時空を超えて Beyond Time and Space

人生の断片から Fragmentary Notes in My Life 
   桑原靖夫のブログ

暑中お見舞い申し上げます

2012年07月25日 | 午後のティールーム

 

夏やせのお勧め

 現代人にとって「肥満」は大きな関心事だ。ちなみに「肥満」は英語では obesity といい、ラテン語の obesitas (太っている)が語源のようだ。この言葉、現代では単に少し太っているというのではなく、病的に太っているという含意があるようだ。英語で使われるようになったのは17世紀初めらしい。

 中世ならびにルネサンス期においては、肥満はしばしば富裕さの象徴とみられ、とりわけ役人や王侯貴族の間に多くみられた。

 典型的な例としてよく登場するのが、イタリア、トスカナ地方長官アレッサンドロ・デル・ボッロ The Tuscan General Alessandro del Borro なる人物の絵画であり、説明するまでもなく、見事な?体型である。実は、この画像を描いた画家が、前回忘れられていた画家として紹介したシャルル・メランなのだ。1645年の制作とされている。当時は恐らくこの体型が、富裕と権力のシンボルとみられていたのだろう。そういえば、ブルボン王朝の王たちも総じて立派な?体型の方が多い。

Portrait d'homme, autrefois dit Alessandro del Bprro
dit Giovanni Paolo Schor
Berlin gemäldegalerie Alte Meister, inv.413A
Huile sur toile; H: 2.03; L.1.21

 


 この問題、書き始めるときりがないので終わりにするが、実は、前回宿題?にしておいた、シャルル・メランの作品 La Charité romaine「ローマの慈愛」のテーマについては、最初作品を見てその由来を知った時
、一瞬言葉を失ってしまった。「ローマの慈愛」あるいは「キモンとペラ」とも名付けられている作品だ。この題材は、ローマの歴史家ヴァレリウス・マキシム Valerius Maximusによって語られた逸話から派生したらしい。キモン(Cimon)は牢獄で餓死の刑に処せられたが、彼の娘ペラ(Pera)は毎日牢屋を訪れ、看守の目を盗み、彼に母乳を施すことによって餓死を免れさせた。看守は気づいたが、その慈善的行為に深く打たれ、キモンを釈放した。獄中での餓死を余儀なくさせられた老父を訪れて授乳し,その献身的行為によって父の命を救った娘の孝行物語なのです。

 画題としては、ちょっと引いてしまうテーマなのだが、17-18世紀の画家たちはことのほかお好みのようで、ルーベンス、カラヴァッジョ、マンフレディ、バビュレンなど、名だたる大画家たちがとりあげてきた。


 今回は、先日まで東京に来ていたルーベンスの作品を掲げてみます。こちらは「痩せすぎ」のはずなのですが。

 

 

Cimon et Péro, P. Rubens, 1612
Huile sur toile 140.5 x 180.5cm
Saint-Pétersbourg, Musée national de l'Ermitage

 

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