【国会傍聴記 2007年10月16日 参院予算委基本的質疑2日目】
きょうは民主党から3人立ちました。昨日は櫻井充さんが2時間ほどやりました。
きょうは民主党本部政調会長代理で参院での責任者(参院政審会長)の福山哲郎さん(京都)、2児の母である島田智哉子さん(埼玉)、閣僚経験2回の石井一さん(全国比例)の3人。
昨日からの参院民主党の面々は
・現職医師 の櫻井さん
・松下政経塾出身 の福山さん
・2児の母 の島田さん
・閣僚2回の大ベテラン石井さん(小沢、羽田、渡部恒三各氏と同期)
いやあ、本当に「民主党はバラバラ」ですねえ。でもこれだけ広い出身母体の議員が集まっている参院民主党は論客のデパート! 参院のあるべき姿で、参院のレベルは確実に上がっています。
さてきょうの予算委はかなり新聞記事になっていますが、だからこそ、下町の太陽では、午前9時からの「流れ」を追いながらご紹介します。
【よく練られた福山質問 薬害肝炎(C型肝炎)で画期的質疑】
福山さんは冒頭、昨日の審議で自民党議員(林芳正、佐藤昭郎両氏)が、民主党マニフェストへの一部を取り上げ、その反論を閣僚に求めたことに「欠席裁判だ」と抗議しました。
○薬害C型肝炎 舛添さん「三菱ウェルフェーマ」って会社あるの?
福山さんは「2002年の厚労省の命令をうけて、製薬会社の三菱ウェルファーマ(株)が提出した血液製剤を投与された418人の症例を示した報告書を全部読んだ」として、報告書作成後の厚労省の対応のまずさを指摘。
舛添さんは「これまでの国の対応が十分だったとは言えない」と述べ、事実関係を伝えるよう同社に要請する意向を示したと苦しい答弁。
冒頭「三菱ウェルフェーマ」と社名を間違えて発音しました。これはささいなようで、大チョンボですよ、舛添さん。
NHK国会中継の個人視聴率(AMラジオ第一の個人聴取率含む)は5%ぐらいなものでしょう。そしてそのうち、このミスに気付いたのはそのまた5%だとします。そうすると、舛添さんの言い違えに気付いたのは国民400人に1人だとします。
ただ、薬害肝炎の被害者は1万人と言われています。400人の1人とはいえ、その失言に敏感になっている方々は舛添厚労相に対して「分かってないで答弁しているな」と感じたことでしょう。
(三菱ウェルファーマは再編で「田辺三菱製薬」という社名になっています)
国は薬害肝炎訴訟で1勝4敗です。これは政権交代以前に解決すべきプライオリティ(優先順位)の高い問題です。
民主党は「肝炎対策緊急措置法案」を参院に提出しており、今国会での早い審議入りがのぞまれます。
10月3日付関連エントリー) |
C型・B型肝炎患者に朗報 民主党が救済法案を参院に提出 |
○参院民主党の問題意識 はインド洋、温暖化、HAT―KZ(ハットカズ)
福山さんはよく勉強していて、質問も上手いです。もう少しメリハリがあっても良いとも思いますが、参院政審会長として民主党の問題意識を開陳していきます。
プライオリティの高い薬害C型肝炎の問題に続き、インド洋上での海上自衛隊の補給艦の米補給艦への給油燃料のデータミスについても質問。間違ったデータの公表(情報隠し)は自衛隊に対する文民統制(シビリアン・コントロール)の根幹を揺さぶるという本質的な問題に切り込みました。
その後、地球温暖化、省エネ技術開発への政府の取り組み強化、環境税の導入について言及。
行政腐敗の5つの要因「HAT-KZ(ハットカズ)」(長妻昭さんの造語)から、農水省の天下り(A)、厚労省の随意契約(Z)の実態を紹介。税金のムダ使いをただせば、財源確保につながると主張。民主党マニフェストの財源に対する自民党の批判を牽制しました。
【2児の母代表の島田さん、分からないなら分からないなりに好感】
非改選だった島田智哉子さん。2児の母です。島田さんは「専門外ですが」との発言も交え、分からないなら分からないなりの質問のしかたをして好印象でした。
私自身の経験で言えば、新聞記者として朝刊、夕刊と1日2回も締め切りを抱え、分からないなら分からないなりに記事をまとめることの大事さを学びました。
島田さんの地元、埼玉県など首都圏郊外で子育てをしている主婦は、20代後半~40代です。おおまかに分類すれば、1965年~1980年生まれ辺りの人が多いわけです。
生まれたときからTVがありましたが、子供の時分にはケータイとインターネットがなかった世代です。TVは生活の一部として取り込まれています。
大学進学率の上昇と男女共同参画基本法の施行で、社会への関心は高いのですが、「社会に問題があるのは分かっている。が、政治のことはよく分からない」というのが大多数の人の認識でしょう。
その人たちにとって島田質問は共感をもたれたのでしょう。
前半(午前中)は出産を取りまく医療に関して。救急輸送中の妊婦が病院を「たらい回し」にされたうえ、死産した事例について厚労省の実態調査が遅いと指摘。舛添厚労相は「10月いっぱいに確実にやらせる」と答えるのがやっとでした。
午後は教育について。教員の人数など教育予算を増やすことが必要ではないかとの考え方を述べました。
少子化対策では民主党の参院選マニフェスト「3つの約束」の1つ、こども手当に触れ、一人月額2万6000円を中学終了まで現金給付する公約の法案化に取り組む日々を紹介しました。
島田さんの指名で、同じく2人の子供を持つ少子化担当大臣の上川陽子さん(静岡1区)が衆参とも初めて答弁席に登場。
日本でもかなり増えた女性議員ですが、ライバル心が強いようで、張り合うことがたまに見受けられました。女性環境庁長官に女性代議士が細かい数字を繰り返し質問し、「どうも分かっていないようですね」。自民党には同い年で初当選も同期という女性議員が2人いて、本会議場で口論したこともあります。
今回は上川大臣と島田議員が互いにエールを送りあう形で好感が持てました。 もちろん、与野党の違いがあるわけですから、島田さんは「上川さんが2年前に衆院予算委で質問したときの議事録を読むと、大臣就任後に少子化への姿勢がトーンダウンしているのではないか」と言うべきことはしっかり言っていたからこそ、そう感じたのです。
【大ベテラン、石井一さん 創価学会と公明党の関係に切り込む】
きょう3人目は石井一さん。長年、衆院兵庫1区(神戸市中央区など)で当選しましたが、第44回衆院選で議席を失いました。それも小泉旋風の下、大敗しました。やはり大都市選出は大変です。
7月の参院選で全国比例で国政復帰しました。
石井さんは「今回、不幸にして全国を回ることになりましたが、山口に行ったとき、安倍晋三首相が『選挙区は林(芳正候補)、比例は公明党へ!』と演説していて驚いた。
山口の人から『石井先生、今回比例はあなたに入れます。そうはいっても私は自民党員です。でも比例に公明党と書く気にはなれません』と言われた」とのエピソードを紹介し、自民党が公明党に過度に依存していると指弾しました。
さらに公明党とは創価学会そのものにほかならないとして、公明党の冬柴国土交通相に対して創価学会への「上納金」を支払っているのではないかと質問。
冬柴国交相は「創価学会ではなく公明党に対してだ」としたうえで、「歳費の2か月分を公明党本部に収めている」と明かしました。公の場で公明党員がこのことを明かしたのはおそらく初めてでしょう。
石井さんは、「公明党は過去に一度でも委員長選挙をしたことがあるのか?」として、公明党の人事が不透明であると指摘しました。
たしかに私の記憶では、公明党の党首(委員長、代表)はいつも無投票当選で、候補者が2人立ったことはないはずです。
石井さんはこれらは創価学会がすなわち公明党にほかならないとして、憲法の「政教分離の原則」に反すると論を進めました。
そのうえで、創価学会の最高指導者である池田大作名誉会長(第3代会長)の参院予算委への証人喚問ないしは参考人招致を要求。鴻池祥肇委員長は理事会で話し合うと引き取りました。
また公明党副幹事長でありながら、ことし離党し、民主党入りを求めて同党執行部に断られた、福本潤一元参院議員を招くことも求めました。
【北朝鮮の日本人拉致問題「日朝平壌宣言」署名はそもそも間違い】
日朝友好議員連盟会長を務めた石井さんは「5人生存・8人死亡」の北朝鮮側の説明に基づいて2002年に日朝平壌宣言に署名したのは「そもそも間違い」と主張。
石井さんは当時官房長官だった福田さんに「あなたが悪いんじゃない。向こう(平壌)にいた2人(小泉純一郎首相、安倍晋三官房副長官)が悪いんだ」とし、福田首相も「その後の担当者も悩んだと思う」と同情を求めた。石井さんは「あと1年以内にやらんと全部吹っ飛ぶよ」と釘をさした。
石井さんは自治体職員が取り次いだ年金保険料を着服していた問題で、首長の反論に対して「小人の戯言」と言い返した舛添厚労相の発言をたしなめた。舛添さんは「撤回します」と答弁。自治体職員を告発するなら、同じように公金を横領した社会保険庁職員も告発すべきだとして、総点検を求めました。
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