下馬評通り、エブリシング・エブリウェア・オールアット・ワンスの圧勝と言っていい結果となったアカデミー賞。
エブリシング・エブリウェア・オールアット・ワンスの作品賞を受賞はとても喜ばしい事だと思うが、映画の内容をカオスという単語を使わずに表すなら、パワフルという言葉がぴったりだろう。そのパワフルさ故に毒気に当てられたようなになる人もいるかもしれない。とにかくその勢いが凄い。
主演女優賞、助演女優賞、そして助演男優賞もエブリシング・エブリウェア・オールアット・ワンスの出演者が受賞したということは作品賞とはまたちょっと違う意味合いがあると思う。映画全体の様相はカオスを究めていても、それに対するキャラクター設定は、きっちりしていたということだろう。
行く先々のマルチバースの設定は各種あれど、そこでのキャラクター設定がはっきりしていたからこそ演じる俳優たちも役柄に集中し、それぞれのマルチバースにピッタリ合った振り切れた演技を見せる事が出来たのだと思う。
勿論、3人ともこれに至るまでの様々なキャリアがあっての受賞であることは誰もが認めるところだと思う。憑依したような演技で賞を手にする事もあれば、今回のような少し複合的な理由も相まって受賞することもあると思う。どちらも許容される雰囲気があっていいと思う。
主演女優賞を手にしたミシェール・ヨーは、日本のメディアでは、ジャッキーチェンとの共演や007のボンドガールについての紹介が殆どだと思うが、私はクレイジーリッチのヒットも今回の事に繋がっていたのではと勝手に思っている。
日本ではあまりヒットしなかったので話題にならないのかもしれないが、クレイジーリッチのヒットについてのインタビュー映像を見た時、ミシェール・ヨーはとても嬉しそうに映画について語り、「これがこれからに繋がる」という内容の話をしていた。まさにそれが繋がり、今回の受賞になったのだと思う。
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出演した007の中でジェームス・ボンドに中国式タイプライターの入力方法を教える場面も出てくるように中華系と認識されている彼女。
しかしマレーシア系中国人の彼女は、中国語が話せても漢字は読めないと映画雑誌で読んだ事があるように記憶している。
彼女が活躍していた時代の香港映画は、台本の内容が事前に流出しアイデアが盗まれ先に同じような内容の映画が製作される事を恐れ、撮影当日にその日に撮る分の台本が手渡されるのみだったというのは、有名な話だ。私が読んだ記事は、彼女には口頭で内容が説明され、セリフを耳で聞いて覚えたという内容だったと思う。英語やマレー語等が使われる多民族国家のマレーシア出身の彼女らしいエピソードだと思う。
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長編アニメーション賞は、ギレルモ・デル・トロのピノッキオが受賞。
ネットフリックスを見られる人にはぜひお薦めしたい。