遺憾な話は前回の程度にして、車両・列車をめぐる各論をダラダラと始める前に、全体的な印象を備忘録総論としてまとめておきたいと思います。
*2014年の1年間に205系を約300両導入したことで、鉄道風景は一変。……日本中古冷房車は、今や例外なくKAI新番号が付番されており、電車の場合は制御車・電動車・付随車の違いに関係なく、ジャカルタに到着した順に、編成の前から後ろまで通し番号を付番するようになっています (京急みたいな感じ)。そこで、年ごとにせいぜい数十両の輸入であることが、この新ナンバーから分かるのですが、2014年に導入された「K1 1 14 ×××」の場合は、確か296という番号を見かけた次第……。この結果、数年前までは非冷房エコノミの方が多数であったはずの線路上を、205系ばかりが怒濤のようにやって来るという、かつては想像すらしなかった光景が展開されています。
*もっとも、冷房車が300両近く入り、いっぽう都営6000・メトロ5000・東急8000/8500の離脱車(在デポック)は80~90両ほどと推定されますので、差し引き約200両の純増となっています。それに対応して、恐らく変電設備も強化されたはず。そこで、運行本数が全体として非常に多くなり、中央~ボゴール線、中央~ブカシ線、環状線ドゥリ~マンガライ間、スルポン線タナアバン~スルポン間では、時刻表を見なくても大して困らないほど頻繁に電車が来るようになりました。初めて訪れた2009年、中央~ボゴール線冷房急行は日中30~60分間隔、ブカシ線冷房急行は1~2時間間隔、各路線の非冷房エコノミが15~60分間隔と超バラバラテキトーダイヤ、環状線も来ないときは全然来ず退屈の極みであったことを思い出しますと、実に隔世の感があります。
*運転系統ごとの車種の現状は以下の通りとなっています。
中央~ボゴール線……基本的に埼京205系10連の天下。ただ、それだけではまかない切れていないため、それ以外の車種の8連が来ることもありますが、体感レベルではかなりの偶然・奇跡と思った方が良いかも知れません。
環状~ボゴール線……8連限定のため、東急・メトロ東西線&東葉高速・都営6000 (風前の灯火)・メトロ千代田線&常磐緩行線……といった「ジャカルタお馴染みの車両」がやって来ます。勿論8連の205系が来ることもあります。如何にもジャカルタの鉄道シーンらしいカヲスを味わいたければ、この系統に着目するのがベスト。
中央~ブカシ線……基本的に横浜線205系8連(一部、8連化された埼京編成)の天下。たまにメトロ6000・7000などがやって来ることもありますが、せいぜい1運用程度。
マンガライ~ドゥリ間のフィーダ……午前10時過ぎまでと午後3時前後から約30分間隔で運転され、2運用あります。1本はブキッドゥリ所属編成のいずれかで、「日替わり・シェフの気まぐれコース」状態ですので、凄まじい衝撃的展開もあり得ます (謎)。もう1本はKFWの指定席。
ジャカルタコタ~カンプンバンダン間のフィーダ……KFW4+4=8連の指定席。いつ見てもガラ空きで、勿体なさの極みです……。
タンゲラン線とスルポン線……余程のことがない限り、ブキッドゥリ所属のメトロ6000・7000・05・JR205系で運転されます (203は現在ブキッドゥリ配置ではないようで、今回は来ませんでした)。
*正面にボード式の行先表示を掲げるようになり、何処行きか一発でわかるようになったのは有り難い限り。路線ごとに色も異なります。中央&ボゴール線及び環状線直通は赤。ブカシ線は青。スルポン線は黄緑。タンゲラン線は濃いオレンジ。
*放送も充実。もともと駅構内の放送は、様々な表示の不足を補って充実していましたが、車内放送を丁寧に実施するようになったのは特筆されます。挨拶・行先・次駅・乗換案内・ドア開閉などなど。恐らく日本の車内放送を参考にしていると思われ、より充実した放送を目指して乗務員間で競争しているようでもあり、インドネシア語がチンプンカンプンな人間でも「これは名調子ではないか」と思わせられます。
*昨年まで、編成ごとにクーラーの効き具合がバラバラでしたが、補助電源安定化の努力 (?) が実って、今ではどの編成も基本的に良くクーラーが効いています。しかしそれ以上に、クーラーキンキンな電車の本数が増える→便利になったというウワサが広がる→より多くの客が電車利用通勤に切り替える→本数増は焼け石に水という状態が続いています。また、とりわけ女性専用車を待つ女性の数がハンパではありません。それでも、ドアを何が何でも閉めるため、途中駅で遅延が拡大……。ボゴール線ラッシュ時のピークに10分以上間隔が開いて、カメラを構えるこちらが心配していると、案の定、205系10連が窓全開で到着……車内は超パンパン。南武線6連を2本つないで12連にするのは、実は急務であると思われます。
*客車の塗装変更に伴う混色まつり、絶賛開催中! 各客車区・路線の目玉列車から優先的に塗り替えているようですが、既にそうではない列車にも波及し、感覚的には3~4割が塗り変わっています (?!)。
*COMMETマルチカードは、記念券の頻繁な発行などもあり図柄が充実し、かなり普及しているように感じられました。それと反比例して窓口利用は減少。まぁシングルトリップ券はデポジットを取られて面倒くさいですから。
*205系の車内には大型マルチビジョンの設置が進み、恐らく編成ごとの契約で放送がぼちぼち始まっています(まだ使っていない編成の方が多い)。但し、動画を流している編成に当たってしまいますと、日本とは異なり音声を消さないため、折角の205系の走行音がぁ……(泣)。
*スルポン=バンテン線改良プロジェクト激しく進行中。最近橋上駅舎化されたパルメラ駅に続き、クバヨラン、パルンパンジャン、マジャ駅で工事進行中。マジャ駅は高床ホームも建設中。また、マジャ~ランカスビトゥン間の電化工事終了。いつ通電されて電車試運転が始まってもおかしくなく、スルポン=バンテン線鈍行客レの終焉は間もない?! (ランカス再訪レポートはなるべく早期にアップします。今、ランカス鈍行がアツい!)
*他の駅のエキナカ施策や改造工事も進行中。エキナカで言えば、主要駅にコンビニやKFC・スタバ・ダンキンドーナツが入っているのみならず、ボジョングデなどベッドタウンの駅にパン屋(Roti-O)が進出。個人的には、システマティックな駅そばならぬ駅ミーアヤム屋チェーンの普及を願っているのですが……。いっぽう、2009年に初訪問した際には荒廃の極みであった中央線高架駅のエスカレータにつきましては、チキニやジュアンダを皮切りに更新が進んでいましたが、ついに下町ジャヤカルタ駅にも工事が波及。あと、本数増加と利用客増でますます超大賑わいのマンガライ駅では地下道建設工事が進み、結構掘られていますが、出水がひどくなかなか完成には至らない模様。穴を掘った上には薄い鉄板が渡され、その上を多くの利用客が歩き、バコンバコンと大音量が響き渡っているわけですが (汗)、人が鉄板の上に多く乗り過ぎて底が抜け落下事故が起こるのではないか……と思うほどTidak Apa Apaな雰囲気です (>_<)。
ともあれまぁ、私が初めて訪れた2009年8月におけるジャカルタの鉄道シーンを思い出しますと、本当に天地の差、雲泥の差だと思います。これから先の数年間、どのように変貌して行くのか、半分ドキドキしつつ楽しみにしたいところです。