地味鉄庵

鉄道趣味の果てしなく深い森の中にひっそりと (?) 佇む庵のようなブログです。

ハノイ懐旧鉄散歩 (18) モスラ罐よ永遠に!

2012-08-31 00:00:00 | ベトナムの鉄道


 約5ヶ月少々にわたり、思い出した頃にアップを続けて来たベトナム・ハノイ訪問記も今回が最終回。画像をレタッチして記憶を文字に表しながら、同時に頭の片隅に渦巻いていたのは、まさに竹のようにしなやかに変わりゆくベトナムの現在そのもの。そして、ハノイとホーチミン市における都市鉄道の建設にも象徴されるように、そんなベトナムと日本の関係はますます深化を続けており、折しも野田首相によって明確に示された海洋国家宣言のもと、日越関係は温暖で平等互恵を旨とする海洋国家関係の重要な一翼を構成して行くことになるのでしょう。
 その過程でのひとつのネックは、ベトナムが共産党体制であることそのものであり、経済発展とともにあたかも中国の縮小版のような様々な矛盾が生まれているわけですが、何のかの言ってどことなくユルく臨機応変さが目立つのもベトナム。気が付いてみたらより開かれた体制へと進み、政治社会のあり方も含めて日本と価値観を共有できる日を期待したいものです。あのビルマ (ミャンマー) も大胆に変化し続けているのですから、ベトナム共産党も社会の多元化に向けた思い切った決断が出来るはず……。勿論、民主化すれば日本との関係がよりハッピーになる、という楽観的図式を単純に描けるわけではないということは、C国やK国のグロテスクな現実が露骨に示すところですが、他の東南アジア諸国と本朝との関係に照らし、ベトナムはその心配は少ないでしょう。



 というわけで、鉄な話題においてプラスの波及効果がいっそう現れることを期待しつつ、ベトナムがらみで語られる新聞・ネット記事に日々注目する私だったりするのであります……。
 そんなことをいろいろと考えたハノイ初訪問記のシメは……モスラ罐D8Eリターンズ! (笑) 驚異の現役満鉄客車はもとより、世界各国の様々な技術や車両デザインが雲集し、あたかもベトナム近現代史そのものの如くカオスの度を極めているベトナム国鉄にあって、今から約10年前に近未来のベトナム国鉄を先取りするべく (?)、ドイツのICEあたりのデザインを真似て (?) 現れたD8Eは、何のかの言って前衛的であろうとしながらも今ひとつハズした風貌、そして驚くほどの華奢な性能であるという点で、まさに過渡期のベトナムを象徴するような車両となってしまっているわけですが、振り返ってみますと連載中一番反響が大きかったのがこの罐であるというのは必然なのか偶然なのか……(笑)。
 そんな、どう見てもモスラにしか見えないD8E、既に現役機はこの1両しかなく、恐らく統一鉄道のハイヴァン (海雲) 峠やラオカイ線など急勾配線区への入線は避けられていることに加え、ベトナム国鉄の現役罐では唯一、終点での方向転換を必要としていることから、どう考えても今後の新型DL増備に伴い先行きは長くないわけで……。果たして撮影から5ヶ月少々過ぎた現時点でも引き続き運用に入っているのか、全く知る由もありません。そこで、当ブログの記事に刺激されて訪問されましても、この罐に出逢えるか否か一切保証出来ませんし (笑)、私自身にとっても、こんな罐に出逢えたこと自体が未だに白昼夢のように思えるのです……(^^;)。
 さて、これから何年後にハノイを再訪することになるのか、現時点では想像もつきませんが、ベトナムのさらなる発展と日本技術による鉄道の大胆なイノベーションを祈りつつも、一方でボロく慕わしい既存の鉄道シーンの消失を寂しく思うという、何とも矛盾した心理が今後もしばらく続くことになるでしょう (^^;)。本シリーズを長らくご笑覧頂き誠にありがとうございました m(_ _)m

ハノイ懐旧鉄散歩 (17) 緑皮客車

2012-08-30 00:00:00 | ベトナムの鉄道


 随分小粒な電源車と行商客車がのんびり入換中~。



 時代がかったトラス棒つき行商客車がそれなりに現存。しかも検査ホヤホヤ!



 こちらも行商客車ですが、台車が貨車用に交換されているシロモノ……。



 ラオカイ線の鈍行に連結されると思しき緑皮空調軟座車。ザーラム工場製。

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 ホーチミン市で日本技術による地下鉄の工事がいよいよ本格化し、数年以内の開通を目指すということで、そろそろこの春のベトナム訪問の記録も締めくくっておかなければなりません。ジャカルタの話題もありますし……(^^;)。
 今回のベトナム初訪問レポートは、満鉄客車を除けばもっぱら罐を中心としてご紹介してきましたが (まぁ罐が引く以上そうならざるを得ませんなぁ~^^;)、客車も出来るだけ記録するように努めました。恐ろしく時代がかった行商客車をはじめ、来歴がよく分からないものの実に濃厚な風貌の持ち主がゴロゴロしていますので……(*^^*)。その画像の多くは既に、社会主義的緑皮車を好む方が多く出入りする《中国鉄道倶楽部わいわいフォーラム》に貼らせて頂いたのですが、まぁ多少はウチのところにもと思いまして、申し訳程度に未公開だったカットをレタッチしてみました。果たしてこのような、とても21世紀の新興国とは思えないような光景が、いつまで首都近郊の駅で見られることやら……。

ハノイ懐旧鉄散歩 (16) D19Eの海防急行

2012-08-04 00:00:00 | ベトナムの鉄道


 東急や京阪のベトナム事業計画や、三菱リージョナルジェットのベトナム航空納入契約など、日本とベトナムとの経済関係強化は目覚ましいばかりですが、忘れてはいかんのは……ベトナムも一応共産党政権であり、猛スピードでの経済発展のために一般庶民そっちのけの開発に走りやすいという体質がないわけではないことでしょうか。キタイ国で地方の党官僚が経済発展(&自分の業績アップ) のために日本の製紙会社に排水面での便宜を図ったら、環境破壊を恐れた民衆が「これだから共産党地方幹部は許せぬ!」とばかりに地元政府に乱入してメチャクチャになったという事件が起こったばかりですので、何とかベトナムではこのようなことのなきよう(とりわけ良好な日越関係は中共を抑え込むための「核心利益」ですからなぁ~)、本朝の関係者の皆様におかれましても周到万全を期して頂きたいものだ……と、どーしよーもなくチョロい趣味ブログの管理人ながらも思う次第です。
 というわけで、ジャカルタ行きが迫る前に、春のベトナム・ハノイネタは片付けておきましょう (^^;)。撮った罐を、形式を示す数字の順番にご紹介してきましたが、そのシリーズの最終回としてD19Eをアップしてみましょう~。この罐は、中国国鉄に詳しい方でしたら一目瞭然……大量に製造された超スタンダード罐である東風4型のメーターゲージ用ダウンスペック版としか言い様のない風貌と性能であり、2003年以降中国南車・資陽工場 (湖南省) で量産され、「ドイモイ (刷新=ベトナム版改革開放)」という愛称とともに主要旅客・貨物列車の先頭に立っています。



 今回の訪問では、標準軌・ハロン線の満鉄客車と並んで、ハロンへ向かう往路の序幕としてハノイ→ハイフォン (海防) 間のメーターゲージ急行列車でも乗り鉄を楽しんだのですが、このハイフォン急行の本務機として活躍しているのもドイモイ・D19Eであります。
 ハノイ~ハイフォン間で毎日4往復運転されている旅客列車は、かつてはそれなりに賑わったのかも知れませんが、今日ではデラックスな冷房バスの頻繁運転に押されて些か苦戦中。そこで、現在では途中の小駅は飛ばし、ハイズオン (海陽) など数駅にしか停車しない急行列車 (所要約2時間) として運転されているほか、サービスアップ・多様化策の一環として、車両運行会社の参入が認められている結果、国鉄が所轄するダークグリーンの硬座車だけでなく、
 *エアコン付き軟座車1両 
 *エアコン付き・クッション付きボックスシート車 (セミ軟座車) 1両
 *エアコン付き・木製シートの硬座車1両
……といった車両が連結され、客は気分と支払い能力によって、等級が上がるごとに1万ドンほどプラスされる切符を購入して乗り込むことになります。最も豪華なエアコン軟座車は確か10万ドンもせず (切符は回収……)、日本円で約500円未満といったところですが、最近は結構物価が上がり、ハノイ界隈ではフォー (米粉うどん) 1杯3万ドンは当たり前という有様ですので、恐らく軟座車に乗るヤツは多いだろうなぁ……と思いつつ夜明け前のハノイB駅で切符を購入したところ、果たせるかな、発車時点では軟座車の乗車率が一番高くなっていました。それでも1両あたりの客は20名程度……。硬座車に至っては誰も乗っていない車両もあり、これは何とも競争力の低下が心配……(-_-;)。もっとも、午前中ハノイに到着する列車は結構大入りでしたので、まぁ杞憂なのかも知れませんが。
 ハノイB駅を6時に発車したハイフォン行は、まず旧市街のヘロヘロ線路を経てゆっくりと煉瓦積みの高架へと上り、他の3本のハイフォン行始発駅となっているロンビエン (龍編) を通過~(アサイチの便のみハノイB駅発ですので注意! ハノイB駅は、線路・ホームこそハノイ駅と同じですが、方面の違いゆえ統一鉄道ハノイ駅と別の駅舎となっています)。そしてロンビエン橋を最徐行で渡り、ザーラム (嘉林) 駅で中国・南寧から到着したばかりの25K紅皮車と御対面~。その後はハイフォンまで直線気味の、ベトナムで最も整備された線路を時速80~90kmほどで快走して行きます♪ 30~40分も走ると開発区ばかりの風景が途絶え、田植えを終えたばかりの農村の風景が眼に沁みます♪ ハイフォンに近づきますと、当たり前ですが再び都市的景観が現れ、踏切には膨大な数のバイクが (汗)。やがて旧市街の中をゴトゴトと縫って走り、白亜の洋館風駅舎が素晴らしいハイフォン駅に到着! 
 こんな感じで、恐らくハノイで最もお手軽に楽しめるハイフォン往復鉄道の旅、おすすめです☆ 但し……軟座車は韓国ムグンファのお古のようなリクライニングシートを使用しそこそこ快適ですが、走行中は頭上の乗客暇つぶしサービス用ビデオがやかましいですので念のため……(-_-;)。

ハノイ懐旧鉄散歩 (15) インド罐D13E

2012-07-11 00:00:00 | ベトナムの鉄道


 ベトナムを訪れて緑皮客車にすっかりイチコロとなり、緑皮インスパイアな模型をシコシコと作っている間に、すっかり撮り鉄記録の続きをアップするのを忘れていました (^^;)。しかも、ベトナム国鉄の車両は社会主義臭がプンプン漂って来る車両だけではなく、まさにベトナムが置かれた国際政治的環境を象徴するかのように、様々な国を出自とする車両がてんこ盛りということで……今回はインド製の罐・D13Eをアップしてみましょう。
 この罐、パッと見でアメ罐のような(?)風貌でありながら、横から見ると細長く凸型なシルエットであり、しかも先頭のカバー部分の背が非常に高いこと、加えて3軸動力台車の形状が如何にも鋳鉄の巨大な塊という雰囲気であることから、眼にするとちょっとした重量級の迫力に感動せずにはいられません (*^^*)。しかし訪問前の下調べの段階では、旅客列車を牽引しているシーンで眼にすることはなかったため、撮影中にイキナリ単機で姿を現すまで完全ノーマークでした (笑)。



 とはいえ、こうして青と白の塗装が鮮烈な重量級釜 (重量級といっても、あくまでベトナム国鉄の他のメーターゲージ車両と比較しての話です) を知ってしまい、さらにあれこれ調べた結果インドのメーターゲージ用DLとほとんど同じものを2001年から02年にかけて輸入したものであることが分かりますと、こんな罐がゴロゴロ走っているインドにも行ってみたい……という夢が膨らみます (鉄道は基本的に撮影禁止とのことですが、ネットでは最近多数見かけますので、駅舎の構造やジャンクションの様子がよく分かるような画像を撮らなければお目こぼしなのでしょうか?)。
 ちなみにD13E、ネットで旅客列車牽引シーンを全く見かけなかったこと、そして今回の訪問時でも旅客列車の先頭には立っていなかったことから、その重量級ぶり(最高速度も100km/h止まり)を活かして、もっぱら貨物列車の牽引に従事しているようです。したがって、ザーラム~ロンビエン~ハノイ間では基本的に姿を現しません。もし眼にしたいということであれば、ザーラムの北にあるハイフォン方面からイェンビエン方面に向かう貨物用短絡線よりも北、あるいはハノイの南にあるザップバット[甲八]駅 (貨物ターミナルあり)から南、そしてハノイ市街を大きく西に迂回する貨物用高架線などへどうぞ~。

ハノイ懐旧鉄散歩 (14) 四角チェコ罐D12E

2012-06-25 00:00:00 | ベトナムの鉄道


 先日神保町の書泉に行った際、ふと眼に飛び込んできたトーマスクックのヨーロッパ鉄道時刻表の最新号……今すぐ欧州旅行を計画しているわけでもないのに、いつもお世話になっている「ぱれっと」様の東欧鉄遠征記を日々楽しみにしていることもあり、最近の東欧エリアの長距離列車網はどうなっているのだろうか?と思いまして手に取ったところ、ななんと何と!いつの間にか非欧州を網羅するOverseas Timetableの機能の一部もEuropean Timetableに掲載されているではありませんか!(^O^) 都内の大手洋書店でのOverseas Timetableの扱いがなくなって久しく、個人的に英国も12年前に訪れたきりですので (汗)、内容そのものは到底最新の時刻をフォローしているとは言えないものの、各国における主要な特急・急行列車の運行形態を大まかに知るのに極めて便利な内容がこうしてEuropean Timetableに載っているというのは嬉しい話です♪ もっとも、その分だけOveseas Timetableの存在が、諸外国における鉄道の凋落やネットの発達によって揺らいでいることを示しているのかも知れませんが……(-_-;)。
 というわけで、問答無用でゲットした後、神保町駅ですぐにやって来た8614F「伊豆のなつ」に揺られつつ、まずはアジア諸国の主要列車をチェックしてみたところ、ベトナムについては如何せん全国ひっくるめても極めて列車の数が少ないため、ハノイ近郊の区間列車やハロン線列車を除く全ての列車が掲載されていました (笑)。そこで、しばらく間が開いてしまったベトナムシリーズ、今回は中越国際輸送の一端を辛うじて担っている北京西~ハノイ「直通」列車の牽引機として抜擢されている赤い罐・D12Eをアップしてみましょう。



 如何にも東欧的で計画経済的な雰囲気が漂って来るこのDL、案の定チェコ製ということのようですが、性能的に安定し使いやすいためか、ベトナム国鉄の画像をネットで見ていると結構出演回数が多いような気がします。恐らくは、1990年代に中国製のドイモイ型 (D19E) が大挙入線するまで、ベトナム国鉄の最有力車種だったのでしょう。その栄光は未だ失われていないようで、ハノイ以北の区間ではラオカイ線の夜行豪華寝台列車(高原の避暑地へ向かう外国人観光客を乗せるため、複数の旅行会社が独自に車両を用意して連結……今回は乗っても撮ってもいないのですが ^^;)に登用されている模様であるほか、上述の通り中越国際列車「M1/2」(中国側の列車番号はT5/6)の本務機となっています。
 もっとも、北京西~ハノイ間の国際列車といっても、現実には客車がそのまま直通するのは不可能となっています。中国側の標準軌・25m級客車は、標準軌が尽きるザーラム駅からロンビエン橋を渡ってハノイ駅までの区間に入線出来ませんし、ベトナム国鉄のメーターゲージ用17~18m級客車では、恐らく国境で台車を履き替えても中国国鉄の連結器高etc..に全く対応出来ないでしょう。しかも、中国国鉄の特快(特急)は160km/h運転が日常化している中、ザーラム工場製のベトナム国鉄客車がそのようなハイスペックに対応出来るとは到底思えません (汗)。
 そこで、昔からこの国際列車は名義のみ「国際」であり、実際にはベトナム側国境のドンダン(同登)で乗り換えることになっているのですが、今や北京~ハノイ間の移動はヒマな旅行者ではない限り飛行機が常識であり、中国側途中駅とハノイとの間の往来もそれほど需要があるわけではないでしょうから(ベトナムに隣接する広西チワン族自治区・南寧とハノイの間は、別に中国国鉄24G客車による直通国際列車あり)、結果として北京西~ハノイ間の国際列車は客車1両のみというお寒い状況に……。ベトナム側ではトリコロールカラー・4人部屋の空調軟臥車が、ベトナム国章を車体に掲げ、辛うじて毎週2往復しているのが実情です。ハロン線満鉄客車の旅を敢行した際、ハノイ側終点イェンビエン(安園)の手前でこの国際列車とすれ違ったのですが、DL1両に客車1両という姿で漆黒を切り裂いて突っ走る光景は……マニアックを通り越して侘びしさの限りであったのは否めません。
 この国際列車の運行スケジュールは、毎週火曜・土曜の深夜にドンダン発→朝ハノイ着、毎週火曜・木曜の夜にハノイ発→深夜ドンダン着となっていますので、木~金の一往復はさておき、火曜のドンダン発の運行のためには月曜日のうちにザーラムからドンダンに編成を送り込み、火曜のドンダン着の後は水曜日にザーラムに回送しなければなりません。この回送にあたっては、国際列車と同じスジは用いられず、通常のハノイ(ロンビエン)~ドンダン間の列車に無動で連結するというかたちをとります。そこで、モスラ罐が牽引する午後のドンダン行列車を月曜日に撮影したところ、尻には国際列車用軟臥車とD12Eが連結されており、一本の列車で二度美味しいのみならず、通常の国際列車では楽しめない長大デコボコ編成をも味わうことが出来たのでした♪ (*^O^*) 貨車と国章つき空調軟臥車が連結されるなどという光景は、ロシア・モンゴル・中国・北朝鮮のいずれでもほとんどお目にかかれないでしょうが、ハノイでは毎週月曜日にこうして拝めるのです……(^^;)。