KCJ (KAI Commuter JABODETABEK) の路線図をつらつら眺めるに、北端のジャカルタ・コタ、ならびに環状東線のクマヨランから分かれて、港町タンジュンプリオクに至る「ちょっとした支線」がありますが、本来これはタンジュンプリオク港に入港した客船との連絡、あるいはタンジュンプリオク港を出入りする貨物輸送のための超重要路線として蘭印時代に建設されたものです。そんな歴史的事実を反映するかの如く、ジャカルタ・コタとクマヨランの双方から複線が延びており、アンチョールで合流してからタンジュンプリオクまでは複々線となっています。しかしながら、タンジュンプリオクという場所は、港湾があることを除けばただの場末……。他の島や外国との往来が航空機主体となり、貨物輸送も道路交通が主体となるにつれ、タンジュンプリオク駅は放置されるに至ってしまったのでした。
ところが2000年代に入り、ジャカルタの交通事情が劇的に悪化する中、近距離輸送・長距離列車の折り返し・貨物輸送のいずれにおいてもタンジュンプリオク線の機能を活かそうという機運が生じ、ついに2009年4月にはブカシ方面からの電車が運行されるようになり、当ブログでも2011年の訪問時に都営6000系「猫バス」(6151F) に乗りタンジュンプリオクに至った話を載せた次第です。しかし……そもそも毎日4往復程度しか走らない中、環状東線内からタンジュンプリオクへの人の流動などタカが知れており、乗れば必ず空気輸送……(滝汗)。2011年12月1日のダイヤ改正で再びタンジュンプリオク行の電車は運休となり、何だかなぁ~という気分を禁じ得なかったのでした。「港湾地帯で一日に数本しか電車を走らせないということであれば誰も客は寄ってこない」というのは、ヤンゴンの臨港線も全く同じですな……。そして、タンジュンプリオク線復活の切り札は、アンコタ (ワゴン型ミニバス) が頻発するジャカルタ・コタ~タンジュンプリオク間の再開に他ならなかったわけですが、カンプンバンダン駅の前後における長年の運休中の荒廃がひどかったため、作業は遅々として進まず、カンプンバンダン駅で乗降するたびに草ボーボーのタンジュンプリオク線を眺めて嘆息するばかりでした。「ちゃんと運転すりゃぁ~客が増えるのにさ……」と。
というわけで、昨年8月の訪問後からコタ~タンジュンプリオク間の復活に向けた作業が進み、今年に入ってようやく営業を再開したとの報には、心からの快哉を覚えまして、この路線で細々と営業運転を続けるKFWに乗ることは、今回の訪問のマスト事項となったのでした (笑)。
活動2日目の10時半、マンガライにて落花生。様と合流しまして、205系に揺られてコタ駅に着きますと、間もなく11時40分発のタンジュンプリオク行が入線~。コタ駅は周囲に、オランダが残し1998年のジャカルタ暴動で荒廃した旧市街があるだけの侘しいところですが、最近は少しずつ観光地としての再開発が進みつつあり、土日ともなれば他の娯楽が少ないジャカルタの人々が暇つぶしに大挙して押し寄せ、ドーム状のコタ駅はてんやわんやの大賑わい状態! とはいえタンジュンプリオク行きは現在のところ復活直後の慣らし運転で本数も少ないため、「この時間に来れば電車はある」と知っている沿線客だけが利用しているようで、4両編成の1両あたり10人も乗っていません (なお、女性専用車の設定はありません)。
そしていよいよ発車! たまたまカンプンバンダン行の環状線フィーダ列車と同時発車となり、どちらも超ガラ空きのKFW4連がコタ駅の広大な構内で並走するという珍景に大興奮! (笑) その後タンジュンプリオク行は、新たに立ち始めたスラム街を左に眺めつつゆっくりと勾配を登り、客車区の留置車を右下方に見下ろしつつ、やがてカンプンバンダン駅の高架に到着しました! をを……一時は線路内に木が生えていたカンプンバンダン高架に、こうして何事もなく電車が止まるとは!! そして発車後すぐ、ジャカルタで唯一の鉄道立体交差を上から見下ろすとともに、落花生。様がスマフォを取り出し、謹製の「カンプンバンダン駅超ミニミニモジュール」の画像を見せて下さいました (笑)。いやぁ~粋すぎる話です!!
その後はしばらく、スラム街と高速道路に挟まれた、まるで南海汐見橋線のような雰囲気の区間をチンタラ走り、やがてアンチョールに到着! アンチョールと言えば、かつて2010年頃まで「アンチョール・ドリームランド」への観光客を当て込んだ「アンチョール急行」がブカシとボゴールから土日運行されていましたが、駅とドリームランドの間の連絡が悪く、宣伝も大してなされていなかったためか、登場直後を除けばいつも超ガラガラ。私がクマヨランにて、当時まだ単線復活状態だったタンジュンプリオク線に突っ込んできた黄帯東急8604Fや紺帯都営6121Fに興奮したときも、客はマジでスカスカだったものです……。しかしそんなアンチョール駅も、ジャカルタ・コタ方面とクマヨラン方面のいずれもホームが整備されています。落花生。様は既に一度、ジャカルタ・コタからタンジュンプリオクまでの運行再開直後に乗られたとのことですが、アンチョールは通過であったため、今回アンチョールに停まったこと自体がイキナリの意外事ということで、写真をバシバシ撮っておられました。
アンチョールを発車すると、やがて草深い複々線をかき分けながら進み、周りにちょっとしたカンプン(下町)が密集すると、壮麗なドーム駅舎のタンジュンプリオク駅に到着! スマフォでの撮影はOKながらも一眼レフでの撮影は不可能とのことですので、既に猫バスでの訪問時に撮ったことがある私はドームを見るだけにして、アールデコ調 (?) のタイルが見事なトイレで用を足した後、今乗って来たKFWを撮ることにしました。かつてメトロ6000系の第一陣が長期間タンジュンプリオク駅に留置されていた頃、ポイントが密集する駅の西側は一大売春ゾーンとなっており、夜になると線路脇の掘っ立て小屋には派手な明かりが灯り、朝になるとコンドームやその袋が散乱していたそうですが (滝汗)、今や環境浄化が進んでそのような雰囲気はなく、脇のカンプンの人々も適度に愛想笑いしてくれます。
そんな中で待つことしばし、こんな感じで久しぶりにKFWを激写したのですが (今や運用はカンプンバンダン・フィーダとタンジュンプリオク線の4連のみ)、最も海側の線路=ジャカルタ方面上り線は半分土に埋まったような状態で、線路も大してこすられていないため、当初はてっきり「当面下り線を単線として使っているのだろうか」と思い、上り線に立って待ち構えていたのでした。ところが何と!KFWは発車後そのまま直進し、死んでいると思っていた上り線に突っ込んで来ましたので、落花生。様ともども超ビックリ!! ポイントからかなり離れた位置で待っていて良かった……(^^;
とまぁこんな感じで、復活タンジュンプリオク線 (コタ方面) の初乗車&撮影を果たしたのですが、並行するトランスジャカルタは本数が少なくて使えず、アンコタは狭すぎて辛いため、是非今後電車の運行が安定し、もっと本数が増えることを祈念しています(そのうち30分間隔にするとのことですが、一定の客が増えれば、カンプンバンダン・フィーダと統合して20分間隔でも良いはず。なお、カンプンバンダン・フィーダは、日中見かけるとスッカスカですが、朝夕はスルポン線やタンゲラン線とコタの間を利用する客でかなり混み合います)。そして本数が増えれば、KFWだけでは足りなくなるというわけで、編成替えで生じた205系4連がタンジュンプリオク線に入らないものかと妄想しています。