「蛙」:ベルリン エジプト美術館蔵
FIGUR EINES FROSCHES
Negade 1 Dynastie, um 3000-2800 v. Chr.
erworben 1905
Elfenbein Hohe 2.7cm・Inv.-Nr. 17569
AGYPTISUCHES MUSEUM UND PAPYRUSSAMMLUNG
Staatliche Museum zu Berlin - Preussischer Kulturbesitz
新型コロナウイルスの感染症に関する対応の過程で、いくつか英語が使われている。これまであまり使われたことのない用語だった。とりわけ、気がついたのは次のような言葉だった。
ステイ・ホーム
ソーシャル・ディスタンシング
オーバーシュート
ロックダウン
パンデミック
新型コロナウイルスとともに、これらの英語あるいはカタカナ英語が日本に持ち込まれたが、最初に接した時に国民の皆さんにどれだけその意味が伝わっただろうか。周囲にいる人たちの反応は、説明がないとわからないと思った人が多いようだった。
日本のメディアは、外来語が好きなのか、かなりの数の横文字が日常生活では使われている。筆者は日本人としては比較的長くアメリカ、ヨーロッパの文化に近い環境で、これまでの人生を過ごしてきたが、しばしばマスコミ、メディアで使われる外国語の日本語への移し方の適切さなどで違和感を持ってきた。
今回の新型コロナウイルスの感染拡大の過程でも、上記のような英語が当然のように用いられてきたが、導入についてはもう少し配慮が欲しかったと思った。
「ソーシャル・ディスタンシング」は「フィジカル・ディスタンシング」へ
ひとつの例をあげてみよう。上記の例で、「ソーシャル・ディスタンシング」social distancing については、最初に使われた段階で、本ブログで少し記している。この言葉自体が大変分かりにくい概念なのだが、WHOは最初使用した時は、現実には一定の「物理的距離」を保つ、 physical distancingを意味したように思われた。ウイルス感染の危険を回避するため、人々が社会の諸活動で近接する場合、感染を防げると思われる距離をとって行動するという内容を伝えたかったようだ。公衆衛生学の分野でsocial distancing がこの意味で使われているならば、その旨の説明が欲しかった。さらに「社会的距離」social distance と「社会的距離を保つこと」social distancingでは意味が異なってしまう。
世界へ新型コロナウイルスが広がる過程で、この用語の分かり難さが表明され、人が互いに近づいて行動する場合には、2メートルくらいの距離をとって行動するという説明がつけ加えられた。要するに説明をしないと正しく意味が伝わらないという問題が起きてしまった。そんなことなら、初めから「物理的距離をとること」physical distancingといえば良かったのではないかということで、最近ではWHOもこちらに切り替えたようだ。さらに、このような重要なガイドラインならば、「(感染を避けるため)適切に距離を空ける」「適度な距離をとる」などの日本語を初めから使えば良いのにと思ったほどだ。
「ステイ・ホーム」は解説がなくとも、なんとなく分かるが、「オーバーシュート」overshoot (目標を越える、外れる)、「ロックダウン」lockdown (封鎖)などに至っては、説明を受ければわかるものの、どうしてわざわざ英語を使わねばならないのかと思ってしまう。日本語を使ったほうが直裁に正しくその意味が伝わると思うのだが。「パンデミック」pandemic (世界的流行病)に至っては、WHOがパンデミック宣言をすることで、ひとつの転機を画するに必要かもしれないが、この言葉に馴染みのない人たちにとっては、どのように受け取られているのだろうか。戦後、英語教育が十分ではなかった環境で育った人には、英語を聞いてすぐに内容が分かるというのはかなり無理なようだ。
いつにない危機感で受け入れた緊急事態宣言も、ようやく解除の日が近づいた。それにしても鳴り物入りで誇示された国民へのマスク2枚の配布、まだ届かない地域も多いらしい。これも説明がないと分からない。