時空を超えて Beyond Time and Space

人生の断片から Fragmentary Notes in My Life 
   桑原靖夫のブログ

正夢となった白昼夢:年金記録喪失

2008年04月03日 | 雑記帳の欄外

  まさか自分が年金記録問題の対象者となるとは、予想もしていなかった。しかし、5000万人ともいわれる数字を目にすれば、確率上は多少の危惧もあった。決して順風ばかりの人生航路を歩んできたわけではない。職業経歴も断続している。そこへ先日、「ねんきんお知らせ便」が配達されてきた。やはり来たかと思い、目を凝らしてチェックしてみると、たちまち、明らかに誤記としか思えない数字が目に入った。それも1ヶ所ではないので、ショックだった。
  
  手元にある資料をチェックし、説明のつかない部分を関連機関などで確認した上で、最寄りの社会保険事務所へ連絡するが、電話がなかなかつながらない。ようやくのことで相談予約をとりつける。1ヶ月くらい先の夕方、その日最後の時間帯である。
  
  予約当日、社会保険事務所へ出向く。すでに夕暮れ近くだが、予約なしだと25人待ちという状況であった。事務所の光景は問題発生以前とは、様変わりしている。ひとつのフロアは、ほとんどのスタッフが、年金記録対応の体制のようだ。相談を待つ人々の間には虚無とも、脱力感ともつかない雰囲気が漂っている。
  
  事務所の相談スタッフの応対は、丁寧である。訪れる人たちはそれぞれにいらだちや不安を持っているのだから、応対が大変なことも推測できる。
  
  順番が来て、送付された内容について不審と思われる点を、担当スタッフに照会、確認を依頼する。驚いたことに、相談中にもうひとつの欠落が明らかになった。案件としては、比較的処理しやすい内容と思ったが、過去の記録作業における不注意な事務処理ミスと思われる点が目につき、愕然とする。明らかに単純な入力ミスと思われる。今回、通知を受けなかったら、事実を知ることなく受け取り未了のままに人生を終わっていただろう。重大
な国家的犯罪であるとの思いが強まるばかりだった。
   
  誤った記載が修正されても、補正された年金が支給されるのは来年のことになるという。しかも、それが正確にいかなる額になるのかも分からない。未払いの分は遡及して支払われるとしても、厳密にいえば、未払い分の利子調整などはなされるのだろうか。分からない点が多々ある。どこで、誰がいかなる理由で誤記を行ったかさえ、確認できない。
   
  厚生労働分野には多少基礎知識を持っていたこともあって、自分の問題の輪郭についてはほぼ把握しえたが、それでもいくつかの疑問が残る。窓口でひとつひとつ確認していたら、さらに何時間かかるかも分からない。確かな原資料と引き合わせるため、大変時間がかかる。担当者の答えられる権限も限られているようだ。改めて、自分で年金額を試算しなおさねば正確な額すら分からないのだが、今回の被害者の間で、それが出来る人がどれだけいるだろうか。周囲の相談風景を見ていて、問題の根深さを思い知らされる。メディアは厚労相の問責案が提出されると伝えているが、担当大臣が代わったくらいで問題が解決するとは到底思えない。社会保険庁の掲示が絵空事で虚しく感じられる。

  未払いの問題ばかりではない。この問題対応のために、いかに巨額で無駄な追加費用が支出されていることか。そして、被害者など関係者がこの起きてはならなかった問題の解決のために、どれだけの時間を割いているか。大きな国民的損失である。背筋が寒くなる思いだ。

  しかし、ここまで要した時間はすでに1時間半を超え、夜の帳が下りていた。この国の未来を思い、暗澹たる思いで事務所を後にした。


社会保険庁
平成19年9月19日

年金記録問題への対策(社会保険庁)

今回の年金記録問題につきまして、心よりお詫び申し上げます。徹底した対応を行い、昔からのこの問題を一掃します。最後のお一人まで正しく年金をお支払できるよう着実に対策を進めています。

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2 コメント

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年金の闇への怒り (luckymentai)
2008-04-03 23:26:34
読ませていただいて、1人の被害者としてあまりにも生々しく語られているので、本当にこの国の将来について暗澹たる思いにさせられました。

どこで誰を責めるべきなのか、その対象さえ定かではない年金の闇が自分にもいつ降りかかってくるかと思うと本当に恐怖と怒りを覚えます。
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日本に光を取り戻すために (桑原靖夫)
2008-04-04 05:40:12
luckymentai さん
コメント有難うございます。
若い世代が二度とこうした闇を見ないように、国民に分かりやすい、透明度の高い年金制度をしっかりと構想、提示しすること、すでに起きてしまった問題については、出来うる限り早急に誤りを補正し、遡及支払いなどの措置を図るべきでしょう。年金受給者に残された時間は限りがあります。彼らがこの国の水準向上に尽くした功績に対して、国は少なくとも誠意をもって報いるべきでしょう。

現在の対応に見られる多くの問題については、現場で起きている問題点を正確に把握し、対応基準を整理し直した上で、早急にフィードバックする必要があります。いずれかの段階で、今回の対応に注入された膨大な国費と浪費された時間・コストを国民に示す必要があるでしょう。将来、2度とこうした惨状を国民が経験することがないように、すべてを明らかにしておく必要があります。年金を政争の具にすることなく、日本に光を取り戻す新たな礎を築くためにも。
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