インドネシアの高速鉄道をめぐって物議を醸した中国高速鉄道は、何だかんだで膨大に生産余力を抱えた国有企業を救済するためもあって約数年間で凄まじく距離を伸ばし、今や世界他国の高速鉄道の総距離を超える路線網を一国で擁するに至ったと豪語するだけではなく (このたび宝鶏~蘭州間が開通のはこびとなり、かつて3泊4日を要するのが当たり前だった北京~ウルムチ間があっという間に)、まさに次の超大国としての誇りをかきたてる国威発揚の道具にもなっているものです。そんな中国高速鉄道、温州での大事故(否、その後の生き埋めの方がもっと大事件と思われ)を最後に目立った事故はなく、全く当てにならない国内航空(これに噴飯しない人は神か仏か)に愛想を尽かせた多くの客を引き寄せて安定的に運営されているのは客観的にみて評価に値するでしょう。
そんな中国高速鉄道にあって最大の弱みは、「完全に自主的な知的財産権を擁する国産」とアピールして愛国心に訴えれば訴えるほど、日独仏等の車両メーカーから設計思想や部品を供与されたことが明らかになり、「パクリ」の誹り合戦によって誰もが嫌な思いをするところにあったわけです。最初から普通に二国間・多国籍企業協力で実現したと宣伝すれば、パクリの誹りは全くなく、むしろグローバリズムの担い手としての中国の好印象を国内外にアピールし、日中関係の改善強化も出来たはず。そうならなかったのは、中共の心の中に潜む悪い病気のためであるとしか思えませんな。(外交部長の王毅氏が事あるごとに日本に向かって「お宅の心の病を自ら治せ」と言っているわけですが、その病気を一番患っているのは中共自身 w)。
そこで、中国鉄路総公司と中国中車にとっての引き続く課題は、「完全な知的財産権」とやらの中におけるパクリ要素を減らしつづけ、見果てぬ「中華之星」の理想を実現することにあるわけですが、このたび「一定のブレイクスルー」があったようです。具体的には、改めて「完全に知的財産権を擁する、新世代の高速鉄道車両」として、「H」を付けない「CR400AF」「CR400BF」が登場し、総称して「和諧号」ではなく「復興号」というネーミングになるようです (CR400AFについては、形態からして「藍海豚号 (青いイルカ)」という愛称もあるとか)。「H」は「High Speed」だけでなく「和諧 Hexie ほぉぇーしえ」のHも兼ねているでしょうから、これを外して「復興 Fuxing ふーしん (「ふ」は上の歯を下唇につけながら)」と「Fast」のFを付けるということでしょうか?
(※今のところ車体には「復興号」のロゴは貼られていないようですが、「和諧」と比べて「復興」の簡体字は簡略化甚だしく相当ダサいため、何も貼られない可能性もあります。あるいは中共にとっての禁じ手で正体字にするか? →17時補足:やっぱり簡体字。ダサダサ!)
ちなみに「復興号」と書きますと、普通の愛台湾な日本人鉄ヲタであれば、客レの復興号を思い出すのは、誰しも異論のないところでしょう。
しかしそれでは、中国からは怒られてしまいます w。
「それは所詮、偉大な党と国家の歴史と現在を理解しようとせず、祖国統一の趨勢を読めずして、分裂主義台湾のことばかりもてはやす島国小日本の偏狭な見方アル! 「復興」とは則ち、《中華民族の偉大な復興》という、20世紀以来全ての中国人民の渇望、そして習近平同志が力強く掲げる《中国夢》の目指す方向アル! いっぽう、「和諧」は胡錦濤時代のスローガンゆえ、もう古いアル。習近平同志が間もなく9月の党大会で領導核心として再選されるという盛世の趨勢を、「必ずや名を正さんか!」の精神でいっそう適切に車両の名称にも反映させ、「与時倶進 (時代とともに進む)」の精神で大国鉄道の風格を明らかにするためも、「復興号」にするのが望ましいアル!」
(※台湾で国民党独裁時代に「復興号」というネーミングが出来たのも、まぁ大体こういう意味なのですが[蒋介石は中共を打倒して大陸を取り戻し、中国を世界に冠たる国家にする気満々]、いつの間にか台湾ではキョ光も復興も本来の意味を失って、単なる列車名になってしまったのでした)
もっとも、画像をよく見ると、AF・BFそれぞれに、やはり日本とドイツの亡霊が漂っているように思えるのは、私が愛中華度ゼロの小日本鬼子だからでしょうか? まぁ技術面での細かい真相はいずれ明らかになるでしょう。
ともあれ、そんな中国の技術的動向や「一帯一路」の方向性を無視して、日本の対外鉄道協力を論じ得ない御時世であるわけですが、私の脳味噌の中の中国国鉄は緑皮車で止まっています (笑)。そこで、今はなき大台線 (京門線) ローカル列車で使用されていた、1980年代末~90年代初頭の北京=上海直達特快のなれの果てである空調YZ22の未アップ画像を貼っておくことにします (勿論、空調は壊れています。2006年8月撮影)。