目標を高くする意味

今日の練習のはじめにミーティングを行い、2〜3月のチーム目標を示しました。茨城遠征から1週間、いろいろ考えて、現時点での最高レベルの目標を設定しました。その目標を勝ち取るために、今日から約2か月間のフォーメーション練習に入りました。これまで矢口タートルズは、子供たちのバレーボールへの興味関心がより高まるように、楽しく遊び半分の練習をしてきました。そのため、対外試合も少なく、バレーボールの戦術的知識も足りていません。私自身が普通のチームなら当たり前の、いろいろな指導を入れても、(何のことか分からない)といった表情をする子ばかりです。この状態から抜け出すために、「同一パターンのグレードアップ」的なフォーメーション練習をくり返すことで、子供たちの実力をじわじわとあげていきます。いよいよ本当のバレーボールチームを作り上げていく段階に入ったと思ってください。

さて、今日はいろいろな話題を書いていきます。

先週から今週にかけて、1年生のS.Hさんに、サーブの個人指導を続けています。これまでは指導を入れても、そう簡単には伸びない時期が続いていました。それは体が小さくて、100%がんばっても8m四方のコートが広すぎることが原因でした。また、まだまだ精神的にも幼くて、細かい指導を理解しきれないこともありました。しかし、もうすぐ2年生になろうというこの時期、この子の練習している様子を観察していると、(そろそろいけそうだな。)という手応えを感じました。この辺の判断基準はなく、これまでの小学生指導の経験から、いけそうだと感じたということです。案の定、毎回サーブの飛距離を伸ばし、あと少しでエンドラインからネットを越えるところまできました。S.Hさんには、「2月中にはサーブが入るようになるから、いっしょうけんめい練習しようね。」と動機付けしておきました。

次、チームにポジションごとの競争が起きるように、フォーメーションを組みました。
もっとも激しいポジション争いは、新チームのセッターポジションです。2人のうち、どちらのトスが、アタッカーにとって打ちやすいか、これを競い合ってもらいます。よけいなことをしないで、「ひまさえあればトス練習」をねばり強く続けた方が、正セッターのポジションをつかむでしょう。
次に新チームのバックレシーバーポジションを、固定しないようにしました。たくさんいる3,4年生のうち、競争に勝った誰かがポジションをつかみます。条件は、
(1)だれよりも走りまわって、ボールを落とさないこと
(2)やさしいアンダーパスでセッターにボールを入れられること 
(3)サービスエースを取れること
(4)チームの中で誰よりも動いていること
(5)コートの中のコーチ役となれること 
けっこう条件が多いです。なぜなら私のバレーボールは、バックの2人がチームリーダーになることを理想としているからです。

次に、表題の「目標を高くする意味」について説明します。
人間には「コンフォートゾーン」というものがあります。今いる快適な場所のことをコンフォートゾーンといいます。バレーボールのチームをひとりの人間だと仮定して考えると、今の矢口タートルズのコンフォートゾーンは、次のような位置になります。
「ミスをしてくれる相手なら、よい試合をすることができる。強いスパイクを決めなくても、相手がミスしてくれるからなんとなく勝てる。しかし、サーブやスパイクの攻撃力あるチームが相手だと、レシーブできないから10点取れたら合格。」
このようなイメージ空間がコンフォートゾーン(心の快適場所)となっています。そうすると、ここが快適なので、これまでにしたことのない、ものすごくよい試合をして大喜びすると、そのことに違和感が生じて、次の試合でダメダメになり、プラスマイナスで元の位置にもどってきます。
勉強に当てはめると、いつもはテスト80点平均の子が、100点をとって大喜びする。しかしコンフォートゾーンは80点なので、次のテストで60点をとって、無意識に80点のコンフォートゾーンに戻ろうとする。
このコンフォートゾーンのレベルを高くするために、チーム目標を最高レベルに設定したのです。
今日は最高レベル目標初日だったため、子供たちのコンフォートゾーンは、まだ高まってはいません。しかし、指導している私が、最高レベル目標に強くこだわって練習指導をしていくことで、次第に子供たちのコンフォートゾーンも高いレベルに動いていきます。こうした考え方の良いところは、コンフォートゾーンが動くことで、子供たちの練習する姿はこうなります。
「努力はいらない。なぜなら努力することが当たり前、普通になって、努力するという“遊び”になるから。努力は苦労ではなく、楽しみになるから。難しい練習をやりたくて仕方なくなるから。」
これが脳科学のバレーボールへの応用です。

Y.YさんやM.Yさんを前衛ブロッカーに抜擢してみたのも、このコンフォートゾーンの移動をさせてみたことになります。ブロッカーポジションをする前までは、練習にも遅れてきた子が、コンフォートゾーンを動かしたとたん、いかがですか。なんと練習開始20分前に体育館に現れたのですよ。こう書いていけば、大人の皆さまならもうお分かりでしょう。これがイノッチマジックなのです。

学級担任として応用しても同じことが起こります。
給食を投げ合って遊ぶような5年生、教室がカビだらけになる学級崩壊を見たことがありますか。これも6年生で私が担任して立て直しました。
いじめっ子が、いじめられっ子を、授業中に校舎内や校庭で、追いかけまわしている5年生、手が付けられなくて、副校長がはがいじめにしていて、この私が(これって体罰だよな・・・)と驚いた学年崩壊した5年生を見たことがありますか。これも6年生で担任し、卒業式では子供たちも保護者も「史上最高の卒業式だった」と言うくらいになりました。
5年生で担任いじめをして、担任が休職してしまい、学級内でたくさんのいじめも起きていた学年を見たことがありますか。私がやるしかないでしょうと校長具申して6年生で担任し、秋の学芸会では、私が何もしないで実行委員の相談に応えるだけで、台本から演出、舞台装置まで子供たちがやってしまった。
すべて指導する立場の私が、コンフォートゾーンを動かしたことによる、子供たちの潜在意識の変革です。言葉の世界を越えているので、パワーがものすごいのだろうと感じています。

2010年には、このコンフォートゾーンの理論と「U理論」というものをかけあわせて作り上げた、潜在意識の変革を利用した生活指導方法について、江東区の生活指導研究発表会で報告したこともあります。U理論もけっこう強力な思考方法です。興味ある方は分厚い書籍が出ていますから読んでみてください。
コメント ( 0 ) | Trackback (  )