ニュースサイト宮崎信行の国会傍聴記

元日本経済新聞記者の政治ジャーナリスト宮崎信行が衆参両院と提出予定法案を網羅して書いています。業界内で圧倒的ナンバー1。

【国会傍聴記】参院予算委 分からないなりの大事さ 厚労相と母親と

2007年10月16日 23時34分31秒 | 第168臨時会(2007年9月~1月)法案の嵐作戦

【国会傍聴記 2007年10月16日 参院予算委基本的質疑2日目】

 きょうは民主党から3人立ちました。昨日は櫻井充さんが2時間ほどやりました。
 きょうは民主党本部政調会長代理で参院での責任者(参院政審会長)の福山哲郎さん(京都)、2児の母である島田智哉子さん(埼玉)、閣僚経験2回の石井一さん(全国比例)の3人。

昨日からの参院民主党の面々は
 ・現職医師      の櫻井さん
 ・松下政経塾出身  の福山さん
 ・2児の母       の島田さん
 ・閣僚2回の大ベテラン石井さん(小沢、羽田、渡部恒三各氏と同期)

 いやあ、本当に「民主党はバラバラ」ですねえ。でもこれだけ広い出身母体の議員が集まっている参院民主党は論客のデパート! 参院のあるべき姿で、参院のレベルは確実に上がっています。

 さてきょうの予算委はかなり新聞記事になっていますが、だからこそ、下町の太陽では、午前9時からの「流れ」を追いながらご紹介します。

【よく練られた福山質問 薬害肝炎(C型肝炎)で画期的質疑】

 福山さんは冒頭、昨日の審議で自民党議員(林芳正、佐藤昭郎両氏)が、民主党マニフェストへの一部を取り上げ、その反論を閣僚に求めたことに「欠席裁判だ」と抗議しました。

○薬害C型肝炎 舛添さん「三菱ウェルフーマ」って会社あるの?

 福山さんは「2002年の厚労省の命令をうけて、製薬会社の三菱ウェルファーマ(株)が提出した血液製剤を投与された418人の症例を示した報告書を全部読んだ」として、報告書作成後の厚労省の対応のまずさを指摘。

 舛添さんは「これまでの国の対応が十分だったとは言えない」と述べ、事実関係を伝えるよう同社に要請する意向を示したと苦しい答弁。
 冒頭「三菱ウェルフーマ」と社名を間違えて発音しました。これはささいなようで、大チョンボですよ、舛添さん。

 NHK国会中継の個人視聴率(AMラジオ第一の個人聴取率含む)は5%ぐらいなものでしょう。そしてそのうち、このミスに気付いたのはそのまた5%だとします。そうすると、舛添さんの言い違えに気付いたのは国民400人に1人だとします。

 ただ、薬害肝炎の被害者は1万人と言われています。400人の1人とはいえ、その失言に敏感になっている方々は舛添厚労相に対して「分かってないで答弁しているな」と感じたことでしょう。
 (三菱ウェルファーマは再編で「田辺三菱製薬」という社名になっています)

 国は薬害肝炎訴訟で1勝4敗です。これは政権交代以前に解決すべきプライオリティ(優先順位)の高い問題です。
 民主党は「肝炎対策緊急措置法案」を参院に提出しており、今国会での早い審議入りがのぞまれます。

10月3日付関連エントリー)
C型・B型肝炎患者に朗報 民主党が救済法案を参院に提出

○参院民主党の問題意識 はインド洋、温暖化、HAT―KZ(ハットカズ)

 福山さんはよく勉強していて、質問も上手いです。もう少しメリハリがあっても良いとも思いますが、参院政審会長として民主党の問題意識を開陳していきます。

 プライオリティの高い薬害C型肝炎の問題に続き、インド洋上での海上自衛隊の補給艦の米補給艦への給油燃料のデータミスについても質問。間違ったデータの公表(情報隠し)は自衛隊に対する文民統制(シビリアン・コントロール)の根幹を揺さぶるという本質的な問題に切り込みました。

 その後、地球温暖化、省エネ技術開発への政府の取り組み強化、環境税の導入について言及。

 行政腐敗の5つの要因「HAT-KZハットカズ)」(長妻昭さんの造語)から、農水省の天下り(A)、厚労省の随意契約(Z)の実態を紹介。税金のムダ使いをただせば、財源確保につながると主張。民主党マニフェストの財源に対する自民党の批判を牽制しました。

【2児の母代表の島田さん、分からないなら分からないなりに好感】

 非改選だった島田智哉子さん。2児の母です。島田さんは「専門外ですが」との発言も交え、分からないなら分からないなりの質問のしかたをして好印象でした。

 私自身の経験で言えば、新聞記者として朝刊、夕刊と1日2回も締め切りを抱え、分からないなら分からないなりに記事をまとめることの大事さを学びました。

 島田さんの地元、埼玉県など首都圏郊外で子育てをしている主婦は、20代後半~40代です。おおまかに分類すれば、1965年~1980年生まれ辺りの人が多いわけです。

 生まれたときからTVがありましたが、子供の時分にはケータイとインターネットがなかった世代です。TVは生活の一部として取り込まれています。
 大学進学率の上昇と男女共同参画基本法の施行で、社会への関心は高いのですが、「社会に問題があるのは分かっている。が、政治のことはよく分からない」というのが大多数の人の認識でしょう。

 その人たちにとって島田質問は共感をもたれたのでしょう。

 前半(午前中)は出産を取りまく医療に関して。救急輸送中の妊婦が病院を「たらい回し」にされたうえ、死産した事例について厚労省の実態調査が遅いと指摘。舛添厚労相は「10月いっぱいに確実にやらせる」と答えるのがやっとでした。

 午後は教育について。教員の人数など教育予算を増やすことが必要ではないかとの考え方を述べました。

 少子化対策では民主党の参院選マニフェスト「3つの約束」の1つ、こども手当に触れ、一人月額2万6000円を中学終了まで現金給付する公約の法案化に取り組む日々を紹介しました。

 島田さんの指名で、同じく2人の子供を持つ少子化担当大臣の上川陽子さん(静岡1区)が衆参とも初めて答弁席に登場。

 日本でもかなり増えた女性議員ですが、ライバル心が強いようで、張り合うことがたまに見受けられました。女性環境庁長官に女性代議士が細かい数字を繰り返し質問し、「どうも分かっていないようですね」。自民党には同い年で初当選も同期という女性議員が2人いて、本会議場で口論したこともあります。

 今回は上川大臣と島田議員が互いにエールを送りあう形で好感が持てました。 もちろん、与野党の違いがあるわけですから、島田さんは「上川さんが2年前に衆院予算委で質問したときの議事録を読むと、大臣就任後に少子化への姿勢がトーンダウンしているのではないか」と言うべきことはしっかり言っていたからこそ、そう感じたのです。

【大ベテラン、石井一さん 創価学会と公明党の関係に切り込む】

 きょう3人目は石井一さん。長年、衆院兵庫1区(神戸市中央区など)で当選しましたが、第44回衆院選で議席を失いました。それも小泉旋風の下、大敗しました。やはり大都市選出は大変です。

 7月の参院選で全国比例で国政復帰しました。

 石井さんは「今回、不幸にして全国を回ることになりましたが、山口に行ったとき、安倍晋三首相が『選挙区は林(芳正候補)、比例は公明党へ!』と演説していて驚いた。
 山口の人から『石井先生、今回比例はあなたに入れます。そうはいっても私は自民党員です。でも比例に公明党と書く気にはなれません』と言われた」とのエピソードを紹介し、自民党が公明党に過度に依存していると指弾しました。

 さらに公明党とは創価学会そのものにほかならないとして、公明党の冬柴国土交通相に対して創価学会への「上納金」を支払っているのではないかと質問。

 冬柴国交相は「創価学会ではなく公明党に対してだ」としたうえで、「歳費の2か月分を公明党本部に収めている」と明かしました。公の場で公明党員がこのことを明かしたのはおそらく初めてでしょう。

 石井さんは、「公明党は過去に一度でも委員長選挙をしたことがあるのか?」として、公明党の人事が不透明であると指摘しました。

 たしかに私の記憶では、公明党の党首(委員長、代表)はいつも無投票当選で、候補者が2人立ったことはないはずです。

 石井さんはこれらは創価学会がすなわち公明党にほかならないとして、憲法の「政教分離の原則」に反すると論を進めました。
 そのうえで、創価学会の最高指導者である池田大作名誉会長(第3代会長)の参院予算委への証人喚問ないしは参考人招致を要求。鴻池祥肇委員長は理事会で話し合うと引き取りました。
 また公明党副幹事長でありながら、ことし離党し、民主党入りを求めて同党執行部に断られた、福本潤一元参院議員を招くことも求めました。

【北朝鮮の日本人拉致問題「日朝平壌宣言」署名はそもそも間違い】

 日朝友好議員連盟会長を務めた石井さんは「5人生存・8人死亡」の北朝鮮側の説明に基づいて2002年に日朝平壌宣言に署名したのは「そもそも間違い」と主張。

 石井さんは当時官房長官だった福田さんに「あなたが悪いんじゃない。向こう(平壌)にいた2人(小泉純一郎首相、安倍晋三官房副長官)が悪いんだ」とし、福田首相も「その後の担当者も悩んだと思う」と同情を求めた。石井さんは「あと1年以内にやらんと全部吹っ飛ぶよ」と釘をさした。

 石井さんは自治体職員が取り次いだ年金保険料を着服していた問題で、首長の反論に対して「小人の戯言」と言い返した舛添厚労相の発言をたしなめた。舛添さんは「撤回します」と答弁。自治体職員を告発するなら、同じように公金を横領した社会保険庁職員も告発すべきだとして、総点検を求めました。

     
↓参議院の審議のもようはこちらをクリック↓


↓クリックで「下町の太陽」を応援してください!
にほんブログ村 政治ブログ 政治・社会問題へ  

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

僕は石井ピンは必要な政治家だと思う。誰が何と言おうとも。

2007年10月16日 23時10分01秒 | その他

【国会傍聴記 2007年10月16日(火)参院予算委 番外編】

 このエントリーは石井一さんの質問を取り上げる前に、政治家・石井ピンさんについて僕の考えを書きたいと思います。



左は 1989年第一次海部内閣の石井国土庁長官
右は 1990年総選挙時のさわやかな菅直人さん

 初入閣時のピンさん(自民党竹下派)とほぼ同じ時期の菅直人さん(社民連)の写真を並べてみました。

 この8年後、私が民主党担当記者をしていたころ、民主党は「菅直人代表―石井国対委員長」という体制になっていました。

 日本で一番嫉妬深い連中は、芸能人やホストよりも政治家でしょう。

 ところが、この国対委員長のポストはピンさんが望んで引き受けたんです。
 木曜クラブ(田中派)→経世会(竹下派)→新生党・羽田内閣で自治大臣兼国家公安委員長と保守本流を歩いてきたピンさんは自ら菅大将の切り込み隊長を引き受けました。

 「オレが国土庁長官のころ、菅は小政党だから質問に立つ回数が多かったけど、こいつは鋭いなあ、伸びるだろうなあと思っていた」

 大ベテランながら、国対委員長として野党ライフを楽しんでいたピンさん。
 神戸出身、甲南大学出のお坊ちゃんで、米国カリフォルニア州のスタンフォード大学院で政治学を学び、西海岸の自由な空気を吸ったピンさん。

 ダッカ事件では、「(福田赳夫政権の)運輸政務次官として人質と一緒に中東に行って頂いた。命がけの行動であり、感謝している」(きょうの福田首相の答弁)。

 木曜クラブ内ではやや異色の存在だったようで、落選経験もあったことから「竹下派7奉行」に数えられることはありませんでした。

 「1年生議員っていうのは野党の方がいいんだ。国会で質問できるから。だから野党議員としてスタートして、やがて与党になっていくのがいいんだ。そのことをきょうの国対で話したら若い連中は本当に喜んでいたよ。オレは不幸にして反対になったけどな」。

 民社党出身の国対副委員長を指さして、「こういう風にお行儀よく国会議員をやっていれば出世するんだよ。オレみたいのはダメなんだよ」
 ちなみにその議員は北橋健治さんで、9年経ったことし、北九州市長になりました。予言的中です。

 羽田さんが短命政権に終わり石井国家公安委員長も2ヶ月の任期で終わります。
 ただ、この2ヶ月間に朝鮮総連京都府本部への捜索があって、私は興味を持ちましたが、関連性はよく分かりません。当時は拉致問題にはほとんど誰も興味を持っていなかったと思います。「金賢姫」の名前を知っていても、「横田めぐみさん」の名前は産経新聞のスクープ前だと思いますので、99%の日本国民は知らなかったころだと思います。


(左は田中角栄さんと、右はレーガン大統領と)

 そしてピンさんはことし7月に参院議員として国政に復帰。
 いまや「国会の止め男」と化したピンさんは、「自民党時代から30年間ずーっとやりたかったのよ」(きょうの予算委)というあの問題に切り込んだのです。

続きは・・・
【国会傍聴記】参院予算委 分からないなりの大事さ 厚労相と母親と

↓衆議院の審議のもようはこちらをクリック↓

      
↓参議院の審議のもようはこちらをクリック↓


↓クリックで「下町の太陽」を応援してください!
にほんブログ村 政治ブログ 政治・社会問題へ  

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【速報】首相再び暴言「この問題がまた出てくるとは思わなかったので調べていない」

2007年10月16日 14時30分19秒 | 第168臨時会(2007年9月~1月)法案の嵐作戦

 福田康夫首相は参院予算委(16日午後2時過ぎ)で、小泉訪朝(1回目、2002年)で「5人生存・8人死亡」のリストを局長級で受け取りながら日朝平壌宣言に署名したこと経緯をたずねられ、「(衆院予算委でも聞かれたが)この問題がまた出てくるとは思わなかったので、調べていなかった」とまたしても質問に答えなかった。石井一参院議員(民主党)への答弁。
 小泉訪朝の際、福田さんは官房長官で東京での留守番役を務めていた。安倍晋三副長官は小泉首相のお供として平壌に滞在していた。
 日朝友好議員連盟会長を務めた石井さんは「衆院予算委で(同会派の)田中眞紀子さんが質問したのとは表現が違うかも知れないが」と断った上で質問。

 午前11時局長級でリストを受け取り→午後1時・首脳会談→午後3時福田長官が東京で被害者家族に説明→午後5時・「宣言」の署名
 という一連の経緯が納得いかないとした。

これに対して首相は「、「(衆院予算委でも聞かれたが)この問題がまた出てくるとは思わなかったので、調べていなかった」と答弁した。

 首相の答弁を石井さんは「あなたが悪いんじゃない。向こうにいた2人(小泉さん、安倍さん)が悪いんだ」と引き取ったが、平壌宣言を結んだために拉致問題を外交問題にすることが難しくなったと指摘。福田首相も「その後の担当者も悩んだと思う」と同情を求めた。

 石井さんは「あと1年以内にやらんと全部吹っ飛ぶよ」と釘をさした。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

民主党から初めて話し合い解散論 鳩山幹事長が講演で

2007年10月16日 09時16分13秒 | 第45回衆院選(2009年8月)政権交代

民主・鳩山氏、「話し合い解散」に言及(読売新聞) - goo ニュース

 民主党幹部から初めて「話し合い解散」の話が出てきました。

 福田首相も福田康夫さん、自民・民主の「話し合い解散」を示唆のエントリーで紹介した通り、総裁選挙の際に話し合い解散に言及しています。
 
 昨日の鳩山講演を伝える読売新聞によると、

 民主党の鳩山幹事長は15日、政府・与党との話し合いで、「来年4月ごろに衆院解散・総選挙となる可能性」に言及したそうです。
 鳩山さんは解散について、「我々は予算や予算関連法案に賛成することはない。しかし、(政府が)『予算は上げてもらいたい』となれば、(民主党は)『分かった。それならば、解散しろ』という発想があるのではないか」と述べたと報じています。
 「来年の4月辺りが一番わかりやすい解散の時機になるのではないかと思っている」と語ったそうです。

↓衆議院の審議のもようはこちらをクリック↓

      
↓参議院の審議のもようはこちらをクリック↓


↓クリックで「下町の太陽」を応援してください!
にほんブログ村 政治ブログ 政治・社会問題へ  

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする