【国会傍聴記 2007年10月15日 参院予算委】
参院予算委はきょうから基本的質疑。参院でも「論戦」が本格スタートです。
しかし、参院第一委員会室は奇妙な光景でした。
(写真は民主党農政の批判を繰り返した自民党の佐藤昭郎さん=同氏のサイトから)
最初は自民党の林芳正さん(山口選挙区)。内閣府副大臣も務めた3期目の参院議員で、同じく大逆風の1人区を勝ち抜いた山本一太さん(群馬選挙区)、世耕弘成さん(和歌山)のようにTVにはあまり出ないですが、なかなかの論客です。
ソーシャル・キャピタル(社会のささえあい)が減ってきていると指摘。
日本の研究開発費(R&D)は先進国でも多い方だが、「政府の支出は少ない」(岸田科学技術担当相)として、ノーベル物理学賞の小柴昌俊さんの話として「100年経っても役に立つかどうかは分からない」基礎科学の研究も大事にしろ、との話。
福田赳夫首相が提唱した東南アジア外交の基本方針「福田ドクトリン」という単語もこの国会でおそらく初めて登場しました。
参院らしい傾聴に値する質問が多かったですが・・・
民主党の参院選大勝で、第一委員会室の雰囲気は一変していました。
林さんが「民主党マニフェストの11・4兆円は財源のあてがない」と政府に質問する(というのも変な話ですが)→議場は騒然。
林さんが福田内閣を高く評価する→「シーン・・・」
自民党の3議員は再選&非改選組で新人ではありませんから、雰囲気の転変に焦っているのが垣間見えました。
農水省出身の佐藤昭郎(あきお=全国比例)さんは民主党の農業者戸別所得補償制度の批判を繰り返し、予算委員長の鴻池祥肇さん(兵庫選挙区)が「これは予算の執行に関する審査ですから、政府への質問をしてください」とたしなめました。
北海道選挙区で辛勝した伊達忠一さんは「地方の痛みが分かっていない人が多い」と切り出しましたが、ひたすら自分の地元の話をしていた印象でした。
さて、野党(というか参院多数党)のトップバッターは医師で民主党の櫻井充さん(宮城選挙区)。今回非改選の櫻井さんは第166通常国会(3月5日)でも良い質問をしていて、規制改革担当大臣の渡辺喜美さんからオリックスの宮内義彦会長を暗に批判する答弁を引き出していました。
それで、予習のつもりで櫻井さんのサイトをのぞいていたのですが、先週の木曜日付メールマガジンでは
「通常、質問する前日に、質問する内容を通告するのだが、今回は、今日質問通告を終えてしまった。官僚も答弁を作るのは大変だし、前日に通告してもまともな答えが返ってこない。今回はこれだけ早く通告したのだから、きちんとした答弁をして欲しいものだ」。
そういって、櫻井さんは冒頭、石破防衛相にアフガニスタン内外でのOEF(不朽の自由作戦)に関して、質問通告なしに切り込みました。質問通告は法律上の制度ではありません。石破防衛相が正確な数字が答えられなかったことは当然で同情を禁じ得ませんが、“はぐらかし”でも石破さんには珍しく緻密さを欠いていました。
今国会は天下分け目の関ヶ原。やはり何事も初めが肝腎ですね。
民主、守屋氏ら喚問方針 当時の防衛局長 給油転用疑惑 (朝日新聞) - goo ニュース (写真は防衛省ウェブサイト)
政治家は嘘をついてはいけない職業だと私は思っていますが、政治家は平気で嘘をつきます。なかには小説家よりも嘘をつく政治家がいてその人が政府・与党の幹部になる場合もあります。
野党の幹部にも嘘つきはいるでしょうが、情報量が多い政府・与党幹部の方が嘘をつく人間が出世する傾向を見とれます。
それで証人喚問でうそをつくと、刑事罰になる可能性があります。最近では姉歯秀次元建築士が(他の容疑も含めて)逮捕されています。
インド洋での給油活動をやめると日米同盟を傷つけるという主張があります。それは一理あります。が、それよりイージス艦(イージス・システム)情報をはじめとする一連の海上自衛隊などの情報漏れの方が日米同盟をよほど傷つけました。
ライス国務長官やゲイツ国防長官に謝るだけではダメです。アメリカ連邦議会の上院議員、下院議員の半数以上が日本に不信を抱いたのですから、駐米大使が数百回、頭を下げても信頼は元に戻りません。
というわけで守屋さんの証人喚問はやったほうがいいでしょう。民主党はもちろん、浅尾慶一郎ネクスト防衛大臣が参院質問者席に立つでしょう。
浅尾さんは民主党を代表する論客です。
きのうのNHK「日曜討論」で、新旧防衛閣僚の中谷元さん、石破茂防衛相を相手に十分議論できていました。特に中谷さんは論破されまくり、タジタジになっていました。
守屋武昌さんをめぐる関連エントリー一覧(10月19日現在)
10/19 防衛省の守屋前次官、軍需産業から接待 特捜部も関心?
10/17 参院予算委での守屋氏の証人喚問、御手洗、福本両氏の参考人招致を正式要求 民主党
10/15 民主党、守屋前防衛次官を証人喚問へ 参院予算委で
民主、守屋氏ら喚問方針 当時の防衛局長 給油転用疑惑
2007年10月15日(月)12:53
民主党の山岡賢次国会対策委員長は15日の記者会見で、政府が03年に海上自衛隊のインド洋での米補給艦への補給量を誤って発表した問題をめぐり、防衛省の守屋武昌・前事務次官(当時は防衛局長)と当時の防衛庁の担当者を証人喚問するよう参院予算委員会に求める方針を明らかにした。
政府は03年2月に海上自衛隊の補給艦が米補給艦に給油した量について、同年5月に20万ガロンと説明したが、今年9月に80万ガロンと訂正した。政府は「情報の取り方にミスがあった」としているが、山岡氏は「調査すると、事務的ミスはあり得ないという思いが強くなっている」と語った。さらに、イラク作戦への燃料転用疑惑をめぐり、米空母キティホークや米イージス駆逐艦ポール・ハミルトンの作戦書類などの開示のために国政調査権の発動を求める方針も明らかにした。
また、同党の鉢呂吉雄「次の内閣」外相は14日のNHK番組で、「首相もあの時の責任者だったから、議院証言法に基づく証人喚問も考えなければいけない」と述べた。