時空を超えて Beyond Time and Space

人生の断片から Fragmentary Notes in My Life 
   桑原靖夫のブログ

富士山噴火?

2009年09月07日 | 雑記帳の欄外


 イギリスの雑誌 The Economist の表紙が、しばしば奇抜で秀逸なことは、このブログでもすでに記したことがある。今回の日本の民主党への政権交代の反応がこれ(上掲)である。「日本を変えた投票」The vote that changed Japan という表題がつけられている。多くの日本人の受け取り方が、このような衝撃的なものか、すぐには答えられない。

 むしろ、ブログ管理人としては、波高い海上で沈没寸前のボートから別のボートへぎりぎり跳び移ったような印象だ。激変であることはその通りだが、突然の噴火のような衝撃ではない。国民の多くは不安ながらも他に選択肢がなく、選ばされたようなところがあるのではないか。苦難は、厳として目前にある。新しいボートが国民を安全な航海に導いてくれる保障はない。結果は乗組員全員の英知、勇気ある決断と行動にかかっている。ここまで来たからには、しっかりと行方を見つめたい。

 The Economist が指摘する今回の選挙がもたらした変化は、次の3点だ。第一はいうまでもなく民主党の圧倒的な勝利である。308議席。「数は力なり」だが、力が質の改善につながる保証はない。第二は、自民党の敗北は、日本の政治文化の深部における変化の累積が生み出したものという点だ。国民の我慢が耐え難いところまで来たのだろう。そして、第三は、自民党政治をひっくり返すことで、日本の選挙民は自民党という政党を放り出しただけでなく、全体のシステムを放り出したのだという。これらの指摘がすべてその通りか、今はまだ答えられない。

 具体的な次元で最重要な点のひとつは、新設される「国家戦略局」*という新組織だ。すでに注目が集まり、多くの議論が始まっている。日本という沈みかけた船の復元に残された時間はそう多くない。必要なことは、新生日本のイメージと進むべき道筋を国民と世界にはっきりと示すことだ。問題の軽重をしっかり見極め、政治家の真骨頂を示してほしい。

 今はただ、次の表紙が「大山鳴動して鼠一匹」にならないことを望むのみだ。


* 戦略 strategiesという概念が、今日では軍事的意味から脱して、経営や国家のあり方などの領域にまで拡大して使われていることは理解していても、名称としては「国家基本構想局」くらいが良いのではと思う。法案化の過程で検討を望みたい。

追記、このブログ記事の後、『朝日新聞』9月13日「私の視点」(投稿)に、歌人の道浦母都子氏が「国家戦略局」という名称に違和感を覚えると記されている。管理人と異なり、「戦略」はともかく、「国家」なる言葉が「国家総動員法」、「国家非常事態」といった過去の言葉との暗い連想を生むことを指摘されている。管理人の私の方は、世界に「国民国家」 nation state が歴然と存在する以上、「国家」という語は(使わない方がよいが)入っても仕方がないという感想だ。「国民」では意味が異なってしまう。「国家」と「戦略」が結びつく連想は最悪だ。いずれにせよ、両者ともに言葉をもっと大切にしてほしいという点では変わりはない。

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする