■国会傍聴記 2007年10月4日参議院本会議 福田総理大臣の所信表明に対する各党代表質問 輿石東(民主党)、山崎正昭(自民党)■
参院でも代表質問が始まりました。
トップバッターは
輿石東さん(こしいしあずま=民主党・山梨選挙区)。輿石さんは民主党参院議員会長で、民主党本部の4役の一人(代表代行)です。
私は輿石さんの演説を初めて聞きましたが、参議院らしく落ち着いた威厳のある口調でした。そのためか、
福田康夫首相も前日の衆院本会議よりも落ち着いてていねいに答弁しました。
【「逆転国会」の意義を強調】
輿石さんは「
私は今ここに、江田参院議長の前で、代表質問ができることを誇らしく感じるとともに、極めて感慨深いものがあります」と切り出し、議員から万雷の拍手を浴びました。
今は映像の時代ですから、民主党出身の江田五月議長を背にして、民主党参院議員会長が代表質問の口火を切るその姿の歴史的意義を強調したわけです。《写真は中日新聞ウェブサイトから》
質問内容は当然のことですが、安倍政権と、その後の政治空白への問題から始めました。安倍首相辞任について「
私だけでなく国民すべてがあ然としました」とした上で、現在の自民党総裁として福田さんに責任を問い質しました。
2007年夏以後の日本政治の歴史の特徴のひとつは、民主党が参議院を通して、「国政調査権」を発動することができるようになったということです。
輿石さんは「
国政調査権を積極的に活用し、これまで政府が隠し続けてきた様々な都合の悪いことを明るみに出す」。
国会同意人事に関しては「
衆院と参院は同じ権限だ」と強調。日本銀行(にっぽんぎんこう=日銀)の総裁人事(来年3月)などに厳しい態度で臨むことを予告しました。
【タブーになりつつある松岡農相自殺事件にふれる】
輿石さんは松岡利勝元農相の自殺についても質問しました。みなさんも感じているでしょうが、松岡事件について触れるのはタブー視されている感じがあります。そこであえて、松岡事件に触れた輿石さんは立派だと思います。
「まず政治とカネをめぐる問題についてお伺いします。“なんとか還元水”で物議を醸した松岡農相」が「説明を拒否する松岡大臣を安倍総理がかばい続けた後に戦後初めて現職大臣が自殺するという悲惨な事件が起きてしまいました」と述べました。
最近では、政治とカネの問題は「領収書は1円から必要か?」という会社員経験のある私からすれば、当たり前の問題に論点がすり替えられてました。しかし、2007年の政治とカネをめぐる象徴的事件である松岡事件をしっかり見すえた上で、自民党も取り組むべきです。
都市と地方の格差をめぐる問題。
民主党は参院選マニフェストで「農業の元気で、地域を再生する農業者戸別所得補償法の創設」を掲げました。輿石さんは「大規模化・集約化によって農業の効率化を図ろうとした結果、海外から入ってくる安い農産物に太刀打ちできず、人々は農業に希望を失い農山村の人口は減少し、打ち捨てられた田畑や山林は荒れる一方で、環境上極めて貴重な里山の風景はどんどん失われている」との認識を示し、環境、食料安全保障の観点からも農業者戸別所得補償法の必要性を訴えました。
沖縄戦での集団自決に関して「軍の関与があった」との記述が削除された教科書検定問題。「9月29日、党派を超えて抗議するために集まった11万人に上る沖縄県民のこころを総理はどう思うか?」と質問。福田首相は「9月29日の県民大会には多くの人が参加したと承知している。また、仲井真弘太(なかいま・ひろかず)沖縄県知事の要請を受けて、文部科学省が対応する」と答えました。
輿石さんは教員出身。「民主党は教育予算の拡充なくして教育再生はあり得ないと考えている」「教育は人なりと言われる通り、教員に優秀な人材を集める必要がある」として、「部活動についても土日の指導には十分な手当が支給されておらず、教員の熱意と犠牲によって支えられているのが実態」などと指摘し、勤務実態の把握につとめるよう要請しました。
「民主党としてはテロ対策特別措置法に反対の姿勢を明確にしている。国連の直接的な決議のない戦争に日本がこれ以上加担することはできない」とし、「(仮に政府が新法を提出したとしても)テロ新法に賛成するつもりがないことを申し上げる。国会承認がないのはシビリアン・コントロールの観点からもとんでもないことだ」と明言しました。
これに対する答弁で総理は「海上自衛隊の活動は国連安保理決議1776号にある通り、高く評価されている」と述べました。国連安保理決議がインド洋上での活動を継続しようという日本政府の思惑があったということを、日本の首相が自ら証明してしまったことになるのではないでしょうか?ロシアの懸念の通りだったことを浮き彫りにしてしまった格好だと思います。
この点に関しては9月21日のエントリー(国連安保理決議についての雑感)も参考にしてください。
輿石質問、最後のシメです。「私の政治信条を申し上げる。民主党は政治とは生活であると申し上げてきた」として
自民党=「美しい国」「戦後レジーム」
民主党=「政治とは生活である」「国民の生活が第一」
と訴えて、参院選を戦い、「国民は民主党を支持した」と強調。
「国税庁の調査で、9年連続で働く人の給与が減っている(略)特に年収200万円以下の人が1,020万人」の大台に乗った現状から、「政治とは愛である」とし、弱肉強食から取り残された人を救うことが政治だと強調しました。
【山崎参院自民党幹事長「和をもって貴しとなす」「話せば分かる」】
一方、自民党参院幹事長の山崎正昭さん(福井選挙区)は、聖徳太子の「和をもって貴しとなす」という言葉で与野党の話し合いの大事さを強調。犬養毅首相の最期の言葉とされる「話せば分かる」(「五・一五事件」)などをひもとき、「厳しい議会運営だが、総理をお支えします」とし、参院執行部も“背水の陣”であることを強調しました。
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