【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

特例公債法案が実質審議入り 城島財務相G20疲れ全く見せず 財金委一般質疑

2012年11月07日 17時26分54秒 | 第181臨時国会(2012年10~11月)友情解散

[画像]G20から帰国直後ながら答弁する城島光力財務大臣(左)と武正公一財務副大臣(右)、2012年11月7日(水)、衆議院インターネット審議中継から。

 特例公債法案の審議がスタートしました。

 というと、報道ではあすの衆議院本会議で趣旨説明ということになっていますが、きょうは衆・委員会で、大臣所信表明に対する一般質疑があり、この中で特例公債法案(181閣法1号)の審議がされました。こういったときは、自民党や国民の生活が第一の国会対策委員長は「話題にしないように」と釘をさすことが多いのですが、そのようなことはなかったようで、話題になりました。ただ、先の国会で反対討論をした公明党の竹内譲さんは「きょうは日銀総裁に質問をさせていただきます」と切り出し、一切話題にしませんでした。

 メキシコシティーでのG20からきょう帰国したばかりの城島光力財務相の日程にあわせて、午後1時半から始まった衆議院財務金融委員会でしたが、城島さんはまったく疲れを見せずに答弁し、政治家らしさをみせました。もちろんこの直後の日本時間の午後2時にバラク・オバマ大統領がミット・ロムニー候補をやぶって再選が確実になったとCNNなどの速報が出たので、ワシントンに寄って財務長官に祝辞を述べてもよかったかもしれませんが、残り19営業日の今国会なので忙しい日程になっています。

 民主党の斉木武志さんは、財政法第4条の特例公債の発行について、単年度ごとに法案を出さなくてよい仕組みを提案しながら質問。武正公一・財務副大臣は「3党首会談で野田総理(民主党代表)は、成長・財政健全化目標入りの法案や、予算と一体的に処理する覚書を党首間で結ぶことを提案したと思う」と述べました。これについては、野田さん自らブリーフィングで話したにもかかわらず、摩訶不思議なことに現時点では、当ブログが、10月19日付エントリーで報じただけになっています。 ホントウに摩訶不思議なことです。みんなICレコーダーでとっているのですから番記者レベルではむりでも、そのテクストを見たデスクが記事にしないといけないです。それから報道にうまく乗らなければ、官邸・財務省政務三役も別の格好で発信しないといけないです。

 斉木質問のさいちゅうに駆けつけた城島大臣は「文藝春秋で佐々木毅(東大名誉教授および学習院大学)教授ら日本アカデメイアが国会改革のなかで言及した特例公債法案の処理のしかたを参考にしたい」と答弁しました。私はこの21世紀臨調(旧民間政治臨調)会長でもある佐々木先生らの提言論文を知らなかったので、近いうちに図書館でチェックしたいと思います。

 続いて、財金委の良心、自民党の山本幸三理事が登場。
 「私は腹が立っている。ホントウに特例公債法案を通したければ、内閣改造で大臣を変えないはずだ」
 「前の国会で、城島さんは民主党国会対策委員長として特例公債法案を採決し、自民党は欠席した。私はホントウは白川方明日銀総裁との質疑を予定していたのに流れたので怒っている」
 「昨年の3党合意にもとづく農業者戸別所得補償の政策効果の検証では民主党は全然努力しなかった」
 「前の安住大臣は何度も私の所に来てお願いしていたが、あなたは努力が足りない」

 と立て続けに、質疑だか言いがかりだか分からないマシンガン連射が続きましたが、城島さんはまったくたじろぎませんでした。副総理の岡田克也さんは改造翌日の記者会見で「城島さんは、彼が労働組合のトップを、味の素労働組合、食品労連でしたか、そこのトップを務めておられたころからのつき合いで、労働界でも非常に注目をされていた人なのですね」として、城島さんは「労働界のスター」だったことを披露しましたが、その一端を感じました。ただ、答弁はまだ慣れていない面が散見され、しばらくは指さし確認の安全運転がベターに思えます。

 国民の生活が第一の玉城デニーさんも特例公債法案の実質審議入りに協力。「今回の特例公債法案の中には、年金特例公債が盛り込まれているが、将来的な消費税増税が財源だ。その前に特別会計の剰余金を整理すべきだ」との考えを示しました。これに対して城島財務相は「(自公政権による2004年年金改革法の)基礎年金の国庫負担2分の1への引き上げを(恒久税源の確保がないまま)見切り発車したことで財源確保が厳しくなった」としたうえで、6月15日の3党合意を踏まえ「多くの野党のみなさんのご意見をいただいて特例公債法案に(年金交付国債を)盛り込んでいるものでございますのでぜひご理解いただきたい」としました。これは実は自公との関係であって、国民の生活が第一は関係ない話ですが、やはり1期生の玉城議員はとっさに対応はできず、そのまま次の質疑項目に行きました。

 
[画像]一般質疑のなかで、事実上、特例公債法案を審議入りさせた、自民党の山本幸三理事(左)と国民の生活が第一の玉城デニーさん(右)、2012年11月7日(水)、衆議院インターネット審議中継から。

 この後、上述の通り、竹内譲さんが登場したのですが、元気なく、日銀総裁への質疑だけで終わってしまいました。どうしたんでしょうか。何かあるんなら、竹内さんと城島さんは新進党仲間なので言って欲しかったです。これに先立つ午前中の衆院内閣委員会では、公明党の高木美智代さんが事業仕分けを批判。来週末の新仕分けについて「どう違うのか」と質問。副総理(兼)行政刷新相の岡田さんは「生活保護についても、足立区の現場をみせていただいたうえで新仕分けの対象にします」と断言。そのうえで、「①ホントウに必要な方には(支給が)行くように、②自立がよりしやすいように、という2点には十分配慮をしていきたい」として、前日のアクセルをゆるめました。高木さんも「それから障害者の方々にもしっかりと配慮するように」と③番目の配慮点を言っただけで、質疑は終わりました。このように新進党仲間のなかでも、特例公債法案に関して、政府側の答弁がそろっていることは心強く感じます。

 内閣委員会では小泉進次郎さんと岡田さんの問答が見られましたが、自公政権時代に、年金支給額への物価スライドの引き下げ自動発動を凍結したことによる特例水準を解消して財源を確保する法案をぜひ通してほしいと岡田さんがお願いしたところ、小泉さんが「特例」という言葉で「特例公債法案」のことだと勘違いしてしまうシーンがあり、経験不足がありました。また文部科学委員会では田中眞紀子文科相が新設大学3件の認可を保留していることについて、自民党議員が猛反発。が、下村博文さん、馳浩さん、松野博一さんと町村派(清和会)ばかり登場する事態となり、学校法人・教育産業と自民党政治の癒着の根深さをうかがわせる場面もありました。全般的に自民党が変わっていないと感じることが多いのが、二大政党の真価が問われる今、残念な思いがしました。

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岡田克也副総理「自公は社会党以下」、「国民生活に極めて大きな破壊的影響」特例公債法

2012年11月07日 06時35分00秒 | 第181臨時国会(2012年10~11月)友情解散

[画像]日本社会党の中央執行委員長に就任した土井たか子さんら社会党執行部、目で見る議会政治百年史から

 きょうは立冬です。

 きのうの内閣府(旧経済企画庁)の発表などによると、日本の稼ぎ頭・自動車が国内外で売れなくなっています。すでに今夏から景気が底入れしていた可能性が高いという分析がでてきました。9月中旬から10月中旬にかけて、国会閉会中にかかわらず内閣支持率が下がりつつあったのは、自民党総裁選よりも、この景気低迷が影響したのではないでしょうか。景気が悪くなれば現政権が嫌いになるのは、社会的な人間として自然の摂理です。

 けんかの強い岡田さんは、解散や会期末が近づくとキレますが、今国会も、はや残り17営業日しかありません。そろそろ特例公債法案(181閣法1号)の審議入りをしてほしいところです。

 岡田克也副総理2012年11月6日(火)午後の定例閣議後記者会見で、自民党と公明党の国会対応について、「我々も野党のときにいろいろなことをしてきましたが、特例公債法(案)を人質にとって、っそして夏までとか、この冬まで引っ張ってきたことはありません。ここまで極端なことをやっておられることについて、もうそろそろこれはいかに国民生活に大いに悪い影響を与えていることを真剣に考えていただきたい」としたうえで、

 「55年体制の社会党ですら、こういうことをやっていませんから

 と述べ、自公は社会党以下だ、と最大級の侮辱文句で批判しました。

 ただまあ、社会主義協会の土井たか子委員長は人気は別として抵抗野党として日本政治を後ろに引っ張りましたが、政権構想研究会の田辺誠委員長(現・民主党群馬県連常任顧問)は日本で最初に影の内閣をつくるなど日本政治を前に進めたと思いますが(^_-)

 そのうえで、特例公債法が成立しないことは「国民生活全体に極めて大きな破壊的な影響を及ぼすものであります。そういうことが分かっていて、成立をずっと夏から先送りしてきました」としました。

 自民党石破茂幹事長が求めている今年度予算の歳出を減額する第1次補正予算成立とひきかえの特例公債法成立アイディアについては、「農業者戸別所得補償は交付がそろそろ済んでいるのではないかと思う」とし、稲刈りが済んだ11月になってからの歳出の減額補正は遅くて応じられないとの考えを示しました。

 ただ、自民党が減額のポイントにあげている生活保護については、前日の東京都足立区の視察時に理解を示しており、この日の記者会見では「新仕分けでは成長戦略と、社会保障とくに生活保護を含む分野を対象にしたい」としました。新仕分けについては、報道では「新事業仕分け」となっていることもありますが、岡田さんの命名で「新仕分け」が正式名称です。当初は、復興予算など3本程度を対象にする予定でしたが、自民党から減額補正のポイントと出たことを配慮して、東京都足立区視察の際に、生活保護を仕分ける考えを示しました。

 法定委託事務である生活保護費について、国から自治体への支出金である生活保護費等負担金は今年度当初予算一般会計では2・8兆円で、前年度の(当初・最終補正後とも)2・6兆円から大幅に伸びています。実際には、生活保護の不正受給は増えてはいないとされていますが、高齢化と震災後不況などによる生活保護受給者の増加による自治体からの歳出圧力で増加傾向になると考えられます。生活保護費等負担金の予算書コード番号は

 12-064-03082ー2845-16

 所管が「12厚労省」、項が「番号064」、主要経費別が「03生活保護費」、目的別が「082生活保護費」、財政法公債金対象が「2非対象(税など負担)」、経済性質別が「84社会扶助給付」、使途別が「5補助金・委託費」となります。最後の2行はかつての予算コードとの比較のために残っている数字です。

 なお、減額補正や予算執行停止の対象としては、上に示した通り、農業者戸別所得補償はすでに遅く、年金給付は保険料の積立金が原資なので性質が違います。生活保護費よりも金額の削りしろが大きいものとしては、法改正が必要ですが、地方交付税交付金となりますが、民主党政権は、自治体の円滑な行政執行のために、地方交付税は、新仕分けの対象にはしない方針。

 冬来たりなば春遠からじ。

 私たち民主党は正しいことをしているのですから、まったくためらうことなく、特例公債法案(181閣法1号)を強行採決し、成立させればいいのです。なんの見返りも必要ありません。

 日本時間のきょう、アメリカの大統領、今週、中国の国家主席が決まり、ともに来年2013年1月から新体制になります。日本でも新体制をつくる準備が始まりました。

 任期末。会期末。一歩もたじろいではいけません。しょせん政治家はインテリヤクザです。ケント・デリカットさんやケント・ギルバートさんに「日本おかしいよ」と言われた幸せな時代は終わりました。私たちが日本国民が、ケント・デリカットさん、ケント・ギルバートさんのようにもっと物を言い、かつ行動しなければなりません。

 コアメンバーがしっかりしていれば、メッセージはしっかりと伝わります。

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