[写真]西武鉄道のグループ本社、東京・豊島区「池袋」駅東口、先々月、宮崎信行撮影。
コロナ禍の乗客減と防犯カメラ増強の「鉄道事業の持続可能な運営」を話し合う「鉄道運賃・料金制度のあり方に関する小委員会」が月曜付(令和4年20で2年2月14日)で設置され、きのう16日初会合が開かれました。
霞が関・永田町で「持続可能」とは「値上げ」を意味する隠語。
「鉄道事業法改正案」が第26回参院選後、2023年の通常国会を軸とした時期に提出されるかもしれません。
正式名称は「交通政策審議会陸上交通分科会鉄道部会鉄道運賃・料金制度のあり方に関する小委員会」。国土交通省鉄道局作成のプレスリリースは次のように書きました。
[国交省プレスリリースから引用はじめ]
現行の鉄道運賃・料金制度が導入されてから20年以上が経過する中、新型コロナウィルス感染症の影響によるライフスタイルの変化や
デジタル技術の発展・普及への対応、地域における交通モード間における連携強化等、現行の運賃・料金制度における課題について
議論するための小委員会を交通政策審議会の下に新たに設置します。
○ 鉄道の運賃料金制度に関しては、平成11年に鉄道事業法が改正され、現在の制度が導入されてから20年以上が経過しました。
この間、新型コロナウィルス感染症の影響によるテレワークの普及やICカードシステムの急速な普及に見られるようなデジタル技術の発展、
MaaSを始めとする地域における様々な交通モードとの連携強化等、鉄道を取り巻く社会経済状況は大きく変化しています。
○ また、昨今では、昨年相次いで発生した鉄道車内における傷害事件の発生等を踏まえたセキュリティ対策、激甚化・頻発化する災害への対応、
鉄道施設の老朽化対策等といった鉄道における安全性の向上のための対策が急務となっているところです。
○ こうした状況を踏まえ、鉄道事業の持続的な運営を可能とするとともに、多様化する利用者ニーズに鉄道サービスが適切に対応することを
可能とするため、運賃・料金制度について今日的視点から検証を行います。
[引用おわり]
「鉄道事業法」(昭和61年法律92号)は「旅客運賃等の上限を定めて、国交省の認可を得る」としています。「上限の認可」を届出にする案も省内にあるようです。JR東日本はラッシュ時の運賃を高くする時間帯変動運賃を政策提言しているようです。
軌道法(大正10年法律76号)も生きているので、束ねて改正されるかもしれません。
サービス業の常道として、深夜・早朝料金がありますが、鉄道車両は循環しているので、客一人あたりの人件費を考慮する必要はあまりないでしょう。そのためラッシュ時を高くして、中間層会社員の自主的な早朝出勤を促すことになり、負担となるかもしれません。実は、労働基準法はその24条などに「交通手当を払う義務」が使用者にはなく、正規社員が自腹になっても違法ではありません。
西武鉄道グループがコロナ禍の運賃収入減少などから、プリンスホテルのうち高輪などを一括してシンガポールのファンドに売却し現金を得ることが決まりました。今後の運営を受託することが条件で、堤・後藤社長たちは厳しいようで雇用は維持する「従業員思いの会社」ではあったんだなと感じます。西武鉄道は箱根のプリンスの一つを日産自動車の社員寮として売却したり、赤坂プリンスをオフィスビルにして収入が5倍になったりしています。鉄道事業の日銭収入による不動産投資という意識が強いようで、今回の売却は鉄道事業を維持するための現金づくりだと思います。
JR東日本は東京・新大阪間の運賃を1万1000円強で設定していますが「早割」はありません。私がフランスの新幹線を調べたら、乗車2か月前に予約すれば3000円になる「早割」があるようで、学生の帰省に使われているようです。国鉄民営化から35年経ち、国鉄北海道鉄道局が計算した「赤字ローカル路線」の発表を、JR九州も始めるもよう。国交省の一部には叩かれないよう認可から届出に格下げしようという動きもありそうですが、第26回参院選後の国政選挙がない「黄金の3年間」の間に永田町が「三方良し」の鉄道事業のグランドデザインを示す必要がありそうです。
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