時空を超えて Beyond Time and Space

人生の断片から Fragmentary Notes in My Life 
   桑原靖夫のブログ

天才たちのパズル遊び:GCHQの別の時間

2017年06月09日 | 午後のティールーム

 

THE GCHQ
PUZZLE BOOK

Pit your wits against the people who cracked Enigma
Penguin Random House UK, 2016, cover



 世の中にはパズルや謎解きが大変好きな人たちがいる。日本の新聞にはこの頃はあまり掲載されていないが、海外の新聞、雑誌にはほとんどと言って良いくらいクロスワード・パズルが掲載されている。

海外を旅すると、カフェなどで新聞に顔をつけるようにして、片手に鉛筆を持ち、クロスワード・パズルを楽しんでいる人たちを見かけた。その多くは暇を持て余した高齢の人たちだ。ちなみに若い人の姿はあまり記憶にない。スードク(数独)なども含めて、一定のフアンがいるようだ。筆者もクロスワードは、マニアにはほど遠いが、時々試みることがある。

アメリカで学生生活を始めたころ、来週はクイズをすると言われて、最初は何のことか分からず面食らったこともあったが、要するにテストだった。QuizesもPuzzlesも意味はほとんど同じように聞こえるが、パズルはやや難解で込み入った質問を意味することが多いようだで

以前にこのブログで第二次大戦中、ナチズムと戦い、イギリスの安全を確保するために、敵の暗号解読に日夜当たっていた人たちのことを記したことがある。その人たちの本拠は、GCHQ(Govenmet Communications Headquarters)と呼ばれている。

ほぼ100年近くGCHQの職員は、イギリスの安全を確保するために働いていた。第二次大戦中、ナチズムと戦うため、ENIGMAといわれた暗号解読に全力を入れていた。ミルトン・キーンズのブレッチェリー・パーク Bletchley Parkというところにある。映画化もされた、天才アラン・テューリング Alan Turing などが、数学、機械工学、言語学などの同僚の蓄積を駆使して、暗号コード解読のための斬新な電子機械装置を発明した研究所だ。ケンブリッジからさほど遠くなかったので、日系の自動車工場を見学、聞き取り調査にいった折り、同行した友人の知り合いがいるというので、訪れたことがあった。ここで働く人たちは、その分野の世界でも最高の頭脳の持ち主で、創造的で国家の防衛のために献身的に日夜働いている。時に、我々凡人とは違った世界に住んでいるのではないと思わせる言動の人もいる。

その後、ディジタル・エイジの到来とともに、彼(女)らは、テロリズム、サイバーアタックへの対応、国家の最も根幹である正義を脅かす犯罪と戦っている。しかし、この人たちの住む世界は、我々凡人のそれとはかなり違っている。

最近、スノーデン問題について関連記事を読んでいた時、一冊の興味深い本に出会った。ブレッチェリー・パークで働くスタッフが、1980年代ころからクリスマス休暇などの余暇に楽しむため、作ってきたパズルの本である。日頃の職業活動の中から副産物のように生まれてきたパズルであり、クロスワードまで含めて実にさまざまな謎解き問題が集められた一冊だ。この世界の分野のマニアには、またとない楽しみの時間を与えてくれる。しかし、天才たちの頭脳の遊びのために作られた問題だけに、一見解けそうにみえて、それぞれがかなりの難問だ。

たとえば、最初の例題は次の1行だけだ。

M, N, B, V, C, X, ?

答は Z
ヒントはタイプライターのアルファベット・キー配列の最下段にあり。

第2問目の例題は:

BAGG is to William the Conqueror as BEJC is to whom?

答は 1492, Christopher Columbus.

ヒント:

BAGG represents 1066, with each letter representing its place in the alphabet minus one, i.e. A=0, B=1, C=2, etc. BEJC iis therefore 1492.

このような調子で、あらゆるタイプの短いパズルが満載されている。有名人の顔を見て名前が分からないと、空欄が埋められないCelebrity sudoku まであり、マニアには大変魅力のある1冊だ。なかには、パズルの説明もなく、自分でこれがいかなるパズルなのかをかんがえさせるもの(PUZZLE HUNT)まである。しかし、ひとりの力で300問を越えるパズルに正解できるとは一寸考えがたい。考えようによっては、それだけ挑戦のしがいがあるともいえる。これからの暑さしのぎには格好な読み物?だ。とにかく、問題を考えているだけで楽しい。

アラン・テューリングやエドワード・スノーデンのような天才たちにとっては、激務の間の軽い頭の体操なのだろう。ご関心のある向きは、書店、図書館などで、実物を手にした後に決められることをお勧めする。ちなみに、筆者の机上にも一冊置かれているが、まだ3問しか解けていない。しかし、凡人には問題を見ているだけで楽しいこともある。解けなくても、嘆くことはないのだから。

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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