今年は香港地鉄(地下鉄)が開業して以来40年。のちに香港地鉄は九広鉄路(九龍=広州鉄道の香港側)を吸収合併して香港鉄路と改称し、さらには西鉄線や空港線をはじめ路線を拡大するなどして、名実ともに文明都市・香港を代表する企業であったはずです。
しかし悲しむべきことに、香港全土を覆う反送中運動(逃亡犯条例反対運動)が一気に反警察・反特別行政区・反中共運動へと転化する中で、香港鉄路は「光復香港」を叫ぶ人々に最も憎まれる対象の一つとなってしまい、最近は連日至るところで駅が襲撃され、それに先立つ駅の閉鎖(通過)や路線丸ごとの運休が発生しています(具体的にどの駅・路線が機能不全に陥っているかは、香港鉄路公式HPの運行情報から分かります)。そして、駅の至るところには「党鉄」の殴り書きが……。
要は、香港鉄路が特別行政区政府や警察と示し合わせて、デモ参加者を駅や車内に追い込んで催涙弾や実力行使などで撃退する舞台になってしまったり、デモの予告時間に近隣の駅を通過扱いにしてデモ参加者を阻止したり、さらには民衆に包囲されて逃げる警察の輸送手段を提供するなど、一事が万事公共交通機関としての中立から外れ、特別行政区の背後にいる中共の手先になっていると見做されているためで、そこで共産党の鉄道=党鉄と呼ばれてしまっているという……。
しかし、香港鉄路(とりわけ、個別の社員)も好きでそうしているわけではないはず。ある意味で止むを得ないことなのでしょう。とりわけ香港鉄路は、90年代以後北京・上海・深圳などの一部の地下鉄路線の経営権を保有することによって、中国で先進的な地下鉄経営のノウハウを提供しつつ利益を得る状態となっており、特別行政区と背後の中共の意向に反して中立な立場を保つとすれば、それだけで中共から各地の路線の経営権を没収すると脅されても不思議ではありません。
とはいえ、結局のところ香港の主権を握るのは中華人民共和国であり、その中華人民共和国を指導するのは中共ですので、このような香港鉄路の立場は最早如何ともし難いのも事実です。こうして、世界的に見ても最も洗練された都市鉄道のひとつにして、日本メーカーの良き得意先でもある香港鉄路が政治の荒波の中で板挟みになり、荒廃してゆくさまを見るのは誠に哀しいことです。かといって中共の暴政に抵抗する人々を非難するのも私の本意と全く反することであり、ただ自由な都・香港に栄光あれ、と願うしかありません。
※この記事をアップした4日夜には、東鐵線など地表を走る路線の至るところで線路に障害物が投げ入れられて全面運休に陥り、とりわけ沙田では列車が放火される事態となっています。マスク禁止などという極端な緊急法令を施行しようとしたために火に油が注がれた状態となっており、どうしても、事態をもっと拡大・悪化させて、収拾出来ない香港特別行政区・警察に代わって全面的な武力鎮圧に持って行かんとする中共の裏の意図を勘繰らざるを得ません。
※5日朝5時半追記……小田急江ノ島線の初電の車内で華語のニュースサイトを見ていたら、昨晩この記事をアップしたのと同じ頃、複数のベッドタウンのショッピングモールで「香港臨時政府」宣言がなされたとか……。まだ政府としての実態は何もないでしょうが、特別行政区政府に対する不服従が今後拡大する可能性が高いです。港鉄はしばらくまともに運行できないでしょう。
香港でこのブログをご覧の方は、くれぐれもご安全に。
※6日午前追記……破壊の度合いが大きいと思われる馬鞍山線と、不要不急のディズニー線を除く各路線で6分間隔の運行となっていますが、夜9時で営業終了となるほか、やたらと通過駅が多い状況です。空港鉄道は午後1時以降、香港駅と空港駅のみの営業となり、乗車前に航空券とパスポートの検査あり。軽軌も一部系統を除き営業を再開しているものの、破壊された停留所は通過とのこと。
黎明来到 要光復這香港 同行児女為正義時代革命
祈求民主与自由万世都不朽 我願栄光帰香港