれることになりました。

 きょうはまず、佐々木さやか災害対策特別委員長が登壇。「豪雪地帯対策特別措置法を10年延長するなどの改正法」(208衆法12号)が採決され全会一致で可決し、成立しました。基本理念も書き込まれました。委員会の附帯決議で国土交通大臣が答えたので調べたら、豪雪対策は国土交通省の建制順2つめの国土政策局の建制順5つめの地方振興課の所管になるようです。

 「改正IDA国際開発協会加盟法」(208閣法6号)も全会一致で可決し、成立しました。

 「令和9年横浜市瀬谷区の国際園芸博覧会特別措置法」(208閣法15号)も全会一致で可決し、成立しました

 「改正警察法」(208閣法2号)は起立採決での過半数で可決し、成立しました。4月1日(金)施行。警察庁の関東管区警察局にサイバー警察局ができるため、都道府県警察制度の歴史的転換となります。

 「NHK予算の承認の件」は維共反対、自公立国賛成多数で両院で承認されました。

 「改正土地改良法」(208閣法19号)と「特定土壌地帯災害防除及び振興臨時措置法の5年延長など改正法」(208衆法11号)が一括して採決され、全会一致で可決し、成立しました。二階俊博会長の「土改連」(本部・砂防会館)が土地改良区組合に融資ができる規定も入りました。

 「改正雇用保険法」(208閣法14号)は共産が反対し、自公立維国などの賛成多数で可決し、成立しました

【参議院ODA・沖縄北方特別委員会 同日】

 「沖縄振興特別措置法改正案」(208閣法21号)が採決され、沖縄の風や碧水会を含んだ全会一致で可決すべきだと決まりました。

 本土復帰50年のことしに10年に1回の改正。答弁は西銘恒三郎大臣(沖縄4区)。10年前はダブルトラックの衆参与野党協議会があったと思いますが、今回は与党内での予算・税法も含めた審議で冷淡なムード。但しこの法案の審議については、ラストバッターが「ハイサイ、沖縄の風の伊波洋一です。各委員からの沖縄応援の質疑に心から感謝します」と切り出すほどの良いムード。伊波さんは今夏改選で、自民党公認の若い元総務官僚と激突するという沖縄県区で初の構図となりますので、私も現地に入って取材するつもりです。

【参議院政治倫理の確立及び選挙制度に関する特別委員会 同日】
 「第26回参議院議員通常選挙のための選挙執行経費基準法及び公職選挙法改正案」(208閣法17号)が全会一致で可決すべきだと決まりました。質疑者はほぼ、非改選の「奇数組」でした。

【衆議院国土交通委員会 同日】
 会議の冒頭、斉藤鉄夫国土交通大臣が統計の調査票の配布が1年以上遅れた件を謝罪しました。
 「所有者不明土地の利用円滑化法特別措置法改正案」(208閣法20号)が審査され、採決の結果、全会一致で可決すべきだと決まりました。法案審査では立憲民主党の枝野幸男さんが登場しました。枝野さんは「30年前、弁護士を2年ぐらいしていた」とし「相続土地登記で相続人を探すのはスタッフにとって大変な作業だった」と強調。「所有権が移るわけではないと思う。例えば、知事が建物を壊すことはできるか」と問い、政府参考人は「知事が壊すことはできない」としました。枝野さんは「仮に、不明相続人の1人が出てきて抗議したら大変だ」とし国家賠償額が大きくなることを懸念しました。但し、これも国から目線であって、気持ちは分かりますが、民間人から見た経済ではないと考えます。大臣の発言について枝野さんは「発言は今聞いたばかりで質問通告もしていないが、建設受注統計と違い、その問題は斉藤大臣就任後ではないか」と反応し「政治案件だ」だと国交省官僚の姿勢に疑問を投げかけました。次回は4月1日(金)9時。

【衆議院厚生労働委員会 同日】
 一般質疑だけがありました。立憲民主党の長妻昭さんはGPIF年金がクラスター弾製造のイスラエルの「エルビット」韓国の「ハンファ」は投資していると指摘し、後藤茂之厚生労働大臣は珍しくうろたえていました。

 山井和則さんは、改正民法によるAVアダルトビデオ18歳・19歳取消権だけを「これは所管官庁がない」として取り上げました。「参議院で議員立法の機運があるが、本来は政府が出して欲しい」と強調しました。大臣からはこの問題が性犯罪の増加につながる懸念があるとの認識が明言されました。

 長妻・山井コンビは10年以上。山井さんは野党なのに京都6区というところで小選挙区で勝ち、長妻さんも東京の7区で連続当選。阿部知子さんも神奈川12区で当選ということで猛者の集まりという印象です。

【衆議院文部科学委員会 同日】
 一般質疑では白石洋一さん(愛媛3区で惜敗し比例)が人生前半の社会保障である子供の教育費にからんで、離婚した場合に、厚生年金の分割ができるのに、なぜ広報しないのかを正しました。子育てを社会保障4分野ととらえる一体改革のマインドが10年経っても健在というところでしょうか。厚労委員が先輩でいっぱいなので第二志望かもしれません。
 最後に「教育職員免許更新制廃止の改正法案」(208閣法34号)が大臣から趣旨説明されました。次回は4月1日(金)9時半に参考人質疑からスタート。

【衆議院農林水産委員会 同日】
 「みどりの食料システム促進法案」(208閣法32号)と「植物防疫法改正案」(208閣法33号)の法案審査があり、質疑が終局しました。
 ここで、共産党の田村貴昭さんが単独で修正案を提出。その後の採決では立憲・維新も共産修正案に賛成したようです。この田村さんの修正案は「生産性の向上や市町村計画づくりは多様なステークホルダーの参加が必要だ」という極めて理念規定・配慮規定に限ったものでした。このため立憲・維新も賛成しやすかったようです。最後は、全会一致で政府原案通り可決すべきだとの委員会審査結果が決まりました。持続可能農業法を廃止し、農地バンクが営農事業を提供したり、市町村に計画づくりを求めるなどした包括的で意欲的な法案。

 この後、「植物防疫法改正案」(208閣法33号)も採決され、こちらも全会一致で可決すべきだと決まりました。次回は4月6日(水)9時。

【衆議院外務委員会 同日】
 最後に「旅券法改正案」(208閣法29号)と「東日本大震災に係る旅券発給特例法廃止法案」(208閣法30号)が大臣から「電子化し、増補欄をなくして新しい旅券を安く発行できるようにする」と趣旨説明されました。
 これに先立つ一般質疑で与党議員が政府に気色ばむ珍しいシーンがありました。鈴木隼人さん(東京10区、3期、茂木派)が「あすで東京オリ・パラ担当大臣が退任するのだから、ロシア経済協力分野担当大臣も廃止すべきだ」と語りました。外務省は「閣僚の職務についての答弁は控えるが、日本のロシアに対する協力姿勢はもはや同じにはできない」と答弁。これに対して鈴木さんは「もっと言いたいことがあるが、私は与党の議員ですからこの辺で控えます」と語ると、「もっと言え」とのヤジがいくつも飛びました。岡田克也さんの出番はきょうはありませんでした。

【衆議院経済産業委員会 同日】
 一般質疑があり、タイトルは「現下の経済情勢と半導体等サプライチェーン」とした集中審議がありました。

【衆議院内閣委員会 同日】
 「経済安全保障法案」(208閣法37号=重要広範議案)と「それに対する維新対案」(208衆法10号)の法案審査たぶん3巡目がありました。次回は、あす9時。

●あすあさっての予定
 あすは衆議院本会議で「ブリュッセル緊急リアルG7サミット帰朝報告とそれに対する代表質疑」があります。あさっては参議院本会議です。可能ならば、外務省はNATO首脳会議、米大統領・ウクライナ外相会談の内容も含めた報告執筆を期待したいところです。昔の文化放送・ニッポン放送のラジオニュースをユーチューブで聞くと、本会議政府報告をかなり詳しく伝えて新聞に比べて記者が少ないことを補っていたようです。あすは「薬機法改正案」(208閣法42号)が重要広範議案として立憲対案とともに衆議院本会議で審議入りするため、岸田文雄首相にとっては長い一日になります。

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GPIF年金がウクライナで使用された「クラスター弾」製造企業に投資、長妻昭さんの指摘に大臣認める、イスラエル「エルビット・システムズ」韓国「ハンファ」

2022年03月30日 15時10分40秒 | 第208回通常国会 令和4年2022年1月
[写真]立憲民主党の長妻昭さん、4年前の2018年12月、衆議院本館内で、宮崎信行撮影。

 立憲民主党の長妻昭さんは、十数年連続して在籍する「衆議院厚生労働委員会」で、法案とは関係なく大臣に問える一般質疑で、年金積立金を預かる「GPIF」が所有する株式ETFがクラスター弾製造企業に投資していることを指摘し、後藤茂之厚生労働大臣が認めました。

 長妻さんは「日米欧はロシアを徹底的に経済制裁すべきだ」としたうえでえ「ウクライナでクラスター弾が使用された。クラスター弾の使用は2008年の禁止条約があり、日本国内でも禁止法がある」と語りました。そのうえで「ウクライナで使用された製造メーカーは分からない」としつつも、GPIFがクラスター弾製造会社を含む株式ETFを持っているとしました。

 これに対して、後藤大臣は、イスラエルの「エルビット・システム」、韓国の「ハンファ」、アメリカの「テキストロン」に投資していると認めました。

 このうち「テキストロン」は審議やウィキペディアなどにあるように2016年に条約を受けて製造中止。イスラエルの「エルビット」は宇宙航空など幅広く扱うグループですが子会社の一つとして特化しているようです。ハンファは「韓国火薬」が前身で、クラスター弾を含んだ弾薬製造がグループの中枢のようです。

 後藤大臣は見直しを否定しましたが、長妻さんは「金融庁に詳しい人に聞いても、お客さんが聞けないということはない」とし、厚労省・GPIFが企業に対して業務内容を確認すべきだとしました。

 GPIFが所有するごくわずかなロシア国債は、売買が成り立ちにくいが、可能なら早期に売却したいとの考えも大臣答弁で明らかにされました。

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自民党と公明党が断裂、高市「予備費5・5兆円で十分」山口「財源の確保のために補正予算成立を」

2022年03月30日 08時29分59秒 | 第208回通常国会 令和4年2022年1月
[写真]共同通信きさらぎ会で講演する高市早苗自民党政調会長(2022年1月)と山口那津男公明党代表(2021年7月)東京・麹町平河町地区のホテル・ニューオータニで、宮崎信行撮影。

 「原油価格・物価高騰等総合緊急対策」の編成を、岸田文雄首相(自民党総裁)がきのうの閣僚懇談会で指示。「4月末」を締め切りとしましたが30日は土曜日、29日は祝日なので、28日木曜日平日が締め切りとなると思われます。

 自民党の茂木敏充幹事長と高市早苗政調会長は2段階論として予備費5・5兆円を財源とし、第26回参院選の後に、補正予算を成立させる構想を提示。それでいて、きょうから、「財源なき歳出論議」を政調で開始。

 公明党の山口那津男代表はきのうの記者会見で「用意した予備費には一定の限界がある」「財源措置を用意することが本来のあり方。補正予算を今国会中に成立させる真正面の対応が必要だ」と強い口調で補正予算案を求めました。ところで、山口さんは同日、同党元神奈川6区・福岡沖縄支部長の遠山清彦元財務副大臣の貸金業法違反での有罪判決について「公明党はクリーンなイメージを確立できるよう努力してきた。大半の議員は、その努力を堅持している」と強がりました。

 仮に補正予算を成立させるためには、4月28日の政策パッケージ決定後に、5月17日頃の補正予算案閣議決定のスケジュールが浮上。6月3日に国会に提出しないと間に合わないことになります。

 日本銀行は、長期金利を年0・25%未満にするため、指値オペをしていますが、わずか1000億円の応札で、為替が3円安くなる大失態をしました。しかし、まだ特例公債を発行する余地は十分に残されています。コロナ明けの春のリベンジ消費も東京ではあまり見られません。とはいえ、一律給付金の時期は過ぎており、細かく難しいメニューのアイディアが必要となります。


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