地味鉄庵

鉄道趣味の果てしなく深い森の中にひっそりと (?) 佇む庵のようなブログです。

福島乗物記2019春 (5) 湯野駅の神奈中

2019-04-29 12:00:00 | 濃いぃ路線バス&車両


 花水坂駅南の鉄橋で飯坂線1000系の撮影を楽しんだ後は、徒歩で飯坂温泉に向かい、川向かいの昔ながらの温泉街の一角にあるバス停「湯野駅」に向かいました。ここから一日に3~4便だけ出ている福島駅行きのバスが、前日奥州街道を歩いてたどり着いた伊達駅界隈を通るためですが、勘の良い方はここまで読んでお分かりの通り、このルートはかつての軌道線(飯坂東線)のルートであり、それゆえ既に飯坂温泉へ向かう公共交通利用観光客の足としての機能は失いつつも、依然としてJTBの時刻表には載っているというシロモノです。また、そもそも軌道線は奥州街道の旧道筋をそのまま利用して敷設されており、前日福島の中心街からひたすら狭い旧道をたどりながら「ここを昭和40年代まで、細~いツラ構えの電車が10数分間隔で走っていたなんてアツすぎるだろオイ……」と思っていたのでした。福島競馬場の南の直線路とか、瀬上宿から伊達長岡にかけての街並みとか、軌道線が走っていた頃と余り変わらないと思われる街並みだったりしますし……。



 というわけで、温泉街ともシャッター街ともつかない古い家並みが途中僅かに途切れたところに、往年の軌道線の終点「湯野駅」がありますが、かつてあった駅舎は今や跡形もなく、未舗装の空間の入口にポツンとバス停のポールが立っているだけです。それはそれで何とも侘び寂びの極みでありますが、さらに奥に進むと驚喜の光景が待っていました……♡ 朝イチの福島駅東口行きが既にドアを開き、客がやって来るのを待っておりましたが、そのバスは何と元神奈中のエアロスター!! 前日の夕方見かけた湯野駅行きはエルガミオであったことに心底ガッカリし、鉄橋から飯坂温泉駅界隈に来るあいだも「折角往年の軌道線区間を乗るというのにエルガミオかよ……せめてエアロミディで来ないものか」と思っていましたので、ここに来て一発大逆転! エアロスターのゆったりとしたヲタシートで、伊達長岡まで短時間ながらも前面展望を楽しめるとは、何というラッキーなことでしょう……。
 そして湯野駅では、飯坂温泉始発で山奥へと分け入る路線に使われるエアロミディもスタンバイしていましたが、うち一台は元神奈中♪ 何とも言えない光景です……(^O^)。
 やがて運転手氏が現れて出発となりましたが、湯野駅発車時点では他の客はゼロ。そのこと自体、この路線が飯坂温泉訪問客輸送の役目を失って久しいことの現れなのでしょう……。その後、途中の停留所で数人の客を拾ったのち、東北本線を陸橋で越え、往年のデルタ線の遺構である伊達駅入口交差点を過ぎ、伊達長岡で下車。短時間ながらも極めて濃厚であった軌道線代替バス (?) のひとときの余韻に浸りつつ、県境を目指して歩き始めたのでした。そして帰宅後、さっそく神保町にて、RM LIBRARY『福島交通軌道線 (上下)』を購入したことは言うまでもありません。