今回のパズルは少し難易度が上がる。
これは誰が描いた、いかなる作品の一部でしょうか。
ヒント:
⭐️この作品を観る人は、誰かが背後から近づいているような感じを受けることがある。
これは誰が描いた、いかなる作品の一部でしょうか。
ヒント:
⭐️この作品を観る人は、誰かが背後から近づいているような感じを受けることがある。
⭐️この時代の画家にとって、自分の署名を作品に残すことは習慣ではなかった。しかし、この天才画家は自分の作品のいくつかには署名を残したばかりでなく、/Als ich kan (as I can)/ と付け加えたこともあった。この句に込められた謙遜さは、興味深い。というのもこの画家は西欧文化における偉大な画家のひとりだから。
もうお分かりですね。
このブログを読んでくださっている方は、この画家の作品をご存知のはずである。そう、《アルノルフィーニ夫妻像》*として知られるヤン・ファン・エイクの名作の中にこの鏡は描き込まれている。画面の中にもうひとつの画面を描きこむという発想の斬新さに感嘆する。そして、その精緻な仕事ぶりに圧倒される。
*Jan van Eyck (active 1422; died 1441)
Portrait of Giovanni(?) Arnolfini and his Wife (Portret van Giovanni Arnolfini en zijn vrouw: The Arnolfini Portrait)
1434, oil paintings on 3 oak panels, 82.2×60.0cm
The National Gallery, London
《アルノルフィーニ夫妻像》
もう一度、見てみよう。凸面鏡の枠に刻まれた小さな円型の飾りはイエス・キリストの受難を表現している。凸面鏡は結婚の誓いを見届ける神の目のようでもある。同時に曇りない鏡は聖母マリアの処女懐胎と純潔の象徴でもある。
鏡の中で戸口に立つ二人の人物のひとりは、画家自身と考えられる。
もし、この作品が婚姻証明であると考える後世の学者の説に従うならば、二人の人物はこの結婚を法的に正当なものとするために招かれた立ち会い人であろう。
扉の近くに立つ二人の男のうち、赤い服の男性がファン・エイク自身と考えられている。
さらに、鏡の上に「ヤン・ファン・エイクここにありき。1434年 (Johannes de eyck fuit hic. 1434)」 と日付入りの署名がある。この署名は木製の額縁にだまし絵風に彫刻されているかのように書かれている。
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N.B.
この構想と似通っているベラスケスが、絵画制作中の自らの姿を描き入れた《ラス・メニーナス》*とは異なり、ファン・エイクは絵を描いている姿では描写されていない。ちなみに、ベラスケスはファン・エイクのこの絵を見たのではないかと推測されている。ベラスケスは国王夫妻が制作の場を訪れている光景が鏡に映されている。
Diego Rodriguez de Silva y Velazquez(1559-!660)
Las Meninas (The Handmaidens), 1656
Oil on canvas, 109 x 125 in (276 x 318 cm)
Prado, Madrid, Spain
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この作品、「アルノルフィーニ夫妻像」として知られているが、近年調査が進むにつれて、さまざまな謎が生まれてきた。その一部は、これまでのブログで記事としたが、ここでは立ち入らず「アルノルフィーニ夫妻像」としておこう。
ヤン・ファン・エイク『アルノルフィーニ夫妻像』1434年、ナショナル・ギャラリー、ロンドン
2020年2月〜4月にかけてゲントで開催されたこの画家の特別展では、Optical Revolution と題してこの画家の知られざる側面に光を当てている。これまで公開の美術館の展示では充分見ることができなかった部分が、印刷技術の進歩もあって、驚くほど鮮明に写しだされている。
この画家の他の作品も素晴らしく、図録もきわめて綿密に仕上げられており、よく見かける展覧会用の平板なものではない。読んでいて多くのことを教えられる。学術的にも水準が高い。ひとつだけ難を挙げるとすれば、図録が年々大部で重量感のある出版物になっていることぐらいだろうか。
Van Eyck: An Optical Revolution, catalogue cover
Museum voor Schone Kunsten, Ghent
1February - 30 April 2020
Van Eyck: An Optical Revolution, catalogue cover
Museum voor Schone Kunsten, Ghent
1February - 30 April 2020
続く