【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

◎ヤッターー!特例公債ついに解決 2015年まで発行法で 3党合意 執行凍結解除へ

2012年11月13日 21時21分12秒 | 第181臨時国会(2012年10~11月)友情解散

[写真]修正特例公債法について3党合意した、民主党の細野豪志(中)、自民党の甘利明(中央左)、公明党の石井啓一(中央右)の3党政調会長ら=国会内、民主党ホームページから。

【特例公債法成立へ 2015年度まで】


 民主党ホームページによると、民主党・自民党・公明党の3党の政策調査会長は2012年11月13日(火)、3党確認書を交わしました。「特例公債法案(財政運営に必要な財源を確保するための(財政法第4条の)特例公債法案)」(181閣法1号)について、修正して成立させることに合意。平成24年度から27年度(2015年度)までの特例公債の発行を「財政健全化のために中長期的に持続可能な財政構造を確立すること」を本則に書き加えて、付則に「今年度補正予算で政策的経費(と義務的経費)を含めた歳出の見直し」のうえで今年度当初予算の38兆3350億円の「特例公債発行額を抑制する」と書き込みます。

 あすの党首討論後の衆議院財務金融委員会で修正案が提出され、しめくくり総括質疑の後、3党の賛成多数で修正可決。金曜日の本会議で可決し参院に送付し、早ければ来週にも成立する見通し。地方交付税などの国の執行抑制が解除されることになりました。第22回参院選「逆転の夏」から2つの通常国会の最大のネックにようやくピリオドが打たれます。バンザイ!というより、ホッとしました。

【地方交付税などの執行抑制解除へ、今年度の生活保護減額補正はなし


 3党合意には、民主党の細野豪志・政調会長、細川律夫・政調会長代行、自民党の甘利明・政務調査会長、中谷元・政調会長筆頭代理、公明党の石井啓一・政務調査会長の5人の衆議院議員が参加しました。

 今後は、3党合意に基づく、減額補正が焦点となります。その一方で、9月前後から鉱工業生産が激しく落ち込み、消費支出も「可処分所得が増えながら支出は減る」という将来見通し不透明な世界不況から世界恐慌と向かいつつある年明けに向けて、景気対策は急務。しかし、執行抑制しているとはいえ、すでに11月ですから、削りしろは極めて少なく、大幅な減額は地方交付税か、生活保護国庫負担金ぐらいになってきます。

 3党合意後の午後6時過ぎから始まった岡田克也副総理の定例記者会見では、土曜日に生活保護費を新仕分け(内閣府行政刷新会議主催)の対象にすることについて、「年度ごとに制度が変わり、その中で費用があります」として「生活保護の今年度の減額は常識的にはあり得ない」と明言しました。法律を重視する岡田さんの原理主義に加えて、公明党が3党合意に入ったことに一定の配慮を示したとも見て取れます。

【2010年反省の夏以来の最大の懸案が解決したが、国会による政府に対する財政民主主義はより問われる】


 これにより、平成23年度特例公法成立とひきかえに菅直人内閣が総辞職した不毛な政局の連鎖を断ち切ることができました。元々2010年7月に衆参がねじれて以来、2011年1月からの第177通常国会で民主党の岡田克也幹事長が最大の懸案事項として自民党、公明党の幹事長に国会法改正などを提案していました。歩み寄りの気配がありましたが、3月11日に大震災が発生してしまい、政治的空白が生じました。これは、震災を口実にしているのではなく、震災が最大の要因だったのは間違いありません。8月9日の3党合意(マニフェスト4kの政策効果の検証)を経て8月22日に成立し、菅さんが辞めました。そして、今年の第180通常国会では、延長会期を9月8日に設定した後に、安住淳財務大臣が「11月上旬にも財源が枯渇する」と事実上9月8日の会期内に成立させなくてもいいと答弁し、解散や総辞職から野田首相を救出する「淳が総理を神隠し」で、地方自治体には迷惑をかけましたが、ついに連鎖を断ち切ることに成功しました。国民から選ばれた国会が政府の予算をコントロールする財政民主主義の原点に戻ることができました。とはいえ、発行3年目となった昭和52年度特例公債法案に対する代表質問での青年代議士・中野寛成さんの「国の出先機関改革ができていないのに、特例公債を発行している場合ではない」との質問演説は、今も全国会議員に匕首をつきつけています。

【社会保障制度改革国民会議も発足、来年8月までに年金の将来像決定へ】

 これとは別に、6月15日の3党合意に基づく社会保障と税の一体改革関連8法のひとつ、社会保障制度改革推進法(平成24年法律64号)に基づく「社会保障制度改革国民会議」(定員20人)についても、自民党からも名簿が出て、野田佳彦首相が委員を任命する段取りで合意し、近く発足し、来年8月に向けて、社会保障の将来像を議論することになりました。1階に基礎年金(半分は税金)、2階に国民年金ないしは厚生年金ないしは共済年金が乗る現行制度(自公方式、2004年年金改革法)か、それとも、1階に最低保障年金(全額消費税など税金、高所得者はゼロ)、2階に所得比例年金(低所得者はゼロ)が乗り最低保障機能を高めた民主党方式か、あるいは折衷案かを議論します。これは、衆議院社会保障と税の一体改革委員会の野党筆頭理事を務めた自民党の伊吹文明さん(イブキング)のアイディアで、3党が合意しづらい分野を「棚上げ」したものです。棚上げとは言っても、しっかりとした品物を棚から降ろすように注意深く見守りたいところです。

【解散より補正だ】

 次は、景気対策のための歳出の増額と財政健全化のための歳出の減額。いずにしても補正が必要です。財源はどうするかということですが、財務省所管特別会計の外国為替資金特別会計(外為特会)の積立金20兆円が既に日本円になっているお金なので、為替市場にも影響を与えませんから、活用できるかもしれません。場合によっては、「国民の信」という権力で切り崩すという気構えが責任政党に問われるかもしれません。いずれにしろ、もう傍観者を決め込む国民は一人もいないでしょう。テレビ画面上のNHKアナウンサーくらいです。そして、当事者意識だけではもうダメです。当事者意識から当事者能力へ。そなえよつねに。子や孫の世代に後ろ指を指されない国民になる。そのために、何をなすべきか、一家族、一家族に問われてきます。

 来年度予算を組み上げるまで、衆議院解散・総選挙で政治空白をつくっている場合ではありません。互いに危機感を持ちましょう。 

 [お知らせ1]

 会員制ブログで今後の政治日程とそのポイントを解説しています。

 今後の政治日程 by 下町の太陽

 最初の1ヶ月は無料で試し読みできます。取材資金にもなりますのでぜひともご協力下さい。

[お知らせ2]

 「国会傍聴取材支援基金」を設けました。他メディアにはない国会審議を中心とした政治の流れをこのブログで伝えていきます。質素倹約につとめていますが交通費などがかかります。

 「国会傍聴取材支援基金」の創設とご協力のお願い

 ご協力いただきますよう、よろしくお願い申し上げます。

[お知らせおわり]
tags 政治日程 http://www.kantei.go.jp/jp/fukusouri/press/ http://regimag.jp/b/sample/list/?blog=65