時空を超えて Beyond Time and Space

人生の断片から Fragmentary Notes in My Life 
   桑原靖夫のブログ

遠からず来る時を前に(2):ひとつの整理

2020年04月24日 | 特別記事

ケンブリッジ大学 『数学橋』Mathematical Bridge (popular name)         

新型コロナウイルスが世界で猛威を奮い始めた今年2月、アメリカで行われた調査(YouGov poll)によると、アメリカ人の29%が人生のどこかで「黙示録」( Apocalypse) 的大災害、災厄が起きると感じているとの結果が報じられた。世界の終わりが近づいているという不安や恐れである。さらに子供の世代まで含めると、その比率はもっと高まるという。

核戦争、大火災、大地震などの震災、疫病、そして近年では地球温暖化がもたらす結果への恐怖心が急速に高まってきた。こうした終末観ともいうべき考えは、キリスト教に限らず、地球上のほとんど全ての宗教に何らかの形で見出されるともいわれている。

N.B.
「黙示録」の流れ
世の中に今日流布している「黙示録」的考えには、次の2つの基本的な理解の流れが存在するとみられる。
(1) ヨハネ黙示録。 ヨハネ黙示録は新約聖書としては唯一の預言書で、ヨハネが神に見せてもらった未来の光景を描いたとされる。この書には、戦乱や飢饉、大地震など、ありとあらゆる禍が書かれている。天使と悪魔の戦いや最後の審判の様子も記されている。
『ヨハネ黙示録』は、破滅、破局やこの世の終わりだけを語るものではなく、その後に訪れる「千年王国」を経て、新しい世界の到来を示す救済の書である。しかし、その救済の前に起こる破滅的な災害の模様が、想像を絶する衝撃的な内容であるため、「黙示録」は「世界の終わりの大災害」と重複し、イメージされるものと考えられる。

(2) 紀元前2世紀から紀元後2~3世紀までのものとされるユダヤ教やキリスト教の預言書。 それら預言書の中でも特に世界の破滅と正義の救済について記述があるもの。預言者の名、あるいは匿名で、未来を預言する書物が多く書かれた。それらは宗教的文学ジャンルの「黙示文学」として分類される。

いずれにしても『黙示録』には「世界の終末」と「最後の審判」、そして「新しい世界の到来」が記されている。


注目される現代人の考え

コロナウイルスが世界に蔓延しつつある今年、タイミングよく出版された一冊の本が注目を集めている。広がる所得や資産の格差、激化するナショナリズム、毎回拡大する森林火災、大地震、津波、南極氷河の顕著な消失など、世界には逆転しない大きな問題が増えてきた。なんとなく大崩壊の崖淵にあるような感じを著者オコネル O’Connell は抱くようになった。人類が長い年月をかけて構築してきた文明の体系が崩壊するのではないか。折しも世界を脅かしつつあるコロナウイルスの大感染は、最後の審判の日のイメージに近づきつつあるようだ。

著者のオコネル は、コロナウイルス感染拡大の4年ほど前から本書を企画していた。終末論に着目し、その日に備える人々( ”preppers”といわれる)のあり方を訪ねて世界中を旅し、そこで出会った人々の対応の有り様を描いた。

世界にはこの世の終わりの最後の審判日にいかに備えるかを考え、様々な対応をしている人々がいる。オコネルが執筆に取りかかった動機には、現代にはその先に何もないという未来の姿を考える人たちが少なくないという認識があったといわれる。世界の終末が近いとしたら、人々はどうするか。


Mark O’Connnel, Notes From an Apocalypse’ Is a Timely Tour of Preparing for the Worst, Doubleday, Granata, 2020.


近世以降に限っても、人間は戦争、疫病、火災、地震、チェルノブイユや福島の原子力事故など様々な恐怖の時代を過ごしてきた。そしてコロナウイルスに世界中が怯える現在が最後の時だとしたら、あなたはどうするか。世界にはもし地球に最後の日が来ても、人類全てが絶滅するわけではないと考える人たちもいる。極端な例としては火星移住を考えたり、金にまかせて、ニュージーランドを購入しようとする人たちまでいる。

スウェーデンの環境保護活動家グレタ・トゥーンベリさん(16)は [ニューヨークで行われる気候変動会議に出席するため、2週間をかけてヨットで太平洋を横断した。彼女は言う:

「あなた方は、自分の子どもたちを愛していると言いながら、その目の前で子どもたちの未来を奪っています。」

信仰の力でその日を迎えるという人たちがいるかと思うと、財力をもってすれば、なんとか自分たちは対応できると考える人たちもいる。後者の中には広大な土地を購入し、強固な掩蔽壕 (shelter , survival bunker)を構築し、それらを購入した人たちとその時に備えている人々もいる。オコネルが訪ね歩いた場所の実態はとにかく驚くばかりだ。これほどまでにして、その日を迎えたいのだろうかと、いささか滑稽に思えることもある。現在進行しているコロナウイルス感染の拡大も、人類が迎える終末の前段階と見る人たちもいる。

猛暑の続くイギリス東部ケンブリッジで2019年7月25日、気温38.7度を記録した。英気象庁が29日、国内の観測史上で最高の気温だとあらためて発表した。
ケンブリッジ大学植物園で7月25日に観測された摂氏38.7度は、2003年に南東部ケント州で観測された最高気温38.5度を上回った。
気象庁職員が植物園に出向き、温度計が正確かどうか確認した上で、新記録だと29日に正式に発表した(BBC 07/25/2019)。

 

世界の近未来はいかなるイメージとなるか。「コロナ後の世界」は少しづつその輪郭を現しつつある。

 

 

続く

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