【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

野田佳彦代表(総理)は「仕分けの継続」に演説内容を変えるべきだ 記者会見オープン化のまとめ

2012年11月30日 19時47分26秒 | 第46回衆院選(2012年12月)大惨敗

 第45期衆議院は解散されましたが、民主党内閣は12月16日の総選挙後の特別国会まで職務継続内閣となります。

 今週は、私・宮崎信行にとって、一つの記念すべき出来事がありました。2012年11月27日(火)の午後3時からの霞が関での岡田克也副総理の記者会見午後5時からの永田町の野田佳彦総理の民主党代表としての記者会見の両方で、トップバッターとして質問しました。記者会見のトップバッターは各々の記者クラブの幹事社(新聞社、通信社、あるいはテレビ局が月ごとに交代)の記者が質問する慣例のところが多く、また、霞が関は経済部、永田町は政治部という役割分担が多いので、2重3重に異例なことでした。

 ちなみに、内閣府の岡田大臣の記者会見は「9.上記メディアが発行する媒体に定期的に記事等を提供する者(いわゆるフリーランス)」として参加を認められています。一方、民主党の記者会見は「8) 発行する媒体の目的、内容、実績等に照らし、(1)から(7)のいずれかに準ずると認め得る者」として参加しています。すなわち、このブログ「国会傍聴記by下町の太陽」の執筆者として参加が認められています。元来私はこのブログを「政権交代ある二大政党政治の実現」と「記者会見よりも国会審議を報道する」という2つの目的を果たすために開設しました。そのため、記者会見のオープン化には特段の思い入れはありませんでした。国会審議で疑問があれば、個別取材で解決したいし、記者会見に出席するというのはそれ自体が、その場においては情報を独占にしている者、すなわち政治家に利用されることでもあるからです。

 政権交代後の記念すべき記者会見オープン化の幕開けとなった霞が関の2009年9月29日の岡田克也外務大臣の記者会見では、質問し、記者会見で出た情報は全員の共有になりますので、朝日新聞さん、毎日新聞さんが記事にしてくれました。 ところが、この後、外務省の報道室長から私は出席できないとの連絡があり、いったんどのような力が働いたのか分かりませんが、別段闘う意思もなかったので、国会を聞くことに専念しました。

 その後、岡田外相が与党としては初めて、民主党幹事長に就任することになり、2010年9月17日(金)の永田町の民主党本部での記者会見では、再びトップバッターで質問しました。その後、幹事社の番記者が何が何でもトップバッターで質問するようになったので、私は2番手以降に質問するようになりました。

 ちなみに、今週火曜日の記者会見は、霞が関の副総理会見、永田町の総理会見(代表会見)とも、早めに行き、最前列の席を取っていました。

 ことし1月からの岡田副総理の記者会見をやっている庁舎は、私が日本経済新聞政治部記者時代に担当していた総務庁が入っていた場所で、ことし1月から14年ぶりに入れて楽しかったです。食堂の味は変わりませんが、世間はデフレなので、けっこう高値の食堂になってしまいました。庁舎の外の「北方の領土かえる日平和の日」の看板はことし掛け替えられ「いつかを今に日本の領土北方領土」ととなりました。

 記者会見オープン化の活動の先頭に立った上杉隆さん、神保哲生さん、畠山理仁さん、田中龍作さんには感謝の言葉ばかりです。しかし、3年3ヶ月経って、民主党閣僚や民主党本部の記者会見でお見受けすることはなくなりました。とはいえ、感謝です。岡田副総理の記者会見では、安積明子さん、月刊誌「FACTA」の代表取締役・編集人の宮嶋巌さん、元北海道新聞編集委員の上出義樹さんと私の4人でメンバーが固定的になりましたが、その他のフリーランスや、規制改革に関する業界紙の記者の方も参加しました。民主党幹事長会見でも安積明子さんが出席率ナンバーワンで、横田一さんらも出席しました。そして、ニコニコ動画の「770(ナナオ)」こと七尾功・株式会社ドワンゴ政治担当部長もここぞというとき質問していました。

 ぜひ、次の政権で誰が総理になろうともこの流れは続けてほしいです。

 私を除いてです。

 私は民主党と玉砕する覚悟はできています。それは覚悟だけではありません。ジャーナリスト活動の環境面でも、この3年3ヶ月、国会開会中の平日の昼間は国会傍聴に専念できる自由をつくってきました。そして、与党としての驚くべきほど厖大な情報量をひっしに、ブログ(web log)に残してきました。とにかく書きたいことを長文で雑でもひたすらに記録する作業に専念してきました。

 私は、立党以来の民主党員として、民主党とともに語らい、民主党とともに闘い、民主党とともに死んでいく腹づもりでやってきました。ですから、総理、副総理でトップバッターを務めたのはこれが最初で最後になるかもしれないし、それでかまいません。選挙後は筋肉質で結束の強い、以前の民主党に戻れると考えています。

 さて、野田佳彦代表は公示前の演説で、「1.社会保障 2.経済 3.原発」の順で演説していますが、私には異論があります。私が解散後に聞いた街頭演説会での聴衆の反応では、「仕分けの実績とその継続」に一番拍手が多いと、私としては認識しています。そして、この仕分けの意味合いは広い。野田さんは「内閣府行政刷新会議事務局の事業仕分け=仕分け」と認識しているように、記者会見でお互いの目を見ているときの表情から感じられました。しかし、他の街頭演説会での聴衆は、「しわけ」とはもっと広い意味で、歳費の暫定2割削減も、農業者戸別所得補償も、年金記録の回復も、情報公開も「しわけ」の中に入るようです。そして、民主党には「しわけの継続」を期待しつつ、候補者(予定者)がしわけをするにふさわしい高潔な人物かどうか見極めようとしている。一方で、自民党にはしわけができない、という考えもある。それに実態経済をよくする術は自民党の方が持っていると思っている。それが公示前情勢だと、私はとらえています。

 なぜ、野田さんは「しわけ」と演説しないのでしょうか。一つの推論があります。それは首相官邸は永田町にありますが、実際は霞が関です。スタッフは官僚が大多数です。太田充・事務秘書官をはじめ、肩書きは内閣府事務官になっているでしょうが、野田内閣が終われば、霞が関に席があります。だから、総理と心中しようとしません。なので、スタッフが「社会保障、経済、原発」という演説草稿を書いているのではないでしょうか。もちろん、演説するのは野田さんです。また与党代表である総理の演説を見れば分かるとおり、たくさんの警察官が取り巻いています。総理の近くにいるのは、47都道府県どこでも、東京都の地方公務員である警視庁の警察官です。

 

 上の写真のように、総理大臣とは孤独な仕事です。

 警視庁が各道府県警の警察官を指導する格好で、演説会の会場が構成されます。すわなち、総選挙とは、警視庁が他の46道府県警に対する上下関係をつくる場所でもあります。これは、昭和10年、陸軍の一部勢力により、首相官邸が襲撃され岡田内閣が倒れた2・26事件以降、内務省(警察庁)が陸軍省・海軍省(防衛省)に国内での秩序維持でも10年間負け続けたことへの意趣返しだとされています。内務省(警察庁)は昭和20年8月15日正午をもって、再び、陸軍省よりも上位に立ちました。その後、首相秘書官は警察庁からの出向官僚が、防衛省との連絡役を買って出ることになり、エリート候補生ははじめから、若いうちに防衛省の課長として出向経験を積むコースがありました。これが、この第45期衆議院において、北澤俊美防衛大臣の働きかけで、首相秘書官に防衛官僚が初めて常駐することになり、その秘書官が防衛省との連絡役になったようです。これは戦後レジームの霞が関の権力構造においては、画期的なことです。

 世襲議員が連続して総理になったのは、「慣れ」に尽きます。ですが、野田さんの孤独をみんなで支え合って、第46回衆院選を闘っていきたい。そして、当選して残る民主党議員は、一緒に闘える人が残ると感じます。

 二大政党制が定着する過程において、そのいずれにも居場所がない候補者たちが新党をつくっていますが、それは歴史の流れにおいて、遠心分離器で弾き飛ばされるでしょう。二大政党に収斂していく過程ではそれも必要なことです。

 戦前の二大政党政治が失敗した理由は一つです。それはテロリズムです。ですから、現代とはまったく違います。ちなみに、関東大震災後の帝国議会開院式の直前におきた虎ノ門事件では、警察官は難波容疑者の身柄を拘束することよりも、難波容疑者に殴る蹴るの制裁を加えようとする群衆を抑えることの方が大変だったようです。

 警察官のみなさんもご苦労様ですが、ぜひ、有権者も与党への妨害について、声や拍手で守りましょう。政治家を育て、守るのは有権者の役目です。

 さて、公示後には戸別訪問ができなくなります。戸別訪問ができる期間中に、私は有権者の声を聞き、自分なりに世論、民意を探ろうと考えています。思えば、この3年3ヶ月の民主党第1次与党期において、公私とも出張・旅行をしていませんでした。それほどまでひっしに、「与党の大変さ」をこのブログに書き殴ってきました。

 ぜひ、野田さんは「しわけ」の聴衆の反応について、政治家である仲間に問い合わせてほしいと思います。そして、有権者のみなさんは「自分に何ができるのか」ということについて、正直、分からない方が大半だと思います。例えば、公選ハガキを書いてほしいと言っても、分からないと思います。そういった大人としての未熟さを反省し、選挙との関わり方の術を知って、そして、これからに備える力を持ってほしいと考えます。分からない人は、家庭で選挙の話をしてほしいと考えます。自分一人で投票しないで、投票行動の責任を共有できる仲間を可能な範囲内でつくってください。参議院の現有勢力や、日本国憲法60条59条を勉強してください。自分が住む選挙区の比例ブロックの定数を学んで、死に票にならないように、2枚目(比例代表の政党名)を検討してください。とにもかくにもまずは前職が立っていれば、前職のチェックから。地元の現職の第45期衆議院での国会での発言を調べてほしいところです。



 民主党ホームページ内の動画から↑。野田さんは「民主党による、しわけの継続」を有権者に訴えてほしい。